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劇場版『チェンソーマン』はどこへ向かう?「レゼ篇」の熱狂と続編「刺客篇」制作決定が示す次なる地平

劇場版『チェンソーマン』はどこへ向かう?「レゼ篇」の熱狂と続編「刺客篇」制作決定が示す次なる地平

テレビアニメから始まった『チェンソーマン』は、いまや“映画で語られる作品”として次のフェーズへ踏み出した。

その転換点となったのが、全国公開中の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』、そして2026年ジャンプフェスタで発表された『チェンソーマン 刺客篇』制作決定である。

一本の映画として完成度を高めたレゼ篇と、その熱狂を受けて動き出した刺客篇。

この2作を軸に、劇場版『チェンソーマン』シリーズはどこへ向かおうとしているのか。本記事では作品そのものに焦点を当て、現在進行形の展開と、その先に見える地平を丁寧に整理していく。







「レゼ篇」はなぜ劇場版として成立したのか

原作は藤本タツキによる漫画『チェンソーマン』。

2022年に放送されたTVアニメは、制作をMAPPA』が担当し、実写映画的な画作りと挑戦的な演出で国内外から注目を集めた。

そのTVシリーズ最終話の直後に位置づけられるエピソードが、「レゼ篇」である。

デンジが偶然出会う少女・レゼ。

一見すると穏やかな日常の延長線にある恋愛劇だが、その実態は「普通になりたい」という願望が徹底的に裏切られていく物語だ。

この章は、原作の中でも特に感情の起伏と物語の密度が高く、一本の映画として再構築しやすい構造を持っていた。

実際、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、静と動、恋愛と暴力、希望と絶望をテンポよく配置し、約2時間でデンジというキャラクターの危うさを鮮烈に焼き付けた。

国外興行収入が96.5億円を突破し、100以上の国と地域で上映された事実は、作品が“世界基準の映画”として成立した証明と言える。

映画化によって浮き彫りになった『チェンソーマン』の本質

劇場版『チェンソーマン』はどこへ向かう?「レゼ篇」の熱狂と続編「刺客篇」制作決定が示す次なる地平

レゼ篇の成功は、単なる興行的ヒットにとどまらない。それは『チェンソーマン』という作品が、本質的に映画的な語り口を内包していることを明確にした。

藤本タツキの原作は、説明を排したコマ割りや沈黙の多さが特徴だ。感情はセリフではなく、視線や間で伝えられる。この構造は、連続話数で積み上げるTVシリーズ以上に、限られた時間で一気に感情を爆発させる映画と相性がいい。

レゼ篇は、その特性を最大限に活かし、「この物語はスクリーンで観る価値がある」という確信を観客と制作側の双方に残した。







「刺客篇」制作決定が意味するもの

劇場版『チェンソーマン』はどこへ向かう?「レゼ篇」の熱狂と続編「刺客篇」制作決定が示す次なる地平

2026年12月21日、ジャンプフェスタ2026のステージで発表されたのが、『チェンソーマン 刺客篇』の制作決定だ。

同時に公開されたティザービジュアルとPVでは、デンジの心臓を狙う刺客たちの存在が強調されていた。

原作の刺客篇は、物語のスケールが一気に拡張される転換点である。それまで“個人の欲望と生存”を軸にしていた物語が、国家や組織、思想が交錯する群像劇へと姿を変える。

この章を劇場版として選んだことは、制作陣が『チェンソーマン』を単発の映画ではなく、シリーズとして育てていく意思を持っていることを示している。

レゼ篇から刺客篇へ──ジャンルの変化と挑戦

レゼ篇が描いたのは、きわめて個人的な悲劇だった。「普通の生活」を夢見た少年が、その夢に手を伸ばした瞬間にすべてを失う。

一方、刺客篇では問いの次元が変わる。デンジはもはや一人の少年ではなく、世界から利用され、奪い合われる存在として描かれる。

ラブストーリー的な情緒は後景に退き、代わりに前面へ出てくるのは、暴力の連鎖、価値観の衝突、そして選択の重さだ。

このジャンルの変化を、映画としてどう整理するのか。それこそが、刺客篇最大の挑戦点となる。







 

継続する制作体制がもたらす安心感と期待

レゼ篇で確立された制作体制も、シリーズ化を後押しする要因だ。

監督・脚本・音楽といった主要スタッフは、映画で培った演出バランスをすでに共有している。デンジ役の戸谷菊之介をはじめとするキャスト陣も、劇場版ならではの芝居のトーンを掴んだ状態だ。

これは刺客篇にとって大きなアドバンテージであり、「前作の延長線上で、より大きな物語に挑める」土台が整っていることを意味する。

劇場版『チェンソーマン』はシリーズとしてどこまで行くのか

ここで少し視点を引いてみたい。

レゼ篇、刺客篇と続く劇場版展開は、どこまで続く可能性があるのか。

原作には、この先さらに大きな転換点が控えている。テーマはより抽象的になり、暴力の意味や人間の欲望そのものが問われていく。それらをすべてTVシリーズで描くのか、それとも映画として一本ずつ区切っていくのか。現時点で公式な答えは出ていない。

ただ一つ確かなのは、レゼ篇の成功と刺客篇の制作決定によって、『チェンソーマン』は「映画で進化する作品」という選択肢を手に入れたということだ。

スクリーンという制約の中で、どこまで過激に、どこまで静かに描けるのか。刺客篇は、その可能性を測る試金石になる。

劇場版『チェンソーマン』は、まだ道半ばにある。しかし、その進路が“単なるアニメ映画”では終わらない場所へ向かっていることだけは、すでに明らかだ。

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ポプバ編集部:Jiji(ジジ)

映画・ドラマ・アニメ・漫画・音楽といったエンタメジャンルを中心に、レビュー・考察・ランキング・まとめ記事などを幅広く執筆するライター/編集者。ジャンル横断的な知識と経験を活かし、トレンド性・読みやすさ・SEO適性を兼ね備えた構成力に定評があります。 特に、作品の魅力や制作者の意図を的確に言語化し、情報としても感情としても読者に届くコンテンツ作りに力を入れており、読後に“発見”や“納得”を残せる文章を目指しています。ポプバ運営の中核を担っており、コンテンツ企画・記事構成・SNS発信・収益導線まで一貫したメディア視点での執筆を担当。 読者が「この作品を観てみたい」「読んでよかった」と思えるような文章を、ジャンルを問わず丁寧に届けることを大切にしています。

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