藤井風という名前を聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは“自由で伸びやかな歌声”と“ピアノを中心にした独創的な音楽性”だろう。
しかし2025年、彼は大きな挑戦を形にした。全編英語詞の3rdアルバム『Prema』を世界同時リリースし、活動の場を一気にグローバルへと広げたのだ。
この挑戦の裏側を追ったのが、10月9日に放送される NHK MUSIC SPECIAL「藤井風 ~いま、世界で~」。3年にわたる密着取材を通じて、藤井風が音楽とどう向き合い、世界とどのようにつながろうとしているのかを映し出す。
幼少期から現在まで:境界を飛び越える“根っこ”
1997年6月14日、岡山県で生まれた藤井風は、幼い頃からクラシックやジャズなど幅広い音楽に触れ、独自の感性を磨いてきた。
中学生の頃にはYouTubeでカバー演奏を公開し、その自由でありながら緻密な表現力が徐々に注目を集めるようになる。
2020年のデビュー以降、日本国内で確固たる人気を築き上げた彼が次に選んだ道は、あえて母語を離れ、“英語で歌う”という境界を越えた表現だった。
『Prema』に込められた意味と覚悟
2025年9月にリリースされた3rdアルバム『Prema』は、全編英語詞で構成される意欲作だ。
制作はロサンゼルス、東京、韓国で行われ、NHKのカメラはその過程に3年間寄り添った。
タイトルの“Prema”はサンスクリット語で「無私の愛」を意味し、藤井風が大切にしてきた“愛”というテーマを、より普遍的なメッセージとして昇華している。
「言葉の壁を越えて、音楽そのものの力で伝えたい」――彼が語ったこの想いが、アルバム全体に強く息づいている。
世界のステージで響く音楽
NHKの特番では、アルバム制作だけでなく、その先に広がるライブ活動にも密着している。
- フランスでの「Love Like This」ミュージックビデオ撮影
- ヨーロッパ・北米ツアーの舞台裏
- アメリカ・シカゴ「Lollapalooza」出演の瞬間
- 誕生日前日のタイ・バンコクでのサプライズライブ
これらはすべて、藤井風が“世界に挑む音楽家”として歩み始めたリアルな記録だ。異国の地で観客と向き合う彼の姿からは、ステージに立つ緊張感と同時に、音楽を共有する喜びが伝わってくる。
素顔としての藤井風
華やかな舞台裏で映し出されるのは、完璧なアーティスト像だけではない。
英語で表現することへの葛藤や、異なる文化圏でどう受け止められるかという不安。
それでも「音楽は国境を越える」という信念を持ち続ける姿は、むしろ彼を“人間として身近に感じさせる”瞬間でもある。
ナレーションを務める俳優・仲野太賀の語り口も、彼の等身大の姿を引き立てるだろう。
藤井風が示す“音楽の未来”
藤井風の挑戦は、日本の音楽シーンにおいても大きな意味を持つ。
英語詞で歌うこと、世界同時リリースすること、海外フェスに出演すること――どれも容易な決断ではない。
だが、彼が一貫しているのは「音楽を通じて愛を伝える」という軸。
その信念があるからこそ、言語や国境といった境界を軽やかに飛び越えていけるのだろう。
10月9日の放送では、音楽家としてだけでなく、一人の人間としての藤井風の姿も垣間見ることができるはずだ。
放送情報
番組名:NHK MUSIC SPECIAL「藤井風 ~いま、世界で~」
放送日時:
2025年10月9日(木)22:00~22:45(NHK総合)
2025年10月13日(月)24:35~25:20(再放送)