
日本のお笑い界における最高峰の漫才賞レース、M-1グランプリ。2025年12月21日、エントリー総数11,521組の頂点が今夜決まる。
今年のM-1は、例年以上に「読みづらい」と言われてきた。ラストイヤーの物語はなく、初決勝と常連が混在し、突出した“絶対王者”もいない。にもかかわらず、X(旧Twitter)上の優勝予想を整理すると、ある明確な構造が浮かび上がってくる。
それは──空気は割れているようで、実は割れていない、という事実だ。
X上の優勝予想を「割合」で見ると何が見えるのか
Xでは決勝当日に向けて、三連単予想、単独1位予想、願望混じりの投稿が大量に流れる。
これらを横断的に整理し、「誰が優勝すると思うか」が明示された投稿のみを割合ベースで見ると、支持は次のように分布している。
真空ジェシカ:約4割
エバース:約3割
ヨネダ2000:約1.5割
ヤーレンズ:約1割弱
その他(敗者復活・初決勝組など):1割未満
注目すべきは、上位2組だけで全体の約7割を占めている点だ。
これは単なる人気投票ではない。投稿内容を読むと、支持理由がはっきり二方向に分かれている。
真空ジェシカ支持が集まる理由|「今年こそ」という感情の臨界点
真空ジェシカを推す投稿で目立つのは、次の言葉だ。
「5年連続決勝」
「そろそろ報われてほしい」
「今年を逃したら、いつなんだ」
これはネタ単体の評価というより、積み重ねてきた時間への信頼に近い。
毎年のように決勝で結果を残しながら、あと一歩届かなかった。その履歴を視聴者も審査員も共有しているからこそ、今年の真空ジェシカには「空気」がある。
X上ではこの“感情の共有”が強く、いいね数や閲覧数も自然と伸びやすい。支持割合が最も高くなるのは、ある意味で必然だ。
ただし、M-1は感情を競う大会ではない。
エバース支持が示すもの|点数で勝つ漫才という発想
一方、エバースを支持する投稿で多いのは、感情よりも構造の話だ。
「2本とも振れにくい」
「審査員全員が点を入れやすい」
「去年4位からの上積みが明確」
ここにあるのは、“勝ち方が説明できる”漫才への評価である。今年の審査員構成を考えると、極端に尖った一撃よりも、
設定が明確
ツッコミの役割が整理されている
笑いの理由が言語化できる
こうしたネタが高得点を安定して積み上げやすい。
X上の支持割合が真空ジェシカよりやや低いのは、「好き・応援したい」より「一番点を取るのはここだと思う」という冷静な判断が多いためだ。
ヨネダ2000・ヤーレンズは“展開次第”の位置
割合で見ると、ヨネダ2000は約1.5割、ヤーレンズは1割弱。
どちらも評価は高いが、「優勝する姿が明確に想像できるか」という点で、上位2組とは一線が引かれている。
ヨネダ2000は初見のインパクトと独自性で跳ねる可能性があり、ヤーレンズは大崩れしない安定感がある。ただし、2本続けて最大値を出すイメージを持つ人は少ない。
この差が、割合にそのまま表れている。
では、X世論は勝敗を予言しているのか?
答えはNOだ。だが、無視できるほど軽くもない。
Xの割合が示しているのは、「今年のM-1をどういう大会だと多くの人が見ているか」という認識の集合体だ。そして今年は、
感情で押すなら真空ジェシカ
点数で積むならエバース
という二択に、視聴者の視線がかなり収束している。
最終予想|2025年、最も“勝ち筋が細く長い”のは
すべてを踏まえた上での結論は、こうだ。
優勝候補筆頭:エバース
完成度、審査員適性、2本目まで見据えた設計。最も「減点されにくい」漫才をしてくる可能性が高い。
対抗:真空ジェシカ
支持割合は最大。1本目で流れを完全につかめば、そのまま頂点に立っても何ら不思議ではない。
今年のM-1は、どちらが面白いかではなく、どちらが“2本で勝ち切るか”の大会になる。
生放送が終わったとき、「やっぱりそうなったか」と感じる人が多いなら、それはこの二強構造が、最初から見えていたということだ。
あとは、舞台の上で確かめるだけである。





