
かつて煙に覆われたえんとつ町に、奇跡のような星空が戻ってきた夜を覚えているだろうか。
2020年に公開された『映画 えんとつ町のプペル』は、信じることを諦めない少年とゴミ人間の友情を通して、観客に「希望を見上げる力」を思い出させてくれた。あれから5年。空を取り戻した町に、再び“時”が動き出す。続編『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』が、2026年3月27日に全国公開される。
止まった時を動かす――新たな舞台「千年砦」へ
新章の舞台は、星空の夜から1年後。親友プペルを失ったルビッチは、“信じる”ことの意味を見失っていた。そんな彼が迷い込むのは、時を支配する異世界「千年砦」。そこでは、動かなくなった時計が廃棄される運命にあり、ひとつだけ“壊れていないのに11時59分で止まっている”不思議な時計台があった。
元の世界に戻る鍵は、この止まった時計を再び動かすこと。時が止まった理由と向き合うルビッチは、「信じて待つ」という行為の本当の意味に触れていく。
窪田正孝が再び吹き込む、プペルという“希望の声”
前作に続き、プペルの声を務めるのは俳優・窪田正孝。5年ぶりの続投となるが、その声には不思議なほどの一貫性がある。
「西野さんからプペルへの想いをずっと聞いていたので、また会えると聞いたときは純粋に嬉しかった」
そう語る窪田の言葉には、キャラクターと共に歩んできた年月の温度がある。短い収録時間の中でも、ルビッチとの掛け合いによって“新しい絆の形”が自然と立ち上がったという。前作での「信じ抜く強さ」が、今作では「信じて待つ優しさ」へと進化しているのかもしれない。
新ルビッチ・永瀬ゆずなが挑む、“信じる”声
ルビッチを演じるのは、NHK連続テレビ小説『あんぱん』で注目を集めた若手俳優・永瀬ゆずな。声優初挑戦となる彼女は、緊張の中でもルビッチの“まっすぐな心”を声に乗せた。
「窪田さんがお芝居の気持ちの流れを一緒に考えてくださって、楽しく収録できました」
永瀬のコメントからは、彼女自身がルビッチのように「誰かを信じて成長していく姿」が重なる。前作の芦田愛菜からバトンを受け取り、また新たな声で息を吹き込まれたルビッチは、“再生”という本作のテーマそのものを体現している。
西野亮廣が描く「時間」と「信頼」の寓話
原案は、にしのあきひろによる絵本『チックタック 約束の時計台』。今作では西野亮廣自身が製作総指揮・脚本を務め、監督は廣田裕介、アニメーション制作はSTUDIO4°Cが続投する。
“時間が止まる”というモチーフには、単なるファンタジー以上の意味がある。前作でえんとつ町が“信じる力”を取り戻したように、今回は「時間」という普遍的な概念の中に、人間の希望と後悔を重ねている。
止まった時計台は、誰かを待ち続ける心そのもの。西野の脚本には、「待つことを諦めない人間は、過去も未来も超えることができる」というメッセージが込められているように感じられる。
特報映像が語る“11時59分”の意味
公開された特報映像では、森の中で叫ぶルビッチの声が胸に刺さる。
「先に進んじゃったら、大切な人が帰ってくる場所がなくなっちゃうから!」
その叫びの裏にあるのは、「信じること」と「前に進むこと」の葛藤。ルビッチの背中を見つめる新キャラクター・モフ、そして“もう一度、会いたい”という文字。時計の針が止まるその瞬間、過去と未来が交差する。
ティザービジュアルには、長針の上に立つプペルと短針の上に立つルビッチが描かれている。見上げる構図は、まるで“信頼”という名の時間を象徴しているかのようだ。
“信じて待つ”という、現代へのメッセージ
SNSのように全てが“即結果”で流れていく時代にあって、「待つこと」は時に勇気を要する行為だ。だが、西野作品が一貫して描くのは、“待つ人の強さ”である。
プペルは信じ続ける者の象徴であり、ルビッチは信じることを一度手放した現代人の投影でもある。止まった時計を動かす物語は、誰もが一度は止まってしまった心の時計を再び動かす物語なのだ。
―再び動き出す時間の物語へ
『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』は、単なる続編ではない。星空を取り戻したあの夜の“その先”を描く、信頼と再会のドラマだ。
窪田正孝の深みある声、永瀬ゆずなの新鮮な感情、西野亮廣の寓話的脚本、そしてSTUDIO4°Cの緻密な映像美。そのすべてが再び交差する“11時59分”の瞬間に、私たちはきっと、時間の意味を問い直すことになるだろう。
「もう一度、君に会いたい」
――その言葉が、止まっていた何かを静かに動かし始める。
プペルが教えてくれる、“信じることを諦めない”という選択
「えんとつ町のプペル」は、絵本でも映画でも、一貫して「信じる勇気」を描いてきた。だが続編では、その勇気を持ち続けることの“難しさ”に踏み込んでいる。
誰かを信じるというのは、結果を求めずに待ち続けること。時計が止まっても、「きっとまた動き出す」と願う心こそが“奇跡”の正体なのだ。
プペルは、希望の擬人化であり、ルビッチにとっての“信仰”にも似た存在。だからこそ再会の瞬間には、単なる友情を超えた感情が生まれる。
西野亮廣がこの物語を通して伝えようとしているのは、“信じることをやめない人間は、時間さえも味方にできる”という真理なのだろう。
時が止まった世界を再び動かすのは、魔法ではない。誰かを思う優しさと、信じる心だけだ。
その小さな光が、煙の町を、そしてこの現実をも照らしていく。
🕰️ 『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』
2026年3月27日(金)全国公開
出演:永瀬ゆずな、窪田正孝
製作総指揮・脚本:西野亮廣
監督:廣田裕介
アニメーション制作:STUDIO4°C
原案:『チックタック 約束の時計台』(にしのあきひろ著)
配給:東宝・CHIMNEY TOWN
公式サイト:poupelle.com














