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30代のあいみょん、2025年に何が変わった?「学ぶ人」としての現在地

30代のあいみょん、2025年に何が変わった?「学ぶ人」としての現在地

2025年のあいみょんを見ていると、派手なニュースの数よりも、じわっと効いてくる変化がありました。

それは「歌がうまくなった」みたいな分かりやすい話ではなく、もっと生活に近いところで起きている変化。本人の言葉を借りるなら、キーワードは「学ぶ」です。

年末の「第76回NHK紅白歌合戦」リハーサル後の囲み取材で、彼女は今年を表す漢字に「」を選びました。「30代になって、無知はこわい、もっと学ばねばと思うようになった」と語り、ライブのために韓国語を勉強したことや、手話検定4級を取得したことも明かしています。

この“学び”の話って、言い方を間違えると説教っぽくなるはずなのに、あいみょんの場合は変に重くならない。そこに、2025年の人物像がそのまま出ている気がします。







真面目な話を、ちゃんと軽く届ける人

30代のあいみょん、2025年に何が変わった?「学ぶ人」としての現在地

象徴的だったのが、ショートヘアでの登場でした。長く伸ばしていた髪をばっさり切った理由はヘアドネーション。まっすぐな背景があるのに、本人は「シャンプー1滴くらいで洗えます!」と笑いに変える。

真面目さを、真面目なまま押しつけない。良い意味で“照れ”があって、だからこそ言葉が柔らかく届くんですよね。

紅白の話題でも同じでした。出場は7回目でも「慣れはない」と言い、「芸能人がいっぱいで、めっちゃミーハーなので『混じってええんかな』って侵入している気持ちになる」と語る。大舞台の中心に立つ人なのに、スタンスがどこか「観客側の気持ち」から離れない。

この距離感が、あいみょんという人の核なのかもしれません。

2025年は、活動が“線”でつながった一年だった

2025年のあいみょんは、とにかく現場が途切れません。ただ忙しいだけじゃなくて、出来事が一本の線としてつながって見えるのが特徴でした。

年明けから2月にかけては、アリーナツアー「AIMYON TOUR 2024-25 “ドルフィン・アパート”」が走り抜け、本編の区切りとなる公演は2月13日の大阪城ホール。けれど、ここで終わりではなく、春には海外を含む追加公演へ続いていきます。台北・ソウル公演が入ってくるあたりで、紅白で語った「韓国語を勉強してライブで使った」という話が、きれいに現場へ接続してくるんです。学びが“趣味”じゃなく、“ステージの道具”になっている感じがする。

そして3月。『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』の主題歌「スケッチ」を担当し、主題歌・挿入歌を収録したシングルもリリース。30歳という節目のタイミングと重なったこともあって、単なるタイアップ以上に「今のあいみょんが出た仕事」に見えました。大げさな自己紹介より、作品で名刺を出すタイプの30代の始まり、というか。

夏には、TBS系日曜劇場『19番目のカルテ』の主題歌として「いちについて」を書き下ろし。医療の現場、それも“総合診療医”というテーマを扱うドラマに寄り添う曲を用意したことで、あいみょんの「人を見て書く力」が改めて前面に出ました。

2025年は、ドラマや映画の“物語”に寄り添いながらも、同時に自分の生活の言葉を曲に混ぜていく、その配合がうまくなっている印象があります(あくまで受け取り方ですが、ここは多くの人が共感しやすいポイントだと思います)。

秋には18thシングル「ビーナスベルト」をリリース。そこから年末、紅白で歌う曲としても発表され、2025年の締めくくりへ。作品としての「点」が、紅白という大舞台で「線」になる。年の終わりにちゃんと“着地”が用意されているところが、いかにも2025年のあいみょんでした。

さらに年末前後には「AIMYON TOUR 2025+ “ヘブンズ・ベーカリー”」もスタート。単独ライブでは未踏の地を巡る、という打ち出しもあって、本人の「やったことのない場所へ行く」姿勢が見えます。安心できる型に収まらない。これもまた、30代っぽい変化の表れに見えるんですよね。







「30代で変わったこと」を、3つに絞るなら

30代のあいみょん、2025年に何が変わった?「学ぶ人」としての現在地

2025年のあいみょんを“人物像”としてまとめるなら、変化は派手じゃないけど確実にあります。私はこの3つが大きいと思います。

まずひとつ目は、「知らないこと」への感度が上がったこと。本人が「無知はこわい」と口にした時点で、価値観の軸が少し変わっている。成功して忙しくなるほど、学びは後回しになりがちなのに、そこを前に持ってくる。ここに30代のリアルがあります。

ふたつ目は、学びがスキル自慢ではなく“届き方”の工夫になっていること。韓国語を学んでMCに使った、手話を学んで検定を取った。どちらも、舞台の上で「伝える」を増やす方向に働く。学ぶ理由を語りすぎないのも、あいみょんらしい誠実さです。

そして三つ目が、真面目さを笑いで包む技が、いよいよ上手くなったこと。ヘアドネーションの話から「シャンプー1滴」まで持っていく軽さ。紅白で「侵入してる気持ち」と言える照れ。こういう言葉の出し方があるから、学びの話も気負わず読めるし、聞ける。結局、あいみょんの“学び”は、本人のキャラクターと矛盾しないところが強いんです。







2025年の「学」は、努力アピールじゃなく“信頼の作り方”だった

「学ぶ」という言葉は、受け取り手によっては少し厄介です。頑張っているアピールに見えたり、あるいは「意識高い」方向に転びやすい。でも、2025年のあいみょんが語った「学」は、そういう空気になりにくかった。理由は単純で、彼女が“学び”を誇張して見せなかったからです。韓国語も手話も、話題にするときのトーンは淡々としていて、「すごいでしょ?」より「必要だからやった」が先に立つ。これって、実はかなり信頼に直結します。

信頼って、派手な成功談だけでは作れません。むしろ「自分はまだまだ」と言える人のほうが、長い目で見て強い。紅白のような大舞台で、出場7回目でも「慣れはない」と言うのは、見栄を張るより“等身大”を選んでいるということ。そこに、本人が言う「無知はこわい」という感覚が重なると、話が一本につながってきます。できることが増えたからこそ、知らないことの怖さもわかる。だから学ぶ。すごく当たり前のようでいて、実際はなかなかできない循環です。

さらに2025年の活動は、学びがきちんと現場へ落ちているのも大きい。海外公演を含むツアー、映画の主題歌、日曜劇場『19番目のカルテ』の主題歌、そして年末の紅白。ステージの種類が変われば、言葉の届き方も変わる。テレビは一瞬で流れていき、映画は物語の中に残り、ライブはその日の空気になる。届き方が多様になるほど、表現者は“伝える手段”を増やしたくなる。韓国語や手話という学びは、その延長線上に置くとすごく自然です。

そして、ここで改めて効いてくるのが、あのショートヘアの話なんですよね。ヘアドネーションというまっすぐな行動があり、その話をしながら笑いも取る。重さと軽さを同居させる技術は、歌詞の作り方とも通じるものがあります。2025年のあいみょんは、作品の成果だけで語るより、「どう学び、どう言葉を渡すか」を含めて見たほうが輪郭がはっきりする。30代の変化って派手な路線変更じゃないことが多い。でも、こういう“信頼の作り方”の更新こそ、あとから効いてくる変化だと思います。

30代のあいみょん、2025年に何が変わった?「学ぶ人」としての現在地

2025/12/30

30代のあいみょん、2025年に何が変わった?「学ぶ人」としての現在地

2025年のあいみょんを見ていると、派手なニュースの数よりも、じわっと効いてくる変化がありました。 それは「歌がうまくなった」みたいな分かりやすい話ではなく、もっと生活に近いところで起きている変化。本人の言葉を借りるなら、キーワードは「学ぶ」です。 年末の「第76回NHK紅白歌合戦」リハーサル後の囲み取材で、彼女は今年を表す漢字に「学」を選びました。「30代になって、無知はこわい、もっと学ばねばと思うようになった」と語り、ライブのために韓国語を勉強したことや、手話検定4級を取得したことも明かしています。 ...

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ポプバ編集部:Jiji(ジジ)

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