ニュースの概要
2025年9月、暗号資産取引所Bitgetが大きな発表を行いました。
自社が保有する4億4,000万枚のBGBトークンをすべてMorph Foundationへ移管し、そのうち半分(2億2,000万枚)を即時バーン(焼却)。残りはロックされ、毎月2%ずつ段階的に解除される仕組みです。
さらに、BGBはEthereumのレイヤー2「Morph」において、ガス(取引手数料)とガバナンス(投票権)を担うネイティブトークンに昇格しました。
ニュース直後には価格が10%以上上昇し、現在は5ドル前後で推移しています。
Morphとは?
Morphは2024年10月にメインネットを稼働したEthereumレイヤー2です。
技術的特徴:Optimistic RollupのスピードとZK証明の安全性を組み合わせた「ハイブリッド型」。
設計思想:DeFiだけでなく、決済や貯蓄など「日常利用」を意識。
ユーザー基盤:Bitgetとそのウォレット利用者、約1.2億人が潜在的にエコシステムへ流入可能。
支援体制:Pantera、Dragonflyなど大手VCも出資。
要するにMorphは「取引所ユーザーをそのままオンチェーンに引き込む」戦略を取っており、これはCoinbaseのL2「Base」と同じ発想です。
レイヤー2(L2)市場はすでに激戦区です。Ethereumの混雑や高ガス代を解決するため、複数のL2が立ち上がり資金とユーザーを奪い合っています。Morphが成功するかどうかを考える上で、主要プレイヤーとの比較は欠かせません。
競合との比較
🔹 Base(Coinbase)
強み
- 規制に強い:米国上場企業Coinbaseがバックにあり、信頼性が抜群。
- ユーザー基盤:既存のCoinbase顧客(1億人以上)を直接誘導可能。
- 文化形成力:SNS型アプリ「Friend.tech」の成功で“オンチェーン文化”を一気に作った。
弱み
- 米国規制に強く依存 → 規制変更で方向性が変わる可能性。
評価:信頼感と実需が結びつき、短期間で主要L2に成長。
🔹 Arbitrum
強み
- DeFi特化:TVL(預かり資産)が最大規模。
- 開発者に人気:DeFiプロジェクトの多くがArbitrumに展開。
弱み
- コミュニティガバナンスの難しさ:DAOの意思決定が遅れる場合あり。
評価:DeFiの中心地としての地位を確立。
🔹 Optimism
強み
- OP Stack:他のL2(Baseなど)が利用できる汎用フレームワークを提供。
- 共同体的発展:複数のL2が「Superchain」として連携するビジョンを掲げる。
弱み
- 単独での個性は弱く、「他チェーンに利用される基盤」的存在。
評価:“仕組み提供者”として強みを持ち、連携による拡大を模索。
🔹 Morph
強み
- CEX導線:Bitgetとそのウォレットの1.2億ユーザーを直接エコシステムに誘導できる。
- 技術的特徴:Optimistic RollupとZK証明のハイブリッド設計、将来的にはSequencerの分散化も計画。
- 消費者向けUX:単なるDeFiだけでなく、日常的な決済・貯蓄・利回りまで視野に入れている。
弱み
- 規制・信頼性:Coinbaseのように「規制で担保された安心感」はまだない。
- 旗艦dApp不足:BaseがFriend.techで文化を作ったのに対し、Morphにはまだ“看板”となるアプリが存在しない。
- 中央集権リスク:Foundationに移管したとはいえ、Bitget依存度が高い。
評価:CEX基盤を活かせれば一気に伸びる可能性があるが、成否は“旗艦アプリ”を作れるかどうかにかかっている。
項目 | Base | Arbitrum | Optimism | Morph |
---|---|---|---|---|
バック | Coinbase | DeFiコミュニティ | OP財団 | Bitget |
強み | 規制順守・ユーザー信頼・Friend.tech | 最大TVL・DeFi強者 | OP Stack提供・連携拡大 | 1.2億ユーザー導線・ハイブリッド技術 |
弱み | 規制依存 | ガバナンス停滞 | 個性不足 | 規制の不透明さ・旗艦dApp不足 |
成長評価 | 主要L2に急成長 | DeFiの中心地 | インフラ提供者として影響力 | これからの“文化創出”次第 |
需給と価格に影響する要因
プラス材料
- 2.2億BGBの即時バーン → 流通供給が減少し、希少性が高まる。
- Morph統合によるユーティリティ拡大 → 取引所内トークンからオンチェーン実需トークンへ格上げ。
マイナス材料
- 残り2.2億BGBが毎月市場に出る可能性 → 中期的には売り圧力。
- セキュリティ・中央集権性のリスク指摘 → 投資家心理に影響。
価格シナリオ
短期(〜1か月)
- バーンと話題性で買いが先行。
- 6〜7.5ドルを試す展開が有力。
- 特に「7ドル前後」は過去の高値ゾーンで利確売りが集中しやすい。
中期(3〜6か月)
- ニュース効果が一巡し、ロック解除分が市場に出回る。
- 3.5〜4.5ドル付近まで調整する可能性あり。
長期(1〜3年)
- Morphが限定的な成長に留まる場合:8〜10ドル程度で頭打ち。
- Base並みにエコシステムが拡大する場合:20〜30ドルも視野。
- 失敗した場合:2〜3ドルに逆戻り。
投資戦略のポイント
短期トレード派
6〜7ドル台で部分的に利確するのが現実的。
中期派
4ドル前後までの押し目を狙って再エントリー。
長期ホルダー
Morphの成長に期待するなら、一定割合を保有し続ける。
ただし資産の大部分を集中させるのはリスク。分散投資は必須。
まとめ
BGBのMorph統合は「取引所トークンからオンチェーンネイティブ資産へ」という大きな転換です。
短期的にはバーンとニュース効果で強い追い風がありますが、中期にはロック解除の売り圧が待っています。
長期的な成功は、MorphがBaseのように“旗艦アプリと文化”を生み出せるかどうかにかかっています。
投資家にとってのベストアプローチは、短期の上昇局面では部分的に利確し、残りを長期で保有する「分割戦略」です。
これなら調整局面でもリスクを抑えつつ、Morphが成長したときのリターンを狙えます。
※本記事は投資助言を目的としたものではなく、情報提供を目的としています。投資判断はご自身のリスク許容度や資金計画に基づき、必ず自己責任で行ってください。