
2025年10月31日に公開された映画『(LOVE SONG)』が、SNSを中心に静かな熱狂を巻き起こしている。
派手な演出や衝撃的な展開ではなく、淡く、切なく、そして痛いほどリアルな“想いの交錯”が観客の胸を打ち、「静かに泣ける映画」として口コミが広がっているのだ。
ここでは、公開初日から寄せられたSNS・レビューサイトの反応をもとに、この作品がなぜ多くの人の心を動かしているのかを読み解いていく。
公開初日からトレンド入り──“静かな熱狂”が起きた理由

映画『(LOVE SONG)』は、森崎ウィンとSnow Man・向井康二によるW主演作。
日本とタイの共同制作という異色のタッグで、監督・脚本はドラマ『2gether』を手掛けたチャンプ・ウィーラチット・トンジラー。
東京とバンコクを舞台に、大学時代にすれ違った2人の“両片想い”が、6年後に再び交わるまでを丁寧に描くピュアラブストーリーだ。
X(旧Twitter)では公開初日から「#映画ラブソング」「#感想投稿キャンペーン」といったハッシュタグがトレンド入り。
投稿の多くが「静かに泣けた」「余韻が長く残る」「音楽の使い方が秀逸」といった感情的なコメントで埋め尽くされた。
向井康二の“低音ボイス”が刺さる──観客が語る「カイという人物」

SNSやFilmarksで最も多く見られたキーワードは「声」と「目線」だ。
向井康二演じるカイは、表に出せない感情を抱えたカメラマン。
「自分の気持ちを隠すように、低く、少し掠れた声で話す」その演技が、観客の心に深く残った。
「声で泣いた」「言葉よりも呼吸で感情を伝えてる」
「康二くんの目に、恋と痛みが同居してた」
ファンレビューにはそんなコメントが並ぶ。
Snow Manとしての明るい印象とは対照的な“静かな激情”を表現し、新たな一面を見せたと評価する声が多い。
森崎ウィンが描く“伝えることの難しさ”

一方、森崎ウィン演じるソウタは、真面目で臆病な研究員。
再会したカイに対しても、素直に気持ちを伝えられない。
彼の演技は「泣かせにこない優しさ」「沈黙で語る芝居」と評され、感情の繊細な揺らぎを丁寧に描いている。
特に、ラスト近くのシーンでの“目だけでの演技”はSNSでも話題に。
「ただ立っているだけで心情が伝わる」「目の演技で泣けた」という声が相次いだ。
派手さはないが、確かに観客の感情を掴む芝居だ。
SNSレビュー分析で見えた“涙の構造”
主要レビューサイトの感想を分析すると、以下の傾向が浮かび上がる。
| サイト | 平均評価 | 高評価率(4以上) | 主なコメント |
|---|---|---|---|
| Filmarks | ★3.8/5 | 約38% | 「余韻が残る」「音楽が美しい」 |
| 映画.com | ★3.9/5 | 約40% | 「演技が丁寧」「映像が詩的」 |
| note・X | ― | ― | 「泣いた」「言葉がなくても伝わる」 |
調査時点でのデータですが、各レビューサイトでは、★4以上の高評価レビューが全体の約4割前後。
ただしSNS上では「良かった」「泣いた」といったポジティブな投稿が圧倒的に多く、
全体の約75%が“好意的または感動的”な感想を示している。
つまり、数値上の評価は中堅クラスでも、体験としての満足度が非常に高い作品であることがわかる。
“静かな余韻”を生むチャンプ監督の演出
チャンプ監督はこれまでも、BLドラマ『2gether』『Still 2gether』などで“間”と“沈黙”を重視した演出で知られる。
『(LOVE SONG)』でもその美学は健在で、登場人物の“何も言わない時間”が、観客の想像力を呼び覚ます。
「沈黙が台詞より雄弁」
「何も起きない数分間で涙が出た」
映像では、光の差し方・街の音・距離の取り方までもが物語を語る。
タイと日本、2つの都市の空気感が交錯する映像美も、本作を特別な体験にしている。
ネガティブな意見に見える“リアル”
一部のレビューでは「展開が唐突」「キャラクターの感情が分かりづらい」との指摘もある。
しかし、それを「人間の不完全さの表現」と捉える観客も多く、結果的に作品の深みとして受け止められている。
物語の“わからなさ”や“説明しない余白”が、再鑑賞を誘う要素になっているのだ。
観た人の数だけ“愛の形”がある
『(LOVE SONG)』は、声を荒げず、涙を強要しない。
けれども、観る人の中で確かに何かを揺らす。
“泣いた”という反応の裏には、誰もが心のどこかに抱える“伝えられなかった想い”が映っているのかもしれない。
向井康二と森崎ウィン、2人の繊細な演技が生んだこの“静かな奇跡”は、派手なラブストーリー全盛の中で、異彩を放つ作品となった。
そしてSNSの中では、今もなおその余韻が静かに広がり続けている。
追加考察:チャンプ監督が描く“言葉にできない愛”の系譜
チャンプ・ウィーラチット監督の作品には、常に“沈黙の中にある愛”というテーマが貫かれている。
彼の代表作『2gether』でも、恋を言葉で説明しすぎない構成が印象的だった。
『(LOVE SONG)』ではその手法をさらに深化させ、国や言語の違いを超えた“普遍的な愛”を描いている。
特に象徴的なのが、音楽の扱いだ。
劇中でカイが作る「LOVE SONG」は、単なる挿入歌ではなく、ソウタとカイの心の距離そのものを象徴する。
この曲が完成するまでの時間=二人が想いを言葉にできない年月、という構造が作品全体に通底している。
また、チャンプ監督はバンコクと東京という対照的な都市を“心の鏡”として描く。
雑踏と静寂、色彩と影、喧騒と沈黙――それらのコントラストが、愛の多面性を映し出す。
異国の風景を通して描かれる“孤独”や“再生”は、観る者の心に長く残る。
そして本作最大の特徴は、“BL映画”というジャンルを超えた普遍性にある。
恋の対象が誰であれ、想いを伝えることの難しさ、傷つく怖さ、そしてそれでも誰かを想う勇気。
このテーマが、観客の涙を呼んでいる。
『(LOVE SONG)』は、派手な恋愛ではない。
それでも、多くの人が「泣いた」と口にするのは、そこに“自分の物語”を見たからだ。
沈黙の中に宿る愛、その余韻こそが、今の時代に最も必要とされている“癒し”なのかもしれない。

















