TBS系ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』第4話では、玉森裕太演じる海里が抱える過去の悲劇と罪への苦悩が、衝撃的なラストシーンによって再び視聴者の心を揺さぶりました。

黒髪時代の爽やかで真っ直ぐな姿から、現在の金髪でどこか虚無的な雰囲気をまとった姿まで、玉森はその演技力で時の流れと心の変化を見事に表現。7年間止まっていた海里の時が動き出す瞬間、そして彼を取り巻く人々の複雑な思いが交差する中、隠されていた真実が少しずつ明らかにされていきます。

ボクシングの挫折と「クズ」への転落—止まったままの時を生きる海里

物語の中心となるのは、かつてボクサーとして未来を期待されていた海里が、先輩であり恩師でもあったボクサー・大地を負傷させてしまった過去。

海里はこの事故をきっかけに自責の念に苛まれ、ボクシングからも、かつての自分からも背を向けるようになります。さらに、彼を支え続けたゆい（岡崎紗絵）も病気によりボクサーの夢を諦めざるを得ず、両者の未来が暗転してしまいました。7年という長い年月を経ても、海里は自身を「クズ」と称し、あえて贖罪のために夢や未来を断念しているのです。

黒髪時代の爽やかで夢に満ちた青年から、やつれた金髪姿の現在の海里への変化を見せることで、玉森はその葛藤や傷を余すことなく視聴者に届けます。かつて「尊敬していた先輩を自らの拳で失わせた」というトラウマから、彼は自身を許すことができず、ひたすらに「クズであり続けること」を選んでいるのです。

ゆいと海里の止まった時間—「再びボクシングを生きろ」という願い

そんな海里に対し、ゆいは再び彼の前でセコンドに立つことを決意します。

彼女が、海里に試合会場で「自分の人生を生きてほしい」と託した言葉は、7年間の苦しみから彼を解放しようとする一縷の望みが込められていました。だが、試合会場で彼を待ち受けていたのは、過去のトラウマの鮮烈なフラッシュバック。心の深い傷を抱え、過去と決別することができない海里の姿には、視聴者も息をのむばかりです。

また、ゆいにとって海里は「特別な人」であり、彼をどこかで「変えたい」という願いが募っていましたが、そのきっかけを与えたのが自分でなく、別の人物であったことに一抹の寂しさも感じているようです。そんな彼女の姿も、視聴者の心に切なく響きます。

錯綜する恋模様と人間関係—恋の六角形が生む波乱

一方、周囲の人々もまた複雑な思いを抱き始めます。

市役所のエース公務員・奏斗（小関裕太）の思い人であるほこ美（奈緒）は、海里の過去とゆいとの絆を知りながらも、海里に惹かれていく自分を止められないようです。さらに、奏斗自身もまた、ほこ美の気持ちを感じ取りながら彼女と海里の関係が気になり、微妙な空気が漂い始めます。まさに恋の六角形が生まれる展開となり、それぞれの思いが交差していく様子が新たな見どころとなっています。

衝撃のラストシーン—海里への激しい憎悪を燃やす成会長

そして何より視聴者を驚かせたのが、海里が大地の墓参りをした後のラストシーン。

海里が供えた花を無情にも引き抜き、踏みにじる会長・成（渡部篤郎）の姿に、海里に向けられた深い憎悪と悲しみが表れます。かつて海里を息子のように見守ってきた成のこの行動は、単なる憤りにとどまらず、海里に対する複雑な感情を物語っているかのようです。成がこれほどまでに憎しみを募らせる背景には、彼の娘に対する思い、そして彼にとっての海里の存在が影響していると考えられます。

今後、成と海里の因縁がどう展開し、成が何を企むのか、そして彼の娘やゆい、ほこ美らの思いがどう交錯していくのか、視聴者の関心がさらに高まっています。

人間の再生と贖罪、そして未来への道筋

『あのクズを殴ってやりたいんだ』は、過去の過ちやトラウマからの再生がテーマとなっており、海里を取り巻く人々の成長や苦悩がドラマチックに描かれています。それぞれが「自分の人生を生き直す」ための第一歩を踏み出すことができるのか、次回以降の展開から目が離せません。海里が未来に向かって歩き出す瞬間が訪れるのか、その鍵を握るのは、ゆい、そして成の動向かもしれません。

玉森裕太の圧巻の演技と、登場人物たちの絡み合う感情が視聴者を引き込み、物語を深みあるものへと昇華させています。

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