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カメラマンから観た映画『room ルーム 』の感想・評価 シリーズPART5

カメラマンから観た映画『room ルーム 』の感想・評価 シリーズPART5

 

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 ものすごく、ものすごーく極端に言えば、現代版ヘレンケラーとでも表現できようか、、、、? ただヘレンケラーと違い、ジェイコブ・トレンブレイ演じるジャックは目も見えるし、耳も聴こえる、何もかも最初から自由に感じることができる。

では、なぜそう感じたか。それは小さな小さな閉ざされた『部屋』の中だけの話だからだ。つまり、この物語はどうしようもなく些細な新しい”出会い”に満ちあふれた作品なのだ。

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 物語は、そんな小さな世界を心から全てだと信じるジャックの「僕、5歳だよ」から始まる。小さな世界がごくありふれた日常のように描かれる中、ある日、ママと謎の男(ジャックにとって)オールド・ニックとの間で争いが起きる。その翌日、部屋に起こった変化。そこからストーリーは大きく動き始める。

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 この映画のいいところは、脱出して”はい、終わり”ではないことだ。きちんと非日常から日常にもどってきた人たちが感じる苦悩も描き、ただのハッピーエンドで終わらせないことだ。出会う感動、乗り越えた感動。素敵な”初めて”を提供してくれる、そして出会い続けた彼が初めて見せた”別れ”の言葉は、この作品ならではの新たな出会いへの示唆だったのではないでしょうか。

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 初めて何かに”出会う”ことは、未知に対する恐怖、戸惑い、衝撃を超えた先にあることを思い出しました。僕たちは普通に本物と偽物に出会い、それに触れることで当たり前のようにその概念を理解し、吸収していきます。一度定着したそれは真実として世界を構築しますが、『部屋』にいるジャックにとっての出会いは、世界を崩すことから始まります。もうここで一個目の感動ポイントは誰でもわかるのですが、案の定僕は、初めてジャックが世界と出会う瞬間に、その演出に感動してしまいました。映画館から出たあとに見上げた空がものすごく綺麗に見えること間違いなしです。ぜひ劇場に足を運んで、見終わったら空を見上げてみてください。きっと違う見え方になると思います。

 

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 カメラ的には、狭い空間の中でも飽きさせない画のバリエーション、緊張感を表すための手持ちに近い揺れを表現したカメラワーク。中でも部屋のシーンを飽きさせない工夫としてわかったのは、気づきにくいかもしれないですが、天窓からの光のバリエーションの多さです。朝、昼、夜。雨の日、晴れの日とほぼ全てのパターンの光を演出しているので、よく観てみてください。すごいです。カメラワークはイマジナリーラインを意識するというよりは、ジャックの視線、視界を表現しようとしている点。それは最初から最後まで、とめどなく視線をさまよわせるような表現のカメラワークですが、ピントの合っていない荒々しい感じが徐々に変化していく様は、個人的にかなり勉強になりました。皆さん自然に観ているかもしれないですが、あれかなり難しいです。適度にカメラをぶれさせること、好奇心に満ちあふれた目の動き、視界の動きをカメラの画で表現することは中々真似できることではありません。

 


PROFILE

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NAME:木下 昂一 
通称chip(チップ)
 
LIVEやWEB媒体のスチールを中心に、イベントやPVの動画撮影などで活動、活躍中。
 
2016年には『APAアワード2016』で入選を果たす。
 

 


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「ENJOY CINEMA」で新コーナーがスタートしました!
題して「カメラマンから観た映画◯◯!!」ということで、エンジョイシネマに所縁のあるカメラマン、通称「チップ」に上映中の最新映画から過去の名作まで、あらゆるジャンルの作品を「カメラマン目線」で自由に語ってもらうコーナーとなっています!

写真や動画の撮影に興味がある方は勿論、それらに触れたことがない方も、このシリーズを通して、また一味違った角度から作品を観ることで、より一層その作品の理解や楽しさが膨らむと思っています!
また、このシリーズを通してカメラマンだけではなく、一つの作品が完成するまでに、映像には映らない「影の立役者」「縁の下の力持ち」の存在を知ってもらうきっかけになればと思い企画をスタートさせました!肩の力を抜いてこのコーナーを今後も楽しんで頂ければ幸いです。編集長
 
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