
「オトナ帝国」の次、何を観る?──その答えが戦国にあった
『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』を観終わったあと、妙に静かになる瞬間がある。
胸の奥が熱いのに、言葉が出てこない。笑ったはずなのに、目がちょっと痛い。あの感じ。
で、こう思う。「……他の劇場版もしんちゃん、観たくない?」って。
その“次の一本”として、名作枠の常連として名前が挙がるのが、今回の主役。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』。
しかもこれ、ただの“名作”じゃない。観る前にちょっと身構える人が多いタイプの名作だ。
だってタイトルに「戦国」って入ってる。時代劇って、なんか難しそう。合戦って、なんか遠そう。しんちゃんのケツだけ星人が、刀と鎧に勝てるの?っていう不安。
……ところがどっこい。その心配が、むしろ気持ちいいくらい裏切られる。
結論を先に言うと、俺はこれ、「オトナ帝国」より好きだった。もちろん「オトナ帝国」が名作なのは大前提。そのうえで、だ。「戦国大合戦」は、最後まで“体感の密度”が落ちない。ずっと面白い。ずっと怖い。ずっと愛しい。
そして最後、こっちが油断した瞬間を狙い撃ちしてくる。笑ってるところに、いきなり“人生”を投げてくる。しんちゃん映画って、たまにそういうことをする。たまにじゃない。結構する。
まずは作品情報
- 作品名:『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』
- 公開日:2002年4月20日(日本)
- 劇場版シリーズ:第10作
- 監督・脚本:原恵一
- 上映時間:95分
- 制作:シンエイ動画/配給:東宝
- 主な声の出演:
- 野原しんのすけ:矢島晶子
- 井尻又兵衛由俊:屋良有作
- 春日廉(廉姫):小林愛
さらにこの作品、ただ人気なだけじゃなく、賞でも“正面突破”してる。文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門大賞(2002年)を受賞。「子ども向けを装って、大人の急所に触る」って芸当を、公的にも評価された一本だ。
あらすじ(ネタバレ薄め):しんのすけ、戦国に落ちる

春日部のいつもの日常から、しんのすけがふいに戦国時代へ。
そこで出会うのが、武士の井尻又兵衛(またべえ)。そして、運命をややこしくするのが、凛として切ない存在──春日廉(廉姫)。
タイムスリップものって聞くと、つい「歴史を変えるの?」「パラドックスは?」とか難しい方向へ行きがちだけど、この映画はそこを前面に出さない。
やってることはもっとシンプル。“出会ってしまった”。ただそれだけで、世界が揺れる。
しんのすけは相変わらず、下品で、うるさくて、自由。でも戦国という世界は、自由じゃない。そのギャップが、笑いを生む。同時に、笑いのすぐ隣にある“残酷さ”を浮かび上がらせる。
「オトナ帝国」より刺さった理由:この映画、ずっと“前へ進む”
正直に言う。「オトナ帝国」は名場面が多い。胸に刺さる。泣ける。ただ、俺の体感としては、ところどころ“溜め”が長く感じる瞬間もあった。映画としては意図的な呼吸なんだけど、好みとしてね。
対して「戦国大合戦」は、終始、飽きない。
- 出会いの引力
- 戦国の緊張
- ギャグの軽さ
- 恋の切なさ
- 戦の圧
これが、途切れずに連鎖していく。
言い方を変えると、「オトナ帝国」は“記憶”に刺さる映画。「戦国大合戦」は“いま目の前の誰か”に刺さる映画。過去を振り返らせる力じゃなく、今の自分の感情を引きずり出す力が強い。
だから観ている間ずっと、映画がこっちの袖を掴んでくる。「ちょっと目を離すなよ」って。
時代劇が苦手でもハマる:歴史じゃなく“感情”で理解できる
時代劇が苦手な人が怖いのは、だいたいこの4つ。
- 用語が難しそう
- 人間関係がややこしそう
- 史実を知らないと置いていかれそう
- 合戦ばっかりで疲れそう
この映画は、そこをうまく“映画の快楽”に変換してる。難しい説明は最小限。関係性はシンプル。戦は派手だけど、目的が分かりやすい。そして何より、中心にあるのは歴史の授業じゃない。
「この人、報われてほしい」
「この二人、幸せになってほしい」
その気持ちだけで走れる。
しんのすけは解説者じゃない。でも、しんのすけが「分かんない!」って顔をすることで、観客も安心して「分かんないまま」入っていける。そして分からないまま入ったのに、最後には分かってしまう。“好き”と“別れ”だけは、時代が変わっても同じだって。
しんのすけが最強な理由:「人」を見てしまうから

戦国って、システムが強い。身分、忠義、家、政略、立場。人間が人間でいられない装置がたくさんある。
でもしんのすけは、その装置を無視する。無視というか、見えてない。彼の視界にあるのは、いつだって“人間の顔”だ。
- 又兵衛の不器用な誠実さ
- 廉姫の切なさと覚悟
- 戦国の大人たちの「仕方ない」の残酷さ
大人は「状況」を理解して、諦める。しんのすけは「人」を見て、諦めない。この差が、物語を動かす。
しんちゃんの下品さや、ふざけた言動って、普段はギャグの武器だけど、この作品では“武器の使い方”が違う。ふざけが、世界の硬さを壊す。笑いが、人の心を守る。
だけど守りきれないものがあることも、ちゃんと描く。
この作品がズルいのは、子どもを活躍させながら、子どもに媚びないところ。文化庁メディア芸術祭の贈賞理由でも、その姿勢が評価されている。
ここが好きポイント:笑いの配置が“泣くための罠”になってる
この映画の笑いって、ただのサービスじゃない。観客の涙腺を緩めるための、周到な罠でもある。
笑うと、油断する。油断すると、感情が裸になる。裸になったところへ、物語がスッと入ってくる。
しんちゃん映画って「泣かせるぞ!」って正面から来る作品もあるけど、戦国大合戦は違う。笑わせて、隙を作って、そこに“別れ”を置く。卑怯。だけど上手い。悔しいけど上手い。
【ネタバレあり】“しんちゃんだから大丈夫”を、最後にひっくり返す
※ここからは結末に触れる。未見の人は読み飛ばしてOK。
ラスト。あそこで俺は完全に油断してた。
「しんちゃん映画なんだし、最終的にはなんだかんだハッピーでしょ」そう思ってた。いや、思い込んでた。しんのすけが何か奇跡を起こす。時間が巻き戻る。誰かが助けに来る。そういう“お約束の安全地帯”に、勝手に立ってた。

でもこの映画は、そこを許さない。
又兵衛が死ぬ。(元レビューの言い方を借りれば、“お股のおじさん”の最期)
バッドエンドってほど単純じゃない。だけど、少なくとも「都合よく全員助かる話」ではない。戦国という世界の「命の軽さ」を、最後の最後まで曲げない。
そして俺は思った。感動させるのを狙いにいったな!!!って。
でもね、ここが重要なんだけど、「泣かせるための死」じゃないんだよ。あくまで“その世界で起こりうる別れ”として描かれている。だからこそ、胸に残る。後を引く。観終わってもしばらく喋れない。
残酷なのに優しい結末:救いは“奇跡”じゃなく“残ったもの”
じゃあ、救いは何なのか。誰かが生き返るわけじゃない。全部が丸く収まるわけでもない。
救いは、たぶん“残ったもの”だ。又兵衛が残したもの。廉姫が選んだもの。しんのすけが持ち帰ってしまったもの。
しんのすけはいつもの日常へ戻る。だけど観客は、ちょっと戻れない。心の端っこに、小さく痛いトゲが残る。
- 好きって、言えるうちに言ったか
- 会えるうちに会ったか
- 大事な人を「また今度」にしてないか
戦国の話なのに、現代の自分が問い詰められる。これが、しんちゃん映画の恐ろしさ。笑いながら、人生の急所に触れてくる。
これから観る人へ:しんちゃん映画を観るなら“必修”に近い
「オトナ帝国」と並んで傑作と名高い──その評判は誇張じゃない。むしろ、観たあとだと「なんで今まで観なかったんだろ」ってなるタイプ。
時代劇が苦手でも大丈夫。
歴史に詳しくなくても大丈夫。
必要なのは、感情だけ。
そして、もしあなたが「オトナ帝国」で泣いたなら、「戦国大合戦」では、もう少し“痛いところ”が泣くかもしれない。でもその痛みは、ただのショックじゃなく、ちゃんと映画の余韻として残る。
まとめ:俺は「オトナ帝国」よりこっちが好きだった
最後に、原点へ戻る。
俺は「オトナ帝国」より、こっちの作品の方が好きだった。
理由はシンプル。終始飽きずに観れて、ラストの余韻が想像以上に深かったから。
しんちゃん映画は、子ども向けの顔をして、大人の心に“置き土産”を残していく。『戦国大合戦』の置き土産は、ちょっと重い。でも、ずっと大事にしたくなる重さだ。
評価表(2014年6月時点)
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | ★★★★☆ | 戦国の“型”に、しんちゃんの“感情”を流し込む構成が見事 |
| テンポ | ★★★★★ | 体感が速い。だれない。最後まで引っ張る推進力が強い |
| 笑い | ★★★★☆ | 下品なのに品がある(矛盾してるけど事実)。緊張の逃がし方が上手い |
| 泣ける度 | ★★★★★ | 「しんちゃんだから大丈夫」を粉砕してくる破壊力 |
| 余韻 | ★★★★★ | 観終わってからの沈黙が長い。ふとした時に思い出す |
| 総合 | ★★★★☆ | “残酷で優しい結末”という言葉が、そのまま刺さる一本 |
スコア:72点/100点満点中
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