はじめに|“優しそうなおじいさん”がなぜ恐ろしい存在に?
Netflixの大ヒットドラマ『イカゲーム』。その中でも視聴者の心を大きく揺さぶったキャラクターが、001番ことオ・イルナムです。
高齢で弱々しく、どこか親しみやすい印象を与えるこのおじいさん──しかし、物語が進むにつれ、彼の正体が“ゲームの黒幕”だったという衝撃が明かされます。
「なぜ彼は参加していたのか?」「本当に死んだのか?」「あのときの行動にはどういう意味があったのか?」
本記事では、オ・イルナムの正体・伏線・最期までを徹底的に考察し、その“怖さ”の本質にも迫ります。
※本記事には『イカゲーム』シーズン1の重大なネタバレが含まれます。
第1章|001番・オ・イルナムの人物像と初登場シーン
オ・イルナム(演:オ・ヨンス)は、シーズン1第1話から登場する参加者のひとり。
高齢で痩せこけた体つきに、穏やかで無垢な笑顔。「認知症の症状がある」と語るその姿は、他の参加者と比べても圧倒的に“非戦闘的”な存在に映ります。
彼の登場シーンは、主人公ギフンが最初のゲーム会場で目を覚ました直後。混乱と恐怖が漂う中、イルナムだけは落ち着き払って参加者の人数を数えていました。
この時点では誰も、彼が物語の鍵を握る“異質な存在”だとは思わなかったでしょう。
第2章|“死んだはずのおじいさん”は実はゲームの創設者だった
真相が明かされるのは、シーズン1の最終話。ゲームの優勝者となったギフンは、ある日「カンブ」という名義からのカードを受け取り、指定された場所へ向かいます。
そこには、ビー玉ゲームで死んだはずのおじいさんが、酸素マスクをつけてベッドに横たわっていました。
そして語られる、驚愕の事実。
- 自分こそがゲームを創った張本人であること
- “退屈しのぎ”と“人間の本質を見極めたい”という動機で参加していたこと
- 脳腫瘍で余命わずかという話は事実だったこと
死に際の彼は、ギフンと最後の“賭け”を交わします。
それは「外で凍えている酔っ払いを、誰かが助けるかどうか」。この勝負は、人間の善意を信じ続けるギフンと、冷めた目で世界を見てきたイルナムの思想のぶつかり合いでもありました。
第3章|伏線は序盤から…001番に隠された違和感まとめ
イルナムがただの“老人”でないと感じさせる伏線は、物語のあちこちに散りばめられていました。
● 番号「001」はただの先着順じゃない
ギフンが「1番乗りだったんですね!」と驚いた場面。しかし、実際は彼だけ特別扱いされた主催者側の存在であり、刑事ジュノが見た参加者リストでも、彼の名前は載っていませんでした。
● ゲーム中の“死ななさすぎ”問題
- 「だるまさんがころんだ」ではまったく恐怖を感じていない様子
- 綱引きでは手錠をつけられていない
- ビー玉ゲームで脱落するも、銃声だけで描写が省略
これらすべてが「彼がホストだったからこそ可能だった」不自然さの証左です。
● 投票順の謎
ゲーム継続か中止かの投票シーンでは、普通なら番号順のはずが、001番のイルナムが最後に投票。この順序は明らかに不自然で、視聴者の“無意識”をうまく騙す演出でした。
第4章|なぜ“怖い”のか?イルナムが象徴する“神の視点”
一見“いいおじいちゃん”だったイルナムが「怖い」と評される最大の理由は、彼が“神の視点”で人間を見ていた存在だったからです。
- 命のやりとりすら“ゲーム”として楽しんでいた
- 感情移入を避け、誰が死んでも冷静だった
- 自らプレイヤーとして潜り込み、命の価値を「試していた」
彼の行動や思想は、倫理観を逸脱した“超越者”のそれ。
まるで「人間の善悪を見定める観察者」であるかのような立ち位置が、視聴者に背筋が凍るような違和感を与えたのです。
第5章|それでも「かわいそう」と言われる理由
皮肉なことに、最終話で正体が明かされても「イルナム=かわいそう」という感想は後を絶ちません。
その理由は、彼が孤独と虚無の中で最期を迎えた人物だったからです。
- 家族も友人もおらず、ただ冷たいベッドで死んでいく
- 大金を得ても空虚だった人生
- ビー玉ゲームで見せた“ありがとう”は、彼なりの感謝だったかもしれない
ラストシーンで語った「金持ちも貧乏人も、行き着く先は同じ。虚しさだ」という言葉に、彼の人生のすべてが詰まっていたように感じられます。
📝『イカゲーム』は“虚無と金”の寓話だった
オ・イルナムというキャラクターは、ただの悪役ではなく、現代社会が抱える矛盾を体現する存在でもありました。
韓国社会の格差や貧困層の悲哀を背景に描かれる『イカゲーム』は、「勝者になっても幸せにはなれない」というメッセージを込めた物語です。
イルナムはその最たる象徴──**どれだけ金を積んでも満たされない“人間の虚無”**を抱えていました。
ギフンたちが金を得るために命を削るのに対し、イルナムは金を持っているがゆえに「生きる意味を見失った」存在。
このコントラストは、まさに現代社会への強烈な風刺です。
物語の根底に流れるのは、「人は何のために生きるのか?」という問い。
ラストでギフンが赤髪に変え、再び行動を起こすのも、イルナムの“歪んだ世界”に対して反旗を翻す意志の表れだったのかもしれません。
まとめ|001番の“怖さ”は、私たち自身を映す鏡だった
『イカゲーム』に登場する001番のおじいさん・オ・イルナムは、ただのどんでん返し要員ではなく、**物語そのものの“象徴”**とも言える存在でした。
- ゲームの裏側で糸を引く“創造主”
- 伏線だらけの行動の数々
- 虚無感に包まれた孤独な最期
一見“かわいそう”、でもよく見ると“怖すぎる”。
その多面的なキャラクター像が、視聴者に強烈な印象を残したのです。
ぜひもう一度、001番の行動や言動に注目して『イカゲーム』を見返してみてください。
そこには、あなた自身の中にもある“欲望”や“倫理観”が映し出されているかもしれません。