ドラマ 国内ドラマ

中条あやみが見せた“率直さの力”─『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話が描く、恋愛の気づきと再生

中条あやみが見せた“率直さの力”─『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話が描く、恋愛の気づきと再生

爽快な“椿”の登場が揺さぶるもの

TBS系ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話(10月21日放送)は、主人公・勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)がそれぞれ別の相手とデートに臨むという転換点となった回だ。

中条あやみ演じる椿が放つ率直な言葉の数々が、勝男の心に深い変化をもたらす。まるで鏡のように、彼の“無意識の傲慢さ”や“恋愛の偏り”を映し出していく姿が鮮烈だった。

そして一方では、鮎美が新たな相手・ミナト(青木柚)とのデートで「本音を言えない自分」と向き合う。

恋愛の再生とは、誰かに出会うことではなく「自分自身を見つめ直すこと」——第3話はそんな普遍的なテーマを浮かび上がらせている。

「椿」が映す“正直さ”の強さ

勝男がマッチングアプリで出会ったのは、経営者としても自立した女性・椿(中条あやみ)。

彼女は待ち合わせ場所を指定する勝男の提案を軽やかにかわし、「私の行きつけに行こう」と言い切る。その瞬間から、彼女がこのデートの主導権を握っていた。

「お金を持ってる方がお会計すればいい」——この一言には、彼女の哲学が詰まっている。恋愛も支払いも“対等であること”を当然とする価値観。勝男が抱く“男性がリードするべき”という旧来の思い込みを、椿は軽やかに崩していく。

中条あやみは、これまでにも芯のある女性像を多く演じてきた。『君と世界が終わる日に』ではサバイバルの中で強く生き抜く恋人役を、『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』では命と真摯に向き合う研修医を演じた。しかし今回の椿は、強さにユーモアと人間味をまとった新鮮なキャラクターだ。

彼女の「率直さ」は相手を傷つけるためではなく、対等な関係を築くための誠実さとして描かれている。中条の柔らかくも凛とした存在感が、そのバランスを絶妙に保っていた。

勝男が直面する「自己反省」と“恋愛の型”

おでんを振る舞うお家デートのシーン。前日から丁寧に仕込んだ勝男に対し、椿は「コンビニくらい美味しい」と悪気なく言い放つ。この言葉が、勝男にとっての転機となる。

彼女は知らない。勝男がどれほど手間をかけたかを。しかし、彼の心に突き刺さったのは、言葉そのものではなく「無意識に人を評価していた過去の自分」との重なりだった。

これまで勝男は、鮎美に対して“彼女らしさ”を求め、自分の価値観の中で彼女を測っていた。

椿との時間を経て、「自分は型にはめられたくないのに、相手を型にはめていた」と気づくシーンは、竹内涼真の繊細な演技によって深い余韻を残す。

涙を流す勝男の姿には、後悔ではなく“再生の入り口”が映っていた。

鮎美とミナト、“優しさの仮面”の下にあるもの

中条あやみが見せた“率直さの力”─『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話が描く、恋愛の気づきと再生

一方、鮎美は酒屋の店員・ミナト(青木柚)とデートを重ねる。

スイーツ食べ歩きを提案され、実は甘いものが苦手なのに「言えない」まま付き合ってしまう鮎美。彼女の中には“相手に合わせてしまう”癖が根強くある。

それは勝男との関係でも同じだった。彼が望む「理想の彼女」を演じようとし、自分の本音を封じ込めていたのだ。

そんな鮎美に告白され、あっさりと付き合うミナト。しかし彼には“複数の女性と関係を持っている”という噂がある。柔らかい笑顔の裏に、どこか得体の知れない影。

青木柚の芝居は、その危うさを絶妙に滲ませる。まるで『凪のお暇』のゴンのように、優しさが毒にもなりうる存在として鮎美の前に立ちはだかる。

この展開が、鮎美の“自分を取り戻す旅”のきっかけになるのかもしれない。

「率直さ」は人を変える──恋愛ドラマの新機軸

椿の「率直さ」は、勝男にとってただの刺激ではない。それは“自分を見つめ直す鏡”だった。

恋愛において“優しさ”や“思いやり”は美徳とされがちだが、そこに「正直さ」が欠けると、関係はゆがんでいく。

勝男と鮎美は、まさにその罠にはまっていた。

相手のためにと自分を抑えることが、いつの間にか「本音を失うこと」になっていたのだ。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、そんな男女のリアルな葛藤を、料理という行為を通して描いている。

「作る」「味わう」「共有する」——その一つひとつが、恋愛における“対話”のメタファーでもある。

椿の率直さは、勝男にとって“他人と向き合う勇気”を取り戻すスパイスだったのだ。

令和の恋愛ドラマが描く“自己リセット”の物語構造

近年の恋愛ドラマには共通した潮流がある。それは「他者を愛する前に、自分を理解する」物語だ。

『凪のお暇』では“生き方のリセット”が描かれ、『silent』では“言葉を超えた理解”がテーマになった。

そして『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、“恋愛の再構築”を現代的な角度から描いている。

中条あやみが体現する“率直であること”は、いまの時代にこそ響く要素だ。SNSで人と比べ、言葉を選びすぎる時代に、彼女のように「思ったことを素直に伝える」強さは鮮烈に映る。

一方で、その率直さが相手をどう揺さぶり、どう成長させるのか。そこに本作の深みがある。

恋愛は、相手を変える物語ではなく、自分が変わる物語だ。

勝男が椿に出会い、鮎美がミナトに出会った意味は、まさにそこにある。

“率直さ”とは、相手に正直である以前に、自分に嘘をつかない勇気のこと。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話は、その勇気を軽やかに描き出した、現代恋愛ドラマのひとつの到達点だった。


中条あやみが見せた“率直さの力”─『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話が描く、恋愛の気づきと再生

2025/10/22

中条あやみが見せた“率直さの力”─『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話が描く、恋愛の気づきと再生

爽快な“椿”の登場が揺さぶるもの TBS系ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話(10月21日放送)は、主人公・勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)がそれぞれ別の相手とデートに臨むという転換点となった回だ。 中条あやみ演じる椿が放つ率直な言葉の数々が、勝男の心に深い変化をもたらす。まるで鏡のように、彼の“無意識の傲慢さ”や“恋愛の偏り”を映し出していく姿が鮮烈だった。 そして一方では、鮎美が新たな相手・ミナト(青木柚)とのデートで「本音を言えない自分」と向き合う。 恋愛の再生とは、誰かに出会うことではなく ...

竹内涼真×夏帆『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第2話レビュー|勝男と鮎美、すれ違いの中に芽生えた“優しさ”

2025/10/22

竹内涼真×夏帆『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第2話レビュー|勝男と鮎美、すれ違いの中に芽生えた“優しさ”

壊れた日常と、変化の兆し 「別れる」という選択が、始まりになることもある。 第2話は、勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)の関係を一度リセットしたことによって、2人がそれぞれに見つめなおす時間の断片を丁寧に織り込んでいます。「気づいてほしい」鮎美、「変わろうとする」勝男。すれ違いながらもそこに“優しさ”の種が落ちていく回でした。 このレビューでは、物語の要点を押さえつつ、その台詞や場面から見える心理・構造を紐解いていきます。 あらすじ概要(第2話) 社会人カップルの勝男と鮎美。大学から続いた長い交際にも慣れ、勝 ...

令和の“昭和男”と料理女子─ 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第1話で見えたズレと再生

2025/10/22

令和の“昭和男”と料理女子─ 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第1話で見えたズレと再生

東京タワーを望む夜景が輝く高級フレンチ。差し出されたのは王道のダイヤモンドリング。 まるで完璧な恋のクライマックスを思わせる場面で、鮎美(夏帆)はただ一言、こう返す。 「無理」。 ここから幕を開けるのが、TBS系ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第1話だ。 一見、理想のカップル──地方の大学で“ミス・ミスターコン”を制した2人。 彼氏の勝男(竹内涼真)は大手メーカー勤務、彼女の鮎美は商社の受付。 誰もが羨むような安定とバランスを持つカップルに見える。 だが、その“完璧さ”こそが、崩壊の始まりだった。 ...

みんなの気になるランキング

「目が合ったら終わり…」目だけで落とされる!“目力・視線が武器”な俳優ランキングTOP10

2025/11/20

「目が合ったら終わり…」目だけで落とされる!“目力・視線が武器”な俳優ランキングTOP10

「その目に見つめられたら、もう抗えない——」感情を奪う“視線の破壊力”に落ちる。 近年、ドラマや映画で「目で語る俳優」が急増中。派手なセリフより、視線ひとつで“全てを語る”俳優に心を持っていかれる人が続出しています。 今回は、「目が合ったら終わり」と話題の“目力・視線が武器”な俳優たちを徹底調査!SNSでの反響、視線シーンの名場面、そして“瞳に宿る演技力”を総合評価し、TOP10を決定しました! 第10位:奥平大兼(俳優・20代前半) “無垢と狂気のあいだ”を見せる瞳の破壊力 コメント: ・「目が泳がない ...

料理上手じゃなくてもいい!“君の味”が食べたい。20〜30代男性が選ぶ「手料理してほしい女性芸能人ランキング」TOP10!

2025/11/20

料理上手じゃなくてもいい!“君の味”が食べたい。20〜30代男性が選ぶ「手料理してほしい女性芸能人ランキング」TOP10!

上手じゃなくていい。ただ、君が作ってくれたそれが食べたい。(ポプバ調べ) 「男って単純。」そう思うかもしれないけれど、実はそこに深いリアルがある。料理が得意じゃなくてもいい、レストランの味みたいじゃなくていい。ただ“君の手から生まれた一皿”が、何よりもうれしい――。今回は、20〜30代男性たちの声をもとに、「手料理してほしい女性芸能人」を徹底調査!食卓に並ぶのは料理だけじゃない。そこに宿る“ぬくもり”と“関係性”に、今の時代の価値観が詰まっていた! 第10位:あの(アーティスト・年齢非公表) 飾らないのに ...

「ベランダ越しに会いたい人♡」SnowManで“リアルに隣人だったらヤバい”メンバーランキングTOP10!

2025/11/20

「ベランダ越しに会いたい人♡」SnowManで“リアルに隣人だったらヤバい”メンバーランキングTOP10!

ベランダの向こうに、恋が始まりそうな気配。 もしSnowManが隣人だったら、あなたはどの瞬間に恋に落ちる? 「ベランダ越しに会いたい人」——そんな妄想がSNSで広がる今、“もしSnowManが隣の部屋に住んでいたら?”という禁断のテーマで調査(ポプバ調べ)を実施!日常に潜むベランダという“小さなステージ”で、彼らがどんな存在になるのか…リアルな生活感とファンタジーが交錯するランキングが完成しました。あなたの理想の隣人、見つかりましたか?是非エンタメとして楽しんで下さい🎵 第10位:岩本照 ...

この記事を書いた執筆者・監修者
この記事を書いた執筆者・監修者

ポプバ ドラマ部:佐伯・Pちゃん

脚本家の視点でドラマを深掘る、雑食系オタクライター。
幼少期からドラマと映画が大好きで、物語を追いかけるうちに自然と脚本を書き始め、学生時代からコンクールに応募していた生粋の“ストーリーマニア”。現在はドラマのレビュー・考察・解説を中心に、作品の魅力と課題を両面から掘り下げる記事を執筆しています。
テレビドラマは毎クール全タイトルをチェック。「面白い作品だけを最後まで観る」主義で、つまらなければ途中でドロップアウト。その分、「最後まで観る=本当に推したい」と思える作品だけを、熱を込めて語ります。
漫画・アニメ・映画(邦画・洋画問わず)にも精通し、“ドラマだけでは語れない”背景や演出技法を比較的視点で解説できるのが強み。ストーリーテリング、脚本構造、キャラクター心理の描写など、“つくる側の目線”も織り交ぜたレビューが好評です。
「このドラマ、どう感じましたか?」を合言葉に、読者の感想や共感にも興味津々。ぜひ一緒にドラマの世界を深堀りしていきましょう!