ドラマ 芸能

憑依する演技力に心を奪われる—髙橋海人、揺れる魂と対峙する時間

2025年7月18日

憑依する演技力に心を奪われる—髙橋海人、揺れる魂と対峙する時間

「正義を信じることと、それに耐えることは、まったく別の力だと思うんです。」

そう語っているかのような瞳の芝居に、自然と息を呑んでいた。

俳優・髙橋海人が放つその演技には、ただの“役作り”では片付けられない、憑依にも似た没入感がある。

現在放送中のドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』で髙橋が演じているのは、新人麻薬取締官・才木優人。

未来を予知する特殊な能力を持ちながら、「未来が変えられない」という事実に苦しみ続ける青年だ。

正義感と無力感、希望と絶望。対立する感情のはざまで揺れる才木に、彼は魂ごと入り込んでいるように見える。

■ “目の演技”に宿る、葛藤のリアリティ

この作品でまず注目したいのは、髙橋の“目の表現力”だ。

感情を爆発させるシーンよりも、押し殺した感情を滲ませる場面のほうが、胸を打つ。

中村倫也演じる冷徹なベテラン取締官・陣内に、才木が「なぜ撃ったんですか」と真っ直ぐに問いかける場面では、目が泳ぎながらも信念だけは揺らがないという、複雑な感情が同居していた。

台詞では語られない「この人は今、自分の中で何と戦っているのか」が、観ている側に伝わってくる。

髙橋海人という俳優は、感情の“濃さ”ではなく“解像度”で勝負するタイプなのだろう。

■ “ダンスの身体性”が活きる演技の幅

特筆すべきは、その“身体”の使い方だ。

動きに無駄がなく、反応がしなやか。アイドルとして培ったダンスのスキルが、演技にも確実に活かされている。

たとえば、乱闘シーンでの身のこなしや、職務中に走るフォーム、戸惑いから来る視線のズレまで、細部に説得力がある。

それは「型にハマった芝居」ではなく、「その人間としてそこにいる自然さ」そのものだ。

■ 『だが、情熱はある』『95』から続く“憑依型”の深化

近年、髙橋海人の演技に対して“憑依型”という言葉がよく使われる。

その理由は、キャラクターを“演じる”のではなく、“生きる”ように振る舞うからだ。

『だが、情熱はある』で若林正恭役を務めた際も、声のトーン、話し方、表情筋の動きに至るまで驚くほどの再現性を見せた。

役柄の人物のエッセイやラジオまで読み込む徹底したインプット力と、そこから“演技”を削ぎ落とすようなリアルさ。

続く『95』では、内気で劣等感を抱えた高校生・Qを演じ、感情の動きを極限まで丁寧に描いた。

どちらの作品でも、言葉にならない“うつろい”を、確かに画面に残していた。

■ 今作で見せる、“揺れる正義”の進化形

『DOPE』の才木役は、それら過去の役柄の積み重ねの上にある、新たな挑戦だ。

明確な正義感を持ちながら、それをどう貫けばいいのか、答えが出せない。

能力があるのに、目の前の未来を救えない——その苦しみに、髙橋は今、全身で対峙している。

「見えてしまう未来」と「変えられない現実」。

正義感を持つほどに、自分の無力さが痛い。

その矛盾を抱えたまま、彼の才木は物語の中で成長していく。

そして、それを演じる髙橋海人自身も、また一歩進化しているのだ。

■ “バディ”が育てる演技の化学反応

憑依する演技力に心を奪われる—髙橋海人、揺れる魂と対峙する時間

中村倫也とのバディ感もまた、演技を引き上げる大きな要素だ。

中村はインタビューで、髙橋のことを「手ごねハンバーグのように、丁寧に時間をかけて育てている」と表現した。

これは単なる比喩ではなく、現場での空気づくり・リアクション・テンポ感の調和など、役者同士の“育て合い”があってこそ生まれる化学反応があることを示している。

“新人”としての不安定さと、“正義”という揺るぎなさ。

その矛盾を抱えて立つ髙橋海人が、この作品の空気を、そしてテーマそのものを象徴していると言っていい。

■ 俳優・髙橋海人に見る、これからの“主役像”

アイドルと俳優の二足のわらじを履く存在は少なくないが、ここまで「役に生きる」ことを優先させる人は稀だ。

髙橋海人は、もはや“演技ができるアイドル”ではない。

芝居を通して、自分の魂を削れる俳優”だ。

だからこそ、この先も彼が演じる人物には、人間らしい揺らぎがあるだろうし、

見る人それぞれの“痛み”に、そっと寄り添ってくれるはずだ。

2025/11/14

【レビュー】映画『君の顔では泣けない』の感想・評価・口コミ・評判

【2025年11月14日公開,123分】     INTRODUCTION(イントロダクション) 高校1年生の夏、ふたりの“人生”そのものが入れ替わってしまう──。 入れ替わりものの系譜に連なる本作は、その王道的枠組みを踏まえながらも、“15年間元に戻らない”という大胆な設定によって、従来の作品にはない深い喪失感と切実さを刻み込んでいる。高校生活から進学、就職、結婚、出産、そして親との別れまで──本来なら自分が歩むはずだった人生を、他者の身体のまま体験する。そこに生まれる違和感、罪悪感 ...

2025/10/17

【レビュー】映画『おーい、応為』の感想・評価・口コミ・評判

【2025年10月17日公開,122分】     INTRODUCTION(イントロダクション) 江戸の天才浮世絵師・葛飾北斎の娘にして弟子――葛飾応為の知られざる生涯を描く『応為』。 原作は飯島虚心の「葛飾北斎伝」と杉浦日向子の「百日紅」。監督・脚本は『日日是好日』の大森立嗣。 北斎を永瀬正敏、才能を開花させる応為を長澤まさみが繊細かつ力強く演じる。 高橋海人が演じるほか、大谷亮平、篠井英介、奥野瑛太、寺島しのぶらが共演する。 絵に生き、女として、芸術家として、父を超えようとした一人 ...

芳根京子×髙橋海人が入れ替わり15年を生きる—「君の顔では泣けない」場面写真公開

2025/10/16

芳根京子×髙橋海人が入れ替わり15年を生きる—「君の顔では泣けない」場面写真公開

2025年11月14日に公開される映画『君の顔では泣けない』より、主演の芳根京子さんとKing & Princeの髙橋海人さんが演じる「入れ替わりの15年」を描いた場面写真が解禁されました。 1枚の写真に映るのは、ただの再会ではない——“自分ではない人生”を共に生き抜いた2人の、約束と絆の記憶です。 映画『君の顔では泣けない』とは? 本作は、小説家・君嶋彼方さんのデビュー作を、映画『東京ウィンドオーケストラ』などで知られる坂下雄一郎監督が実写化した意欲作。 ジャンルは一見ファンタジーですが、その核 ...

King & Prince「I Know」に秘められた進化─王道を超える“ダーク&クール”な新境地

2025/8/21

King & Prince「I Know」に秘められた進化─王道を超える“ダーク&クール”な新境地

King & Prince新曲「I Know」とは? 17枚目シングルのダブル表題曲 2025年8月6日にリリースされたKing & Princeの17枚目シングル『What We Got 〜奇跡はきみと〜 / I Know』。 その中の1曲「I Know」は、これまでの“王子様”イメージを軽やかに覆す挑戦的なダンスナンバーです。 HIPHOPベースのダークな楽曲 サウンドはHIPHOPをベースに、ビートは力強くリズミカル。しかしベースラインにはどこか怪しげな響きが漂い、全体としてミステリ ...

髙橋海人が魅せる“もう一人の人生”―15年間の秘密と成長の物語

2025/11/15

髙橋海人が魅せる“もう一人の人生”―15年間の秘密と成長の物語

髙橋海人が魅せる“もう一人の人生”―15年間の秘密と成長の物語 俳優として着実に存在感を高める髙橋海人が、今回挑んだのは「自分ではない人生を15年間生き続けた男」という、非常に難しい役どころだ。 繊細な感情の変化を表情や所作に刻み込み、観客を“もう一人の自分”の物語へと引き込む。 15年を背負う役作り 髙橋が演じるのは、水村まなみという女性――ただし、外見は男性である坂平陸(芳根京子)という複雑な設定だ。高校1年の夏、ふとした事故で心と体が入れ替わってしまい、そのまま戻れぬまま大人になった。 30歳になっ ...

憑依する演技力に心を奪われる—髙橋海人、揺れる魂と対峙する時間

2025/11/15

憑依する演技力に心を奪われる—髙橋海人、揺れる魂と対峙する時間

「正義を信じることと、それに耐えることは、まったく別の力だと思うんです。」 そう語っているかのような瞳の芝居に、自然と息を呑んでいた。 俳優・髙橋海人が放つその演技には、ただの“役作り”では片付けられない、憑依にも似た没入感がある。 現在放送中のドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』で髙橋が演じているのは、新人麻薬取締官・才木優人。 未来を予知する特殊な能力を持ちながら、「未来が変えられない」という事実に苦しみ続ける青年だ。 正義感と無力感、希望と絶望。対立する感情のはざまで揺れる才木に、彼は魂ごと入り込ん ...

みんなの気になるランキング

「この人とならGWずっと一緒にいたい!」20〜30代女性が選ぶ“最高のデート相手”ランキングTOP10!

2025/11/20

「この人とならGWずっと一緒にいたい!」20〜30代女性が選ぶ“最高のデート相手”ランキングTOP10!

この人となら、GWが一生の思い出になる——。 “恋の理想形”が詰まった、10人の彼と過ごす想像の旅。(ポプバ調べ) 今年のゴールデンウィーク、もしも誰かとずっと一緒に過ごせるとしたら…? そんな夢のような妄想に、20〜30代女性たちが“ガチで選んだ”理想の相手をランキング化!SNSの声や検索トレンドをもとに、今の時代を映す“最高のデートパートナー”TOP10をお届けします。読者のみなさんも「私だったら誰と過ごしたい?」と想像しながら、ぜひご覧ください! 第10位:佐藤寛太(俳優・27歳) 飾らず自然体、だ ...

20代女性が選ぶ恋人にしたい有名人ランキング【2025年最新版】

2025/11/20

20代女性が選ぶ恋人にしたい有名人ランキング【2025年最新版】

“付き合いたい”のリアルな温度感。2025年、恋の主役はこの10人(ポプバ調べ) 「恋人にしたい」と思うその瞬間、人はどんな魅力に惹かれているのか――。 SNS投稿、検索トレンド、日常会話の中に散りばめられた“推し”たちの存在感をもとに、PopVerseMix編集部が20代女性の“本音”にフォーカスしたランキングを作成! 今年ならではの価値観が透けて見えるラインナップに、あなたもきっと「わかる〜!」と頷くはず。 次の推し活の参考にも、ぜひご一読を! 第10位:赤楚衛二(俳優・30歳) 距離感のうまさが“恋 ...

「ベランダ越しに会いたい人♡」SnowManで“リアルに隣人だったらヤバい”メンバーランキングTOP10!

2025/11/20

「ベランダ越しに会いたい人♡」SnowManで“リアルに隣人だったらヤバい”メンバーランキングTOP10!

ベランダの向こうに、恋が始まりそうな気配。 もしSnowManが隣人だったら、あなたはどの瞬間に恋に落ちる? 「ベランダ越しに会いたい人」——そんな妄想がSNSで広がる今、“もしSnowManが隣の部屋に住んでいたら?”という禁断のテーマで調査(ポプバ調べ)を実施!日常に潜むベランダという“小さなステージ”で、彼らがどんな存在になるのか…リアルな生活感とファンタジーが交錯するランキングが完成しました。あなたの理想の隣人、見つかりましたか?是非エンタメとして楽しんで下さい🎵 第10位:岩本照 ...

この記事を書いた執筆者・監修者
この記事を書いた執筆者・監修者

ポプバ ドラマ部:佐伯・Pちゃん

脚本家の視点でドラマを深掘る、雑食系オタクライター。
幼少期からドラマと映画が大好きで、物語を追いかけるうちに自然と脚本を書き始め、学生時代からコンクールに応募していた生粋の“ストーリーマニア”。現在はドラマのレビュー・考察・解説を中心に、作品の魅力と課題を両面から掘り下げる記事を執筆しています。
テレビドラマは毎クール全タイトルをチェック。「面白い作品だけを最後まで観る」主義で、つまらなければ途中でドロップアウト。その分、「最後まで観る=本当に推したい」と思える作品だけを、熱を込めて語ります。
漫画・アニメ・映画(邦画・洋画問わず)にも精通し、“ドラマだけでは語れない”背景や演出技法を比較的視点で解説できるのが強み。ストーリーテリング、脚本構造、キャラクター心理の描写など、“つくる側の目線”も織り交ぜたレビューが好評です。
「このドラマ、どう感じましたか?」を合言葉に、読者の感想や共感にも興味津々。ぜひ一緒にドラマの世界を深堀りしていきましょう!

この記事を書いた編集者
この記事を書いた編集者

ポプバ編集部:Jiji(ジジ)

映画・ドラマ・アニメ・漫画・音楽といったエンタメジャンルを中心に、レビュー・考察・ランキング・まとめ記事などを幅広く執筆するライター/編集者。ジャンル横断的な知識と経験を活かし、トレンド性・読みやすさ・SEO適性を兼ね備えた構成力に定評があります。 特に、作品の魅力や制作者の意図を的確に言語化し、情報としても感情としても読者に届くコンテンツ作りに力を入れており、読後に“発見”や“納得”を残せる文章を目指しています。ポプバ運営の中核を担っており、コンテンツ企画・記事構成・SNS発信・収益導線まで一貫したメディア視点での執筆を担当。 読者が「この作品を観てみたい」「読んでよかった」と思えるような文章を、ジャンルを問わず丁寧に届けることを大切にしています。

記事執筆依頼お問い合わせページからお願いします。