音楽

【名曲選】ディタラトゥエンティ / The SALOVERS 20歳の痛みと輝きを描いた青春アンセム

2025年10月8日

The SALOVERS 2月22日発売シングル。

20歳という“刹那”を刻んだ一曲

2012年にリリースされた The SALOVERS の「ディタラトゥエンティ」は、20歳という年齢にしか宿らない 痛み・焦燥・希望 を、そのまま音にしたような楽曲だ。

タイトルの「ディタラ」は造語で、“チャラい雰囲気を持つ音”としてつけられたもの。
そこに「トゥエンティ(twenty=20)」を掛け合わせた言葉遊びが、軽薄さと真剣さがせめぎ合う20歳の心象をそのまま映している。

リリースは 2012年2月22日
当時のメンバーは全員が20歳前後であり、まさに「今の自分たち」を作品に封じ込めた。
ライブ会場とタワーレコード限定という形式も、商業性よりも“等身大の衝動”を優先した若いバンドらしい選択だった。

歌詞に宿るテーマ:無垢から大人へ、痛みの中の成長

「ディタラトゥエンティ」の歌詞を聴いてまず心を掴まれるのは、
冒頭の一節──

「男を知らない汚れなき処女たちよ」

挑発的にも聞こえるこのフレーズは、“まだ何も知らない純粋さ”へのまなざしでもある。
それは決して嘲笑ではなく、むしろ 憧憬と哀しみを含んだ眼差しだ。

「自ら血を流して大人になっては」

という一節が象徴するのは、成長が痛みを伴うものであるという現実。
大人になることは、誰かに教わることではなく、自らの傷を引き受けて変わっていく過程なのだ。

若さの不安と衝動:モラトリアムの真ん中で

曲の中盤で印象的なのが、

「死にたくないとか生きてゆけないとか 若き日によくこぼしたあの口癖」

というライン。
誰もが一度は抱く “どう生きていいかわからない”という不安。
それを、飾らず、かといって安易に慰めることもなく歌い上げている。

そして次のフレーズ──

「愛に溺れてく気分はどうだい」

ここには、恋や情熱に翻弄される20歳の危うさがある。
自己嫌悪と開き直りの狭間で揺れる感情。
その生々しさが、聴く者の胸を刺す。

絶望の向こうにある希望──救いのラスト

この曲がただの“痛みの歌”で終わらないのは、
ラストに差し込まれる次の一節の存在だ。

「いつの日か誰かの心を癒すでしょう
そしてまた新たに生きる歓びを知るのでしょう」

ここには、絶望を越えた先にある希望が見える。
傷つきながらも、誰かを癒せる日が来る。
その未来を信じるわずかな光が、曲全体の陰影をやわらげ、“青春の救い”として響く。

バンドのリアル:20歳の自分たちを刻む音

リリース当時、The SALOVERSのメンバーはまさに「20歳」そのものだった。
作詞・作曲を手がけた 古舘佑太郎 は、
自身の等身大の焦燥や迷いを隠すことなく詞に投影している。

彼の声には、不安と希望、孤独と連帯が同時に宿る。
その震えは、完璧さよりもむしろ“未完成の美しさ”を感じさせる。

のちに古舘が俳優として活動を広げ、バンドが活動休止・再始動を経験していく中でも、この曲は「あの頃のままの純度」を保ち続けている。
“今”を切り取ったからこそ、時を経ても色あせないのだ。

「ディタラトゥエンティ」が青春アンセムである理由

この曲が多くのリスナーにとって“青春アンセム”として響くのは、単に若さを歌ったからではない。
そこにあるのは、生きることの矛盾そのものだ。

20歳は、大人でも子どもでもない曖昧な時間。
社会と自分の間で迷いながら、それでも前に進もうとする瞬間。
「ディタラトゥエンティ」は、その瞬間の不安・眩しさ・痛みをそのまま刻んでいる。

そして今、30代や40代になったリスナーがこの曲を聴き返すと、あの頃の自分に「それでも生きていける」と語りかけたくなる。
それこそが、この曲が時を超えて輝き続ける理由だ。

痛みの中でしか見えない光

The SALOVERSの「ディタラトゥエンティ」は、若さゆえの痛みを“否定”ではなく“肯定”として描いた作品だ。
どんなに傷ついても、その痛みがやがて他人を癒す力に変わる。

それは20歳の彼らが信じた、そして今を生きる私たちにも必要な 希望のかたち だ。

この曲を聴くたびに、あの頃の不器用な自分がふと顔を出す。
「それでも大丈夫」とそっと背中を押してくれる。
──そんな力を持った、永遠の青春ソングである。

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この記事を書いた編集者
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ポプバ編集部:Jiji(ジジ)

映画・ドラマ・アニメ・漫画・音楽といったエンタメジャンルを中心に、レビュー・考察・ランキング・まとめ記事などを幅広く執筆するライター/編集者。ジャンル横断的な知識と経験を活かし、トレンド性・読みやすさ・SEO適性を兼ね備えた構成力に定評があります。 特に、作品の魅力や制作者の意図を的確に言語化し、情報としても感情としても読者に届くコンテンツ作りに力を入れており、読後に“発見”や“納得”を残せる文章を目指しています。ポプバ運営の中核を担っており、コンテンツ企画・記事構成・SNS発信・収益導線まで一貫したメディア視点での執筆を担当。 読者が「この作品を観てみたい」「読んでよかった」と思えるような文章を、ジャンルを問わず丁寧に届けることを大切にしています。

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