名曲選 音楽

【名曲選】グッドバイ / サカナクション 別れの奥底に宿る、再生の息吹

2019年6月19日発売 7th Album

『グッドバイ/サカナクション』が“別れの歌”で終わらない理由|歌詞と音楽で描く再生の物語

はじめに:別れの奥底に宿る、再生の息吹

多くの人が「グッドバイ(Good-Bye)」という言葉を耳にすると、切なさや失望を思い浮かべるだろう。しかし、サカナクションが2014年1月にリリースした楽曲 「グッドバイ/Eureka」(通称「グッドバイ」)は、単なる“別れ”を歌ったバラードではない。そこには、「終わらせて、また始める」ための葛藤と覚悟が刻まれている。
この記事では、歌詞・音楽構成・制作背景を紐解きながら、「グッドバイ」が“再生の物語”として響き続ける理由を探る。

楽曲情報と制作背景:変化の狭間で生まれた1曲

【名曲選】グッドバイ / サカナクション 別れの奥底に宿る、再生の息吹

リリース・所属アルバムなど
「グッドバイ」 は 2014年1月15日に 「グッドバイ/Eureka」 の両A面シングルとして発表され、後にアルバム『834.194』にも収録された。 
シングルはオリコンで初登場2位を記録。

作詞・作曲
作詞・作曲はいずれも山口一郎。サウンドの編曲もサカナクション名義。

制作の背景とバンドの状況
当時、サカナクションは商業的成功とバンドとしての芸術性との狭間で揺れていた。紅白歌合戦出場や売上の達成といった“成功”がかえって内面への嘆きや疑問を深めたという。
山口自身は、 “曲が書けない自分” を歌詞に反映させたと語っており、「グッドバイ」はその苦悩の可視化ともいえる曲である。
また、インタビューで “Aメロの一節” を伝えるためにこの曲を作ったという発言もあり、楽曲制作において言葉の重みを重視していたことが窺える。

こうした背景を踏まえると、「グッドバイ」は単なる別れの象徴ではなく、内面の揺らぎと未来への問いを併せ持つ作品だと言える。

歌詞に宿る “別れ” と “再生” の二重構造

次に、歌詞を紐解きながら、「別れ」がどのように語られ、そして「再生」の兆しが現れるかを探っていこう。

“探してた答えはない/ここには多分ないな” — 見つからない場所としての“ここ”

冒頭の歌い出し:

「探してた答えはない 此処には多分ないな」

この瞬間、「今ここには自分の欲しい答えは存在しない」と断じるような確信と、あえて「多分」と不確定な語を残す揺らぎ。すでに “ここを離れる” 選択の芽が植えられている。

“だけど僕は敢えて歌うんだ/わかるだろ?” — 疑問を抱えた叫び

「歌う」という行為自体に意味を見出そうとする姿勢。すでにすべてを諦めたかのような前半と対照的に、「敢えて」歌うという選択が、未練でも反抗でもなく、むしろ “未来に向ける意思” を感じさせる。

“グッドバイ 世界から知ることもできない 不確かな未来へ舵を切る” — 舵をとる瞬間

曲中で繰り返されるこのフレーズは、「別れ」を告げながらも、未知なる未来へ進もうとする意志を表す。
「世界から知ることもできない」= “この世界から完全には理解されない”
「不確かな未来へ舵を切る」= “確信はないけれど進む”

この矛盾が、この曲を「終わり」で終わらせず、次への歩みとして機能させている。

“僕らが知ることのできないありふれた別れもいくつあるだろう” — 普遍性の視線

最後に差し込まれるこの問い。個別の “君” の存在を超えて、世の中には無数の別れがあるという認識。自分だけではないという共感性が、呟きのようなラストを生き生きとさせる。

こうして「別れ」はただの終わりではなく、「問いかけ」へと変質し、聴き手を別の景色へ誘う触媒となる。

音の構造が補う“再生の回路”

歌詞だけでなく、音楽構成そのものにも「別れを越える力」が込められている。

静かな始まりからの立ち上がり

曲は比較的抑制されたイントロから始まり、徐々にギターやバンド・サウンドが重なっていく。静寂と抑制を基調に、“何かが動き出す”瞬間を演出している。

ミニマルなビートと浮遊感あるメロディ

この曲は、過度な装飾を削ぎ落としたミニマルな構成が特徴だ。無駄を削ぎ落とすことで、ひとつひとつの音と言葉が際立つ。
その中で、浮遊感を帯びたメロディが、時間や空間を越えるような広がりを感じさせる。

ボーカル処理・距離感の演出

山口のボーカルは、時に囁くように、時に切迫した語りを含む。その録音処理やミキシング上の距離感が、「近くも遠くもない」ような曖昧な情緒を生む。
これは、歌われる別れを “自分事” にも “他者事” にも映す柔軟さを与える。

サウンド変化と抑揚の制御

サビや中盤の盛り上がりではギターのフィードバックや音圧の変化が加わるが、爆発的なクライマックスには至らない。
この抑制が、どこかで “決定” を吐き出さず、未来へ宙吊りにしたまま、そこから再び静かな空気に戻すような構造を生ませている。

こうした音響設計が、歌詞が示す「揺らぎ」「問いかけ」「舵取り」を音楽的に体現していると言える。

サカナクション作品の中での「グッドバイ」の位置づけ

【名曲選】グッドバイ / サカナクション 別れの奥底に宿る、再生の息吹

「グッドバイ」は、サカナクションというバンドにとってある種の転換点でもある。

ポップ性と実験性のはざま
初期から実験性を重視してきた彼らにとって、「グッドバイ」は比較的ストレートなバンド・アンサンブル主体の楽曲。だがその中にも音響処理や余白を残す手法は健在で、彼ららしい二重性を帯びている。

他の代表曲との対比
たとえば「新宝島」「アイデンティティ」など、エネルギッシュで外向的な曲と比べると、「グッドバイ」は内省的で静かな強さを持つ。
そのギャップが、「グッドバイ」をバンドの “包み込むような顔” のひとつにしている。

ファンとの時間を超えた共存
リリースから年月を経ても、ライブで演奏される際には聴衆それぞれの背景や心情を映す鏡となる曲だ。
“別れ”という普遍的テーマを扱いながら、個人の時間を越えて響き続ける――それがこの楽曲の強みだろう。

さよならの先にある、ひそやかな希望

「グッドバイ」は、明確な終わりを示すのではない。
そこにあるのは、“終えることを通じて、新たな問いと意思を生むこと” だ。

歌詞に刻まれた矛盾、音楽の設計が生む曖昧さ、制作背景に潜む葛藤──それらすべてが、「別れの歌」で終わらせない表現の力を支えている。
私たちがその曲を聴き返すたびに、過去の自分や未来の選択と向き合う鏡となる。

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ポプバ編集部:Jiji(ジジ)

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