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映画『31年目の夫婦げんか』メリル・ストリープが可愛すぎる熟年ロマコメの傑作とは?

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結婚31年目に訪れる“静かな嵐”

もしあなたが恋人と付き合って数年なら、この映画はまだ早い。

もしあなたが夫婦生活10年目なら「うわ…ちょっと怖い」と感じるだろう。そしてもしあなたが結婚20年以上のベテランなら、この映画は胸の奥にズシンと響く可能性が高い。

『31年目の夫婦げんか』(2012)は、熟年夫婦の性生活問題という珍しいテーマを、驚くほど優しくユーモラスに描くロマンティック・コメディだ。監督は『プラダを着た悪魔』のデヴィッド・フランケル。主演はメリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズ。さらに夫婦カウンセラー役をスティーブ・カレルが務めるという最強布陣だ。

この映画の魅力はたくさんあるが、まず断言しておく。64歳のメリル・ストリープが信じられないほど可愛い。 それだけで観る価値がある。

何も起きないことこそ夫婦にとっての危機

夫婦が破綻するとき、理由は派手な事件ではなく「何も起きなくなること」だと本作は語る。

ケイ(メリル・ストリープ)はある朝ふと気づく。朝食の会話はゼロ。ベッドは別々。触れ合いもない。生活は完全にルーティン化し、夫婦というより同居人のようだ。

アーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)は変化を嫌い「別に困ってない」と思っている。しかしケイは「このまま人生終わっちゃうの?」という焦りを抱いている。

この感覚のズレこそが夫婦の危機の本質であり、多くの観客が身に覚えのある部分だろう。

カウンセリングという“小さな冒険”

映画『31年目の夫婦げんか』メリル・ストリープが可愛すぎる熟年ロマコメの傑作とは?

ケイは勇気を振り絞り、夫婦関係の専門セラピーに夫を連れて行こうと決意する。アーノルドは当然拒否するが、最終的にしぶしぶ同行する。

この「セラピー旅行」が物語の核心だ。

スティーブ・カレル演じるカウンセラーが、淡々と夫婦に核心を問う。「なぜ触れなくなったのか」「本当はどうしてほしいのか」「相手に言えなかったことは何か」。

31年間言葉にしなかった本音を口にしようとすると、ふたりの口は固くなる。観客はその沈黙を見つめながら「夫婦ってこんなにも難しいのか…」と実感してしまう。

アーノルドの“頑固さ”がリアルすぎる

アーノルドは典型的な“変わらないことが正しい”タイプだ。ルーティンを崩すのが嫌いで、ケイの不満にも気づかない。結婚の「安定」をそのまま「幸福」だと思い込んでいる。

しかしセラピーの中で、彼の強がりや不安が少しずつ表に出てくる。彼が悪人ではなく、ただ不器用なだけだと分かってくると、観客の心は不思議と温かくなる。

メリル・ストリープはなぜ“64歳で可愛い”のか?

映画『31年目の夫婦げんか』メリル・ストリープが可愛すぎる熟年ロマコメの傑作とは?

本作の最大の魅力は間違いなくメリル・ストリープだ。

ケイは控えめで優しく、少し臆病で、でも心の奥に強い意志を持っている。メリルはその繊細さを見事に演じている。

特に印象的なのは、夫に触れたいのに触れられないもどかしさや、拒まれたときに見せるかすかな悲しさ。その一つ一つが自然で愛おしい。

「こんな奥さんがいてほしい!」という感情は、本当に理解できる。64歳という数字が信じられないほどチャーミングなのだ。

旅の中で浮き彫りになる“未熟さ”と“希望”

セラピーを重ねるにつれ、ふたりは何度も衝突する。うまくいかない日もあるし、ケイが泣いてしまうこともある。しかしそのすべてが再生のプロセスであり、時に痛いほどリアルだ。

相手の気持ちを理解したつもりになっているだけで、本当は分かっていなかった。そんな30年分の誤解が少しずつほどけていく姿は、観ていて胸がじんわり温かくなる。

熟年夫婦にも“恋の再点火”は起こる

物語後半、アーノルドの心がほどけ始める。彼は不器用なりに、ケイとの距離を縮めようと努力する。照れくさく、ぎこちなく、それでも真剣に。

「恋は若者だけのものではない」

本作はその事実を静かに伝えてくる。長年連れ添った夫婦でも、恋は再点火できるし、関係は再構築できる。希望は必ず残っている。

全体を包む“やさしい体温”

本作には心を締めつけるような激しさはない。しかし、セリフも表情も空気感もすべてに優しさが宿っている。観終わった後、誰かのことを少し大切にしたくなるような、穏やかな余韻が残る。

大事件は起きないのに、心が温かくなる。この温度感こそ、本作がロングセラーで愛される理由だ。

こんな人におすすめ

  • 長年のパートナーとの距離が気になっている人
  • 静かな夫婦映画を観たい気分の人
  • メリル・ストリープが好きな人
  • 人間ドラマをじんわり味わいたい人
  • 大げさではない“リアルな愛”の物語を求めている人

夫婦の問題を責めるでもなく、無理に感動を押しつけるでもない。静かに寄り添い、優しく背中を押してくれる映画だ。

熟年ロマコメの金字塔

映画『31年目の夫婦げんか』メリル・ストリープが可愛すぎる熟年ロマコメの傑作とは?

『31年目の夫婦げんか』は、結婚生活のリアルと愛の再生を、ユーモアと温かさで描いた傑作だ。

64歳のメリル・ストリープの可愛さは衝撃的で、このキャラクターの魅力が映画全体を包み込んでいる。

「大切な人を大切にしたくなる」

そんな感情をそっと運んでくれる、優しい大人のラブストーリーである。

④ 評価表(2014年6月時点)

項目評価
物語の深さ★★★★☆
演技★★★★★
キャラクターの魅力★★★★★
温度感★★★★★
ユーモア★★★★☆
熟年夫婦のリアリティ★★★★★
総合評価70.5点/100点満点中
映画『31年目の夫婦げんか』メリル・ストリープが可愛すぎる熟年ロマコメの傑作とは?

31年目の夫婦げんか

メリル・ストリープ (出演), トミー・リー・ジョーンズ (出演), デヴィッド・フランケル (監督) 

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