大切な人との死別から前を向いて歩き始めるまでを繊細に描いている
監督登壇をはじめ、舞台挨拶に数多くお邪魔しているが、毎回のように脚本が練りに練られて作られてきたことに「なるほど」ってなる
場面背景の音以外チェロとピアノだけで構成された音楽のみ
映像・音響ともに、観ている者に考える余白を与えてくれている
惜しむらくは、主人公 昴 と婚約者 美紀 の「愛」が直接的には映画の中に描かれていないので、観衆が昴の気持ちに入り込みにくく、客観的にドキュメンタリー的に観る人が多く評価が分かれそう
日々アップされていた生前の美紀と昴の愛らしい写真や監督執筆の書籍版でこれを大いに補うことができるが、コアなファンではない人はそこに至らない
コアなファンたる自分には映画に表現されていない過去の情報がいっぱい入っているので、非常に刺さるし、坂東龍太さん、西野七瀬さんはじめキャストの皆さんの演技の機微に感嘆しながら観ることができた
また、ポスターの2人の画像を見て映画館に足を運んだ人は恋愛映画ではないことを残念に思うだろう
「グリーフケアについての映画」との宣伝もあるが、グリーフケアは映画の中でも再生のための1手段でしかない
これを推したがゆえに、真面目な映画を避けたい人からは敬遠されそう
「そういう映画じゃないのに」と思いながら何度も観ている
非常にいい映画で少しでも多くの人に見てほしいが、映画館に足を運ばせるためのプロモーションが難しかったんだなぁ、と思った
脚本もキャストも映像もいい素敵な映画なので、細くても長く長く上演して沢山の映画ファンの方々に観てもらいたい映画だと思う