
鈴蘭男子高校の名が、再び雑誌の紙面を騒がせる。
1990年代を駆け抜け、累計9000万部を超える人気シリーズへと成長した『クローズ』『WORST』が、2026年1月13日から“正統続編”として帰ってくることが明かされた。前作『WORST』の完結から約13年──鎮まっていた“鈴蘭の血がたぎる世界”が、令和の読者に向けて再始動する。
今回は、シリーズの歩みと新連載の位置づけ、そして髙橋ヒロシ氏の現在の活動を整理しながら、この作品がどんな「新章」に向かうのかを丁寧に探っていく。
『クローズ』『WORST』が築いてきた世界
『クローズ』は1990〜1998年にかけて月刊少年チャンピオンで連載された不良漫画だ。
舞台は“最強”の呼び声高い鈴蘭男子高校。坊屋春道を軸に、力と誇り、仲間意識のぶつかり合いが描かれ、読者の胸を掴み続けた。
続く『WORST』では主人公が世代交代し、勢力図や価値観の変化を取り込みながら物語がより奥行きを深めた。どちらの作品でも、拳の強さだけが軸ではなく、「誰を背負い、どう生きていくのか」という高校生たちの葛藤や決意が根底に流れている。それが長く愛されてきた理由だろう。
鈴蘭の空気は荒々しい。しかし、そこに“孤独な男たちの生きざま”を感じ取る読者も多い。令和の今になって読み返しても、作中のエネルギーが古びないのは、その普遍性ゆえかもしれない。
2026年、正統続編が動き出す
新連載は2026年1月13日発売の『ヤングチャンピオン』3号でスタートする。ティザーサイトとムービーも公開され、舞台が再び鈴蘭男子高校であることが示唆された。
タイトルや主要キャラクターはまだ明かされていない。とはいえ、鈴蘭という舞台が続投するだけで読み手の期待が大きく膨らむ。時代は平成から令和へ。スマホがあたり前の高校生活になった今、あの校舎にどんな空気が流れているのだろうか──そんな想像が自然と芽生える。
今回“正統続編”とされる背景には、作者である髙橋ヒロシ氏本人が再び原作・作画を務め、世界観も直系の流れを踏襲する点が大きい。『クローズ』→『WORST』で築かれたラインの延長に物語が置かれるのは、ファンにとって安心感と同時に“次を見たい”原動力になる。
髙橋ヒロシ氏の現在地
2013年に『WORST』が完結してから、新連載に挑むのは実に13年ぶりとなる。
この間もシリーズの知名度は落ちるどころか、映画化・コラボ企画・スピンオフ作品などを通じてむしろ拡張され続けてきた。特に鈴蘭を核とした世界観は、メディアミックスを通じて幅広い層へ届き、ここ十数年で「作品を知らないけれど鈴蘭は知っている」という若い読者も増えている。
こうした状況下で作者本人が新たに筆を取るという事実は、シリーズにとってひとつの転換点と言える。
長いインターバルを経たことで、作家としての視点や表現がどのように変化しているのか。その“アップデートされた髙橋ヒロシ”が鈴蘭をどう描くのかが、大きな見どころだ。
続編で注目されるポイント
鈴蘭が舞台となる以上、ファンとして気になる点は尽きない。
旧作の人物がどれほど物語に影響するのか、新世代のキャラクター像はどうなるのか、令和という時代の空気がどう物語に入り込むのか──。
特に、現代の高校生文化と“鈴蘭らしさ”のバランスがどう描かれるかは、一つの焦点になってくるだろう。SNS全盛の時代に、拳がモノをいう世界はどう成立するのか。あるいは、そこにどんなリアリティが生まれるのか。
作品そのものはフィクションでありながら、現代社会との繋がり方は避けて通れない。むしろそこをどう捉えるかで、シリーズの新しい魅力が形づくられるはずだ。
鈴蘭の新章に向けて
『クローズ』『WORST』が築いた世界は、時代をまたいでも存在感を放ち続けている。今回の続編発表によって、その世界が再び動き出す。
旧作を読んできた世代にとっては懐かしく、これから触れる世代には入口としてちょうど良いタイミングだ。13年の歳月を経て、どんな物語が広がるのか。連載開始の1月13日は、久しぶりに鈴蘭の“風”を感じる日になりそうだ。
なぜ今、“不良漫画”が再び求められるのか
近年、漫画のジャンルは多様化し、青春物・ファンタジー・バトル・日常系などが幅広く読まれるようになった。
その中で、かつて主流の一画を占めていた“ヤンキー漫画”は、派手さよりも静かな存在感を持つジャンルになっている。
しかし、“静かになった”からこそ、鈴蘭のような強烈な舞台設定は逆に際立つ。トラブルや対立が一気に表面化する世界観は、現代の読者にとって非日常でありながら、どこか人間的な魅力を備えている。
不良漫画の根底にあるのは、自己証明の物語だ。
誰に褒められるわけでもない。社会的な成功が保証されるわけでもない。
それでも「ここで生きる」「この仲間を守る」という意志を貫く姿は、どれだけ時代が変わっても胸を打つ。
現代社会では、自分を押し出すことに慎重になりがちな空気もある。そんななか、鈴蘭のキャラクターたちが持つ“直球の生き方”は、フィクションならではの魅力として響きやすいのだと思う。
さらに、旧作が多くの人に支持されてきた理由のひとつに、“強さの形に幅があったこと”がある。単にケンカが強い誰かが頂点に立つわけではなく、弱さを抱えた者、周囲との関係に悩む者、意地だけで立ち続ける者──それぞれが物語を形作っていた。
この多層的なキャラクター構造は、続編でも継承される可能性が高い。むしろ現代的なテーマと組み合わせることで、より深く描かれる余地がある。
新連載がどんな物語になるのかはこれから明らかになるが、「鈴蘭である」というだけで多くの読者が心を動かされる理由はここにある。
時代が変わり、文化が変わっても、鈴蘭男子高校という舞台は変わらない。だからこそ、変わった部分・変わらない部分の両方に注目すると、より味わい深く読めるはずだ。

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