
アイドルとしての活動と並行しながら、俳優としても着実にキャリアを重ねてきた小瀧望。
その歩みは決して急激な変化ではないが、舞台作品への出演を重ねる中で、表現の深度が少しずつ広がっている。
そんな彼が出演するのが、井上ひさしの未上演戯曲『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』である。2022年にテレビ東京系「開運!なんでも鑑定団」で発見された本作は、1959年に書かれた初期作品をもとにしたもの。東北の民話「馬喰八十八」を下敷きに、人間の欲望や共同体の歪みを描く物語だ。
小瀧が演じるのは、物語の中心となる太郎。外部から村に現れ、人々を翻弄していく存在であり、この役は彼の俳優としての現在地を考えるうえでも象徴的な一役と言えそうだ。
一筋縄ではいかない主人公・太郎という存在
太郎は、いわゆる“共感しやすい主人公”とは異なる。強情で薄情、そして徹底して自分本位に振る舞う人物として描かれている。
小瀧自身もこの役について、「気持ちいいくらい自分中心に生きているひどい人」と表現しているが、その一方で、迷いのない生き方にある種の魅力も感じたと語っている。
ここで重要なのは、この人物を単純な善悪で捉えていない点だ。理解しきれない部分を含めて向き合い、その輪郭を掘り下げていくこと自体が、今回の役作りの核になっている。
観客にとっても、好悪が分かれる可能性のある人物でありながら、その存在をどう成立させるか。そこに俳優としての解釈と表現のバランスが問われる。
藤田俊太郎の演出と舞台という環境
本作の演出を手がけるのは藤田俊太郎。言葉の持つ力を丁寧に立ち上げる演出で知られ、「言葉の美しさ」と「言葉のこわさ」に向き合う作品づくりを重視している。
小瀧は藤田との仕事を以前から望んでいたことを明かしており、今回の共演について強い喜びを語っている。
舞台は映像と異なり、その場での表現がすべてとなる。編集ができない環境だからこそ、役への理解や身体表現、言葉の扱いがそのまま観客に届く。太郎のように複雑な人物を演じるには、技術だけでなく解釈の深さも求められる。
実力派キャストとの群像劇
共演には音月桂、加藤梨里香、大鶴佐助、小松利昌、小林きな子、小柳心、尾倉ケント、森加織、安井順平、そして梅沢昌代といった多彩な顔ぶれが揃う。
それぞれのコメントからも、この作品が簡単に感情移入できるタイプの物語ではないことがうかがえる。登場人物たちは、欲望や打算といった感情をあらわにしながら物語を動かしていく。
その中心に立つ太郎は、単なる主人公というよりも、人間の内面を浮かび上がらせる役割を担う存在でもある。周囲の人物との関係性の中で、その輪郭がより立体的に浮かび上がっていく構造だ。
小瀧望のキャリアと今回の挑戦

小瀧望はこれまで、グループ活動と並行してドラマや舞台など幅広い作品に出演してきた。舞台作品では『エレファント・マン』『検察側の証人』『ザ・ビューティフル・ゲーム』『DEATH TAKES A HOLIDAY』『梨泰院クラス』などに出演し、着実に経験を積み重ねている。

そうした流れの中で今回の太郎役は、これまで以上に内面へのアプローチが求められる役柄と言える。人物の魅力だけでなく、理解しづらさや危うさも含めてどう表現するかが鍵になる。
未上演戯曲という特性もあり、既存の解釈に縛られない自由さがある一方で、ゼロから人物像を構築していく難しさも伴う。その環境の中でどのような太郎像を提示するのかは、大きな見どころの一つだ。
「午年」と重なる出演の意味
小瀧は今回の出演について、「午年に『うま』という舞台に挑戦できる奇跡」と語っている。偶然とも言える巡り合わせではあるが、本人にとっては印象的なタイミングであることがうかがえる。
俳優にとって作品との出会いは、自らの選択と同時にタイミングにも左右される。特に今回のように初めて上演される戯曲に関わることは、作品の立ち上がりそのものに関与する経験でもある。
俳優としての現在地を映す一作
『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』は、小瀧望にとって新たな挑戦であると同時に、これまで積み重ねてきた経験が試される場でもある。
一筋縄ではいかない人物へのアプローチ、舞台という濃密な表現空間、そして未上演戯曲という特性。これらが重なることで、本作は彼の俳優としての現在地を考えるうえで重要な作品となりそうだ。
グループ活動で培ってきた表現力を土台にしながら、舞台という場でどのような新たな側面を見せるのか。その過程そのものが、今回の見どころと言えるだろう。
なぜ今、「人間の本質」を描く作品が注目されるのか
近年、「人間の本質」に迫る作品が改めて注目されている背景には、情報環境の変化がある。SNSや短尺コンテンツの普及によって、私たちは日常的に分かりやすく整理された物語に触れる機会が増えた。
しかし現実の人間は、単純な善悪や明快な動機だけでは説明できない。矛盾や曖昧さ、説明しきれない衝動を抱えている存在だ。
『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』に登場する太郎は、その複雑さを象徴する人物である。外部から現れ、人々の欲望を刺激し、共同体の内部に変化をもたらしていく。その構造は、現代社会における情報や影響力の広がり方とも重なる部分がある。
1959年に書かれた作品でありながら、現代にも通じるテーマを持つ理由は、こうした普遍性にあると考えられる。
一方で、こうした作品を成立させるためには、観客にすべてを説明しすぎないことも重要になる。理解の余白を残しつつ、人物の輪郭を提示する。そのバランスは非常に繊細であり、俳優の解釈力が大きく影響する。
小瀧望にとって今回の役は、そのバランスを探る試みでもあるだろう。人物を単純化せず、かといって観客を置き去りにもしない。その間をどう行き来するのかが、演技の核となる。
こうした挑戦の積み重ねが、俳優としての表現の幅を広げていく。今回の舞台は、その過程を示す一つの節目として位置づけられる可能性がある。
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