松本人志、沈黙からの再始動
長年にわたりテレビの最前線に立ち続けてきた松本人志。
2024年の活動休止はお笑い界に大きな衝撃を与えたが、いま彼が選んだのは「テレビに戻らない」という新たな道だった。舞台は自らがプロデュースする新配信サービス 「DOWNTOWN+(ダウンタウンプラス)」。ここを拠点に、松本はお笑いの“次の時代”を切り開こうとしている。
松本人志という人物像
1980年代にダウンタウンとして頭角を現し、数々の番組で時代を象徴する笑いを生み出してきた松本人志。
『ダウンタウンのごっつええ感じ』『ガキの使いやあらへんで!』などで示してきたのは、単なる芸人としての力量だけではなく、企画構想から演出・編集にまで踏み込むクリエイターとしての姿勢だった。彼は常に“型破り”を好み、笑いそのものの定義を広げてきた人物である。
DOWNTOWN+が意味するもの
今回始動する「DOWNTOWN+」は、松本人志・浜田雅功・そしてダウンタウンという3つのカテゴリーで作品を展開するサービスだ。
中でも松本人志の新コンテンツには、芸人同士の大喜利、ゲストとのトーク、そして企画性の高い新番組が用意されている。さらに、過去に手がけたテレビ番組や映画といったアーカイブ作品も配信対象となる予定だ。
料金は月額1100円または年額1万1000円。スマホやテレビのアプリ、PCから視聴できる形式をとり、テレビの放送枠やスポンサーの制約を離れ、より自由度の高い表現を実現できる環境が整えられている。これは、松本人志が長年抱えていた「テレビの限界」を超えるための挑戦でもある。
“テレビに戻らない”という決断の背景
松本人志がテレビではなく配信を選んだ理由は、単に新しいビジネスを始めたいというだけではない。
地上波には時間制限や編成上の制約があり、表現を削らざるを得ない場面も少なくなかった。配信ならば、自らが本当に試したい企画をそのまま形にできる。さらに、アーカイブを整備することで過去の作品を次世代へ届ける道も開かれる。
これはドラマが地上波から配信へと軸足を移した流れとよく似ている。NetflixやAmazon Primeが作品の多様性を広げたように、松本は“お笑いのプラットフォーム化”を自分の手で推し進めようとしているのだ。
待ち受ける壁と可能性
もちろん、この挑戦には不安要素もある。
活動休止を経た松本人志への世論の目は依然として厳しい。また、配信サービスとして持続的な収益を確保できるかは未知数だ。過去番組の権利調整も大きなハードルとなる。それでも、松本人志がこれまで積み重ねてきた信頼とブランド力、そして“企画力の強さ”を考えれば、新しい形でお笑いファンを巻き込む力は十分にあるだろう。
未来を設計する立場へ
松本人志は再びカメラの前に立つが、その舞台はテレビではない。自ら設計したプラットフォーム「DOWNTOWN+」を通じて、これまでテレビでは実現できなかった企画や笑いを届けようとしている。
その姿は、ドラマの脚本家がゼロから物語を紡ぐように、自分だけの“笑いの未来”を描いているようにも見える。松本人志が設計する次世代の笑いは、どこまで私たちの想像を超えてくるのか――その答えは、これから始まる配信の中にある。