俳優、ミュージシャンと多彩な顔を持つ松下洸平が、自身初となるエッセイ集『フキサチーフ』（KADOKAWA）を12月13日に発売した。3年半にわたる連載エッセイと書き下ろし2篇を収録し、松下の日常や思い出が詰まった1冊だ。
発売を記念し、12月16日には東京・渋谷のHMV&BOOKS SHIBUYAでプレミアムトークイベントが開催された。ファンが見守る中、松下自身が語った制作秘話やエッセイへの想い――その温かい時間を現地レポートでお届けする。
開演前のハプニングも笑顔に変える「松下らしさ」
イベント当日、会場には『フキサチーフ』を手にしたファンたちが集まり、お気に入りのページをめくりながら待ち時間を過ごしていた。ところが、開始直前に思わぬトラブルが発生。ライブ配信が繋がらないというアクシデントに見舞われたのだ。
しかし、そこは松下洸平のファン。「ファンは鏡」と言うが、まさにその言葉通り、穏やかで温かな空気が流れ、待つ時間さえも笑顔で過ごす姿が印象的だった。
ようやくスタートしたイベント。松下が登場すると、会場は待ちわびたかのような大きな拍手に包まれる。「お待たせしました！大丈夫ですか？予定のある方いませんか？」と、開口一番ファンを気遣う松下らしい一言に、会場の温度がさらに上がる。
制作秘話：「書くことで、自分自身と向き合えた」
『フキサチーフ』は、雑誌『ダ・ヴィンチ』での連載（2021年4月号～2024年1月号）をベースに、新たな書き下ろしを加えた作品。家族との思い出や若かりし頃の苦い経験、そして日常の小さな発見が、松下の柔らかな視点で紡がれている。
イベントでは、表紙や紙質へのこだわりについても熱弁。
「紙の種類は本当にたくさんあって、最後は何を選んでるのかわからなくなった」と笑いながら振り返った松下だが、「持ったときにほっこりする紙にしたかった」という想いが形になった。
さらに表紙のイラストも本人が手掛けたというエピソードには驚かされた。「自分で描くって言ったものの、途中で『あれ？絵ってどうやって描くんだっけ？』ってなりました」とお茶目に話す松下。しかし、いざ描き始めると感覚を取り戻し、理想の1枚を完成させたという。
「帯で隠れちゃって見えない部分もあるんですけどね」と、完成品を見ながら苦笑いする一幕も。その自然体な姿に、会場は何度も笑顔に包まれた。
エッセイの裏側：「自分って何者なんだろう？」
執筆にかかる時間は1回3～4時間。「書くだけ書いて提出したら、大量の直しが返ってきた」と苦笑する松下だが、それもまた「自分と向き合う時間だった」と振り返る。
「僕も昔は、自分が何者かわからなかったことがあったんです。でも、書いていく中で、今の自分はこれ以上でもこれ以下でもない。これが僕なんだって思えるようになりました」と穏やかな笑顔を浮かべる。
また、お気に入りのエピソードとして挙げたのは、「麤（そ）」という漢字について書かれた章。鹿が3つ並ぶ珍しい漢字を見つけた際のエピソードを披露し、「修学旅行の奈良公園以来、こんなに鹿に会ったのは初めてだよね」とユーモラスに語り、会場の笑いを誘った。
「誰かの背中を押す日が来るなんて」――3年半の集大成
終演が近づくと、松下はエッセイ集『フキサチーフ』に込めた想いを語った。
「僕が日記のように残してきたものが、誰かの背中を押す日が来るなんて思ってもみなかった。本当に書いてよかったなって思います」としみじみと語る松下。
さらに、「この本が皆さんにとって、お守りのような存在になれば嬉しいです。何かに悩んだり悲しいことがあったとき、もう1日頑張る力になってくれたら」とファンへ温かなメッセージを送った。
最後には「またね！」と明るく挨拶し、ゆっくりと客席に向かって一礼する姿が印象的だった。
まとめ：松下洸平が紡ぐ「日常の大切さ」
松下洸平のエッセイ集『フキサチーフ』は、彼の優しい言葉と日々の発見が詰まった一冊だ。3年半の連載を経て生まれたこの作品は、単なるエッセイにとどまらず、松下自身の「自分と向き合う記録」でもある。そして、その言葉は多くの人の心に寄り添い、そっと背中を押してくれるだろう。
ファンにとっても、松下洸平にとっても――『フキサチーフ』は特別な1冊になることだろう。
書誌情報
- 書名：フキサチーフ
- 著者：松下洸平
- 定価：1,760円（本体1,600円＋税）
- 発売日：2024年12月13日
- 判型：四六判・232ページ
- ISBN：978-4-04-115412-0
- 発行：株式会社KADOKAWA
