2006年の連載開始以来、漫画『キングダム』は戦国時代の壮大なスケールと個性豊かな武将たちの生き様で読者を魅了し続けています。
その中でも、趙国の名将・李牧（りぼく）は、知略・人徳・忠義を兼ね備えた“天才軍師”として多くのファンに愛される存在です。
しかし、この李牧には避けられない「悲劇の最期」が待っています。
史実では“裏切りによって命を落とした”とも伝わる李牧。この記事では、史実に基づく彼の最後の瞬間と、漫画『キングダム』での展開予想を交えながら、その切なすぎる結末を紐解きます。
李牧とはどんな人物？温厚な知将であり「三大天」の一人
李牧は、趙国の宰相にして“趙の三大天”と呼ばれる最強の武将の一人。
戦を好まぬ温和な性格ながら、敵を翻弄する大胆な奇策を得意とする知略家でもあります。
初登場は『キングダム』第13巻・馬陽攻防編。
秦国の怪鳥・王騎を討ち取った戦いでその名を轟かせ、作中でも屈指の戦略家として君臨しました。
一方、史実の李牧も実在の人物であり、戦国時代末期の趙国で国境防衛を担った将軍でした。匈奴を知略で撃退し、後に秦の侵攻を幾度も防いだことで名を残しています。
史実の李牧はどう死んだ？忠義ゆえの“裏切りの最期”
史実によると、李牧が亡くなったのは紀元前229年。
秦が趙へ総攻撃を仕掛ける中、趙の王・幽繆王（ゆうぼくおう）の不信によって命を奪われたと伝えられています。
趙国では、李牧が秦の将・王翦（おうせん）を幾度も退けたことで国内外から英雄視されていました。
しかし、王翦は趙を滅ぼすために、李牧の側近・郭開（かくかい）を金銭で買収。
「李牧が謀反を企てている」という嘘の情報を幽繆王に流したのです。
結果、王は忠臣である李牧を信用せず、将軍職を解任。
命令を拒んだ李牧は捕らえられ、最期は処刑あるいは暗殺という形で命を落としました。
戦場で華々しく散るのではなく、味方に裏切られて命を奪われる――。
それが史実の李牧の最期でした。
『キングダム』ではどう描かれる？3つの“最期パターン”考察
原泰久氏の『キングダム』は史実をベースにしながらも、キャラクターの内面や関係性をドラマティックに描く作品です。
そのため、李牧の死も「史実通り」ではなく、物語的な演出を伴う可能性があります。
① 史実準拠：王命による処刑パターン
もっとも有力なのは史実通りの展開。
忠義のために命令を拒み、王に裏切られて処刑されるという悲劇的な最期です。
“国家への忠義”と“個人の正義”がぶつかるこの形は、李牧という人物の信念を際立たせるにふさわしい結末といえます。
② 信との最終決戦パターン
少年漫画的な展開を考えると、主人公・信との直接対決もあり得ます。
宿敵として幾度も戦ってきた2人が、最終局面で刃を交える――その果てに信が李牧を討つ展開は、ドラマ性の高い「英雄の世代交代」を象徴する可能性もあります。
③ 自害・殉国パターン
史実の“処刑”をアレンジし、李牧自身が国への絶望を悟り、自ら命を絶つという展開も考えられます。
この場合、「国を愛したがゆえに死を選ぶ」という美学的要素が強調され、読者に深い余韻を残すでしょう。
なぜ李牧の最期は“切ない”のか
李牧の死が切ないと語られるのは、単なる敗北ではなく――
「忠義と理想が裏切られる悲劇」だからです。
彼は国を救うために戦い続けたにもかかわらず、最終的には同じ国の王によって命を奪われました。
その姿は、戦乱の時代に生きた“誠実すぎる人間”の象徴でもあります。
しかも、彼がいなくなった直後に趙は滅亡。
王の愚行と、忠臣の犠牲の対比が、より一層このエピソードを胸に迫るものにしています。
史実とフィクションを越えて描かれる“李牧という生き様”
史実における李牧は、秦の侵攻を何度も防ぎながら、最後は身内の裏切りによって命を落とした悲運の名将でした。
『キングダム』ではその知略や人間味がさらに深く描かれ、信や王翦と並ぶ“中華統一のキーパーソン”として物語を牽引しています。
彼の最期が史実通りの“裏切りの死”となるのか――
それとも“信との決戦”という新たな解釈が待っているのか。
いずれにせよ、李牧という人物が“理想と現実の狭間で戦った英雄”であることに変わりはありません。
その切ない生き様こそ、『キングダム』最大の人間ドラマのひとつと言えるでしょう。
忠臣はなぜ滅びるのか――李牧・項羽・韓信に見る「讒言の宿命」
中国史を紐解くと、李牧のように忠義を尽くしながら非業の死を遂げた将軍は数多く存在します。
たとえば、項羽は権力争いの末に滅び、韓信もまた謀反の疑いで処刑されました。
彼らに共通するのは、“上への忠義”が強すぎたがゆえに、権力の嫉妬や恐怖を買った点です。
特に戦国末期の趙では、政治腐敗が進み、功績者が排除される構造が生まれていました。
李牧の死は、単なる悲劇ではなく、「有能な者が報われない社会の象徴」でもあります。
現代の組織や社会にも通じるこの構図は、『キングダム』という作品を通して、私たちに「正義と忠義のあり方」を問いかけているのかもしれません。
2025/10/9
『キングダム』李牧の最期が切なすぎる…史実が語る“裏切りの死”とは？
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