序章「愛は時を越えて咲く」
もしも10年もの間、あなたが同じ人を想い続けることができたなら——。
映画『ハナミズキ』(2010年/監督:土井裕泰/主演:新垣結衣、生田斗真)は、一青窈の名曲をモチーフに描かれた純愛映画。北海道から東京、そしてカナダへと舞台を広げ、遠距離恋愛に揺れる二人の運命を描き出す。
この映画を観たら、あなたは「待つことの苦しさ」と「愛することの強さ」を知ることになる。
起―「運命の出会いは夏の海辺で」
物語は北海道の港町から始まる。
高校生の紗枝(新垣結衣)は、東京の大学進学を夢見る少女。父を早くに亡くし、母(薬師丸ひろ子)に支えられて育ってきた。
そんな彼女の前に現れたのが、地元の漁師の息子・康平(生田斗真)。荒々しいけれど、まっすぐで誠実な青年だ。
夏祭りの夜、花火を見上げながら二人の距離は一気に縮まっていく。
「この人と一緒なら未来を歩んでいけるかもしれない」——そう思わせるほどに。
だが、紗枝の進学の夢と、地元で漁師を継ぐ康平の現実。その差は、二人の前に立ちはだかる最初の壁となる。
承―「遠距離が試す二人の絆」
紗枝は東京の大学へ、康平は北海道に残る。
携帯電話と手紙で繋がる二人。しかし、やがて距離は心の隔たりとなっていく。
紗枝は都会で同級生の北見(向井理)と出会い、彼の穏やかな優しさに救われることもあった。一方、康平は地元の漁師として厳しい現実に直面し、心に余裕を失っていく。
「待つこと」への不安、「信じること」への揺らぎが募る中、二人は次第にすれ違い、傷つけ合ってしまう。
果たして、この愛は本当に永遠に続くのだろうか?
転(危機)―「すれ違いと別れ、そして新しい道」
最大の危機は、互いの未来に対する選択の違いから訪れる。
紗枝は夢を追って海外留学のチャンスを掴むが、康平は彼女を引き止められず、二人は別れを選ぶ。
やがて紗枝は北見と婚約し、康平もまた別の女性と結婚の話が持ち上がる。
しかし、心の奥底では互いを忘れられないまま時は流れていく。
「もし、あの時、違う決断をしていたら……」
観る者にそう問いかけるほどに、彼らの人生は絡み合い、ほどけ、また交わっていく。
結(解決)―「再び巡り合う奇跡の瞬間」
10年という歳月を経て、ついに二人は再会する。
舞台はカナダ。紗枝が追いかけていた夢の地で、偶然にも康平と再び出会うのだ。
互いに大人になり、苦しみも経験し、それでもなお心の奥底に残っていた「変わらない想い」を確かめ合う。
花が咲くように、止まっていた時間が再び動き出す瞬間。
二人の再会は、観客に「愛は時を越えて生き続ける」というメッセージを強く刻みつける。
終章(余韻)―「あなたの心にも咲くハナミズキ」
『ハナミズキ』が描いたのは、単なる恋愛映画ではない。
それは、夢と現実、選択と後悔、そして「想い続けることの強さ」という普遍的なテーマだ。
この映画を観たら、あなたの「愛のかたち」が変わるかもしれない。
北海道の雄大な景色、四季折々の美しい映像、そして一青窈の楽曲が紡ぎ出す余韻は、観る者の心に長く残る。
10年越しの愛が咲き誇るその瞬間、スクリーンを越えて、あなたの心にも「ハナミズキ」が静かに咲くだろう。
評価(観客の声)―「58点、それでも心に残る一輪の花」2010年8月当時
映画を観終わった率直な印象を点数で表すなら——58点。
10年という歳月を2時間強にまとめるにはやはり難しく、物語の厚みに物足りなさを感じたのは否めない。もしじっくりと描くなら、数部作に分けて描いた方が相応しかっただろう。
それでも、新垣結衣の可憐さ、生田斗真の存在感、そして薬師丸ひろ子の圧巻の演技は、確かに作品を支えていた。特に母親役の薬師丸ひろ子は、心に染み入る温かさと力強さを表現し、物語に重みを与えていたと言える。
そして何よりも、一青窈の名曲「ハナミズキ」が流れるエンディング。映画全体の出来不出来を超えて、その瞬間だけで観客の心に特別な余韻を残す。
点数は58点だとしても、この作品を観た記憶と感情は、確かに「一輪の花」として心に咲き続けるのだ。
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