
舞台 ハリー・ポッターと呪いの子 日本公演が、2026年12月27日をもって幕を下ろす。そのラストイヤーに用意された最大の見どころは、演出でも魔法演出でもない。
「ハリー・ポッター役が10人存在する」という、前代未聞のキャスティングそのものだ。
4年間にわたるロングランの歴史で生まれた“歴代ハリー”が一堂に集結し、さらに象徴的な新キャストも加わる。この舞台は今、物語ではなくキャストで観る作品へと到達している。
10人全員が主役級という異常な贅沢
今回発表されたハリー・ポッター役は以下の10名。
- 藤原竜也
- 石丸幹二
- 向井理
- 藤木直人
- 大貫勇輔
- 吉沢悠
- 稲垣吾郎
- 平岡祐太
- 上野聖太
- 小野賢章
注目すべきは、単なる人数の多さではない。全員が映像・舞台・音楽と、それぞれの分野で主役を張ってきた俳優である点だ。
通常、主役交代制はリスク管理の一環として行われる。しかし本作は逆に、主役を増やすことで作品価値を高めてきた稀有な成功例と言える。
初演を支えた“重鎮ハリー”の説得力
日本公演の信頼を築いたのは、藤原竜也・石丸幹二・向井理という1stシーズンの3人だ。
藤原の圧倒的な言葉の密度、石丸の品格と安定感、向井の理知的な父性。
この3者3様のアプローチが、「ハリー像は一つではない」という前提を観客に刷り込んだ。
ここで方向性が固定されなかったことが、後のキャスト展開を可能にした。
異分野トップが更新し続けたハリー像
藤木直人の親しみやすさ、大貫勇輔の身体性、吉沢悠の内省的な芝居。
そこに稲垣吾郎という唯一無二の存在感が加わったことで、ハリーは“英雄のその後”ではなく、生身の37歳の男として立体化されていった。
誰か一人が「正解」ではない。
だからこそ、観るたびに別の物語が立ち上がる。
上野聖太と小野賢章が象徴するラストイヤー
ラストイヤーを象徴する存在が二人いる。
長年カバーキャストとして全ハリーを支えてきた上野聖太、そして映画シリーズでハリーの吹替を担当してきた小野賢章だ。
特に小野の参加は、日本版ハリー・ポッター史を知るファンにとって特別な意味を持つ。
“声で演じてきたハリー”が、舞台で実体を得る。
これは話題性ではなく、時間を重ねたシリーズだからこそ成立する出来事だ。
ラストイヤーは「誰を観るか」で選ぶ舞台
出演時期が細かく分かれているため、どの月に行っても主役級が舞台に立つ。
つまり今年の観劇体験は、
作品を観る → ハリーを選ぶ → 解釈の違いを楽しむ
という、極めて贅沢な構造になっている。
同じ台本、同じ演出。それでも、父と息子の距離感、怒りの質、後悔の重さは、俳優が変わればまったく別物になる。
なぜ「キャストで観る舞台」は成功したのか
『ハリー・ポッターと呪いの子』日本公演が4年続いた理由は、魔法演出の完成度だけでは説明できない。キャスティングそのものを“更新装置”として機能させたことが、最大の要因だ。
主役を固定しないことで、作品は劣化せず、むしろ解釈を蓄積していった。ラストイヤーに10人のハリーが並び立つのは、その到達点にほかならない。
これは伝説ではなく、設計された成果だ。
だからこそ言える。日本版『ハリー・ポッターと呪いの子』の最終章は、キャストで観るべき舞台である。
舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」
開催日程・会場
2022年7月8日(金)〜2026年12月27日(日)
東京都 TBS赤坂ACTシアター
スタッフ
オリジナルストーリー:J.K.ローリング
脚本・オリジナルストーリー:ジャック・ソーン
演出・オリジナルストーリー:ジョン・ティファニー
振付・ステージング:スティーヴン・ホゲット
演出補:コナー・ウィルソン



