
1997年、警察ドラマの常識を変える一本の作品が登場した。
 それが『踊る大捜査線』だ。
 警察組織の縦割り構造や上下関係、人間模様をリアルに描き、社会現象を巻き起こした本作は、単なる刑事ドラマではなく“働く人の物語”として、多くの視聴者の共感を集めた。
その中心にいたのが、織田裕二演じる刑事・青島俊作。
 理想と現実の間で葛藤しながらも、「現場第一」を貫く姿は、当時の社会を生きる多くの人の心を動かした。
 そして――2026年秋、青島が帰ってくる。
 最新作『踊る大捜査線 N.E.W.』のクランクインが発表され、織田裕二が13年ぶりに青島俊作を演じる。
本稿では、織田裕二と青島俊作という二人の軌跡を、原点から現在まで丁寧にたどり、その再始動の意味を読み解く。
青島俊作という男が変えた、警察ドラマの構図

『踊る大捜査線』(フジテレビ系)は1997年に放送を開始。
 脱サラして警視庁湾岸署に配属された刑事・青島俊作を中心に、理想と現実の間でもがく警察官たちの姿を描いた。
 それまでの刑事ドラマのように派手な事件解決ではなく、「組織の中で働く一人の人間」としての刑事像を提示した点が画期的だった。
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」
 このセリフは当時の社会にも響いた。
 成果よりも形式が重視される時代に、現場の声を代弁する青島の姿は、視聴者に“共感できるヒーロー像”として受け止められたのだ。
翌1998年に公開された『踊る大捜査線 THE MOVIE』は興行収入101億円を突破。
 2003年の第2作『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』では173.5億円を記録し、当時の日本映画界を代表するヒット作となった。
織田裕二が演じ続ける“等身大のヒーロー”

織田裕二は1987年に俳優デビュー。
 以降、数々のドラマや映画で多彩な役を演じてきたが、青島俊作はその中でも特別な存在だ。
 織田は過去のインタビューでこう語っている。
「もし次の『踊る』があるとしたら、和久さんぐらいの歳のときかなあと言っていたら、本当に近い年齢で演じることになりました。少しそわそわしながらも、意外に落ち着いて撮影に臨めています」
ー 出典:公式サイトNEWS(2025年10月31日)
この言葉の通り、織田は年齢を重ねた今もなお、青島としての誠実さを失わない。
 若い頃に全力で走っていた刑事が、年月を経てなお“信念を持って現場に立ち続ける男”として描かれる。
 それは、俳優・織田裕二自身の歩みとも重なる。.“踊るプロジェクト”再始動と、新たな青島の姿
2024年、突如として「踊るプロジェクト」の再始動が発表された。
 プロデュース:亀山千広、脚本:君塚良一、監督:本広克行という黄金チームが再集結。
 同年には、映画『室井慎次 敗れざる者』(2024年10月公開)と『室井慎次 生き続ける者』(2024年11月公開)の2部作が公開され、シリーズの累計興行収入は500億円を突破した。
そのエンドクレジット後に、青島俊作の姿がサプライズ登場。
 シリーズ最新作『踊る大捜査線 N.E.W.』の制作が正式に発表された。
2025年10月、新宿での雨の中のクランクイン撮影。
 約400人のエキストラが見守るなか、青島のトレードマークであるロングコートを着た織田が登場した瞬間に雨が止んだというエピソードは、まるでシリーズの象徴のようだ。
監督の本広克行は語る。
「今作での青島は、周囲の世代交代が進む中で、変わらずにいて“繋いでいく人”の物語です」
ー 出典:公式サイトNEWS(2025年10月31日)
これまでの青島が“現場で戦う刑事”だったのに対し、今回は“次世代へ橋渡しをする刑事”として描かれる。
 つまり、“変わらない信念”と“変化する立場”の両方を抱えた青島が見どころとなる。
織田裕二の現在地:静かに燃える情熱
織田裕二は近年、作品選びを慎重に行いながら、俳優としての存在感を磨き続けている。
 主演ドラマや映画出演のペースを抑えつつも、一つひとつの作品に深く向き合う姿勢が印象的だ。
 『踊る大捜査線 N.E.W.』への参加は、原点に戻るだけでなく、成熟した俳優として新しい青島像を提示する挑戦でもある。
シリーズのファンにとっては“再会”であり、織田本人にとっては“再確認”。
 彼の落ち着いた語り口や余裕のある佇まいは、若き青島の“情熱”をそのままに、時を経た“信頼感”へと変化している。
青島俊作が問い続ける、「正義」と「組織」のバランス
『踊る大捜査線』が長く支持されてきた理由のひとつは、警察ドラマでありながら「組織と個人のせめぎ合い」を描き続けてきた点にある。
 本庁と所轄、上司と部下、キャリアとノンキャリア――。
 青島は常にその狭間で苦悩しながらも、「自分の正しいと思うことを貫く」という姿勢を崩さなかった。
このテーマは、今の時代にも強い説得力を持つ。
 社会の形が変わっても、組織に生きる人々が直面する葛藤は変わらない。
 青島俊作という存在は、その象徴として再びスクリーンに立つ。
― “現場の声”が再び響くとき
『踊る大捜査線 N.E.W.』は、懐かしさを狙う続編ではなく、“信念の継承”を描く物語だ。
 長年のファンには感慨深く、若い世代には新鮮に映るだろう。
 それは、青島俊作というキャラクターが“時代に合わせて変わる”のではなく、“時代を超えて通じる価値”を持つからだ。
雨上がりの新宿に立つ青島。
 その背中には、かつて理想を追いかけたすべての人の姿が重なる。
 2026年秋、彼は再び走り出す。
 “現場”の物語が、今再び始まる。
【作品情報】
『踊る大捜査線 N.E.W.』
 2026年秋公開予定
 出演:織田裕二
 脚本:君塚良一
 監督:本広克行
 プロデュース:亀山千広
 ©2026『踊る大捜査線 N.E.W.』製作委員会
 公式サイト:https://odoru.com/
 公式X(旧Twitter):@odoru_movief
 公式Instagram:odoru_project
織田裕二/青島俊作の原点から最新へ ー 縦割り社会に立ち向かった刑事の軌跡
1997年、警察ドラマの常識を変える一本の作品が登場した。 それが『踊る大捜査線』だ。 警察組織の縦割り構造や上下関係、人間模様をリアルに描き、社会現象を巻き起こした本作は、単なる刑事ドラマではなく“働く人の物語”として、多くの視聴者の共感を集めた。 その中心にいたのが、織田裕二演じる刑事・青島俊作。 理想と現実の間で葛藤しながらも、「現場第一」を貫く姿は、当時の社会を生きる多くの人の心を動かした。 そして――2026年秋、青島が帰ってくる。 最新作『踊る大捜査線 N.E.W.』のクランクインが発表され、 ...
『室井慎次 生き続ける者』が語る“老いと死”とは?『踊る大捜査線』からの挑戦状
ついに公開された『踊る大捜査線』シリーズのスピンオフ映画、『室井慎次 生き続ける者』。前後編の完結編となる本作は、シリーズ最大の異色作として、これまでとは一線を画すテーマに挑んでいます。それは、「老い」と「死」という普遍的な問いかけ。本記事では、室井慎次の生き様を振り返りながら、本作が伝えようとした深いメッセージに迫ります。 12年ぶりの新作が描く“その後”の室井慎次 『踊る大捜査線』の象徴的な存在である室井慎次(柳葉敏郎)。警察官僚として青島俊作(織田裕二)たち湾岸署の刑事と激しくぶつかり合いながらも、 ...



































