星野源、静かな新章へ。「いきどまり」誕生の背景
星野源の最新曲『いきどまり』は、映画『平場の月』（2025年11月14日公開）の主題歌として書き下ろされた作品です。
この楽曲は、映画プロデューサーと監督が星野の作業場を訪ね、脚本を手渡したことから生まれました。依頼の初期段階から「作品の登場人物に寄り添う音楽を」という要望があったといいます。
星野は制作について次のように語っています。
「自分自身の心情を歌うというより、ひとつの物語を“一人称”で描いた曲です」
つまり、『いきどまり』は星野の内面を直接表す歌ではなく、映画の登場人物の視点で語られる物語性の強い一曲です。
映画『平場の月』とは
原作は朝倉かすみによる同名小説。
主演は堺雅人さんと井川遥さん。中学時代の同級生だった男女が、長い年月を経て再会する――という静かな再生の物語です。
青砥健将（堺雅人）：妻と離婚し、地元に戻って印刷会社に再就職した男性。
須藤葉子（井川遥）：夫と死別し、パートで生計を立てている女性。
お互いの孤独を抱えながら、少しずつ心の距離を取り戻していく二人。
『いきどまり』は、その物語の余白にそっと寄り添うように流れます。
タイトル「いきどまり」に込められた意味
“行き止まり”という言葉には、閉塞と希望の両方が潜んでいます。
立ち止まったからこそ見える風景、終わりと思った先で始まる何か――星野が描くのは、そんな「静かな再出発」です。
音楽的にはピアノとボーカルを中心にしたシンプルな構成で、柔らかく透き通ったメロディが印象的。
星野は「ピアノをぽろぽろ鳴らしながら作曲した」と語っており、静謐で内省的なサウンドに仕上がっています。
『SUN』や『恋』などの華やかなポップスとは対照的に、『いきどまり』はひとりの人間の心の声を描くような静けさをまとっています。
この曲は星野源の音楽キャリアの中でも、明確に新しい方向性を示す作品と言えるでしょう。
映画と主題歌が響き合う
映画の予告編では、再会した二人が過去と現在のはざまで揺れる映像に、『いきどまり』が重なります。
楽曲のフレーズ「行き止まりの二人」は、まさに彼らの関係を象徴しているようです。
堺雅人さんは本作について、
「月光にも似た淡く優しい光で照らしてくれる曲」とコメント
しています。
この言葉が示すように、『いきどまり』は登場人物の心をそっと照らす“もう一つの語り部”。
映画のテーマ「再会」「赦し」「生き直し」と同じ温度で響く主題歌となっています。
リリース情報
『いきどまり』は、2025年11月14日（金）に配信リリース。
映画『平場の月』の公開日と同日で、音楽と映像が同じ日に“出会う”構成です。
配信レーベルはスピードスターレコーズ（SPEEDSTAR RECORDS）。
現時点でCDリリース情報は発表されていませんが、デジタル配信を中心に展開される見込みです。
星野源は2025年夏にアジアツアー「Gen Hoshino presents MAD HOPE Asia Tour」を開催（8月30日〜9月中旬）。
ツアー終盤にはライブビューイングも実施されており、その活動の延長線上で発表された『いきどまり』は、ライブモードから創作モードへの橋渡しのような作品と位置づけられています。
星野源にとっての“出口”と“始まり”
これまで星野源の音楽は、「日常の肯定」や「小さな幸せの発見」をテーマにしてきました。
『いきどまり』では、より深い層――“人生の止まり方”と“そこから再び歩き出す力”を見つめています。
出口を見つけることよりも、行き止まりの中で何を見つけるか。
それは、現代を生きる多くの人が抱えるテーマでもあります。
映画を観る前に聴くと“物語の入口”に、観たあとに聴くと“余韻の出口”になる。
『いきどまり』は、そんな二重の意味を持つ主題歌です。
星野源が描く“物語と音楽の交差点”
ここ数年、星野源の創作には「映像と音の融合」というテーマが見え始めています。
『ドラえもん』『罪の声』に続き、『いきどまり』でも“登場人物の心情を音で語る”というアプローチを深化。
この曲では、行き止まりを「終わり」ではなく「静かな始まり」として描きます。
その柔らかな視点は、誰かの心の灯りとなるような優しさに満ちています。
聴き終えたあと、余白のように残る静けさ。
それこそが、星野源がこの作品に込めた“再生”の音なのかもしれません。
2025/11/10
【Good Music Now】『いきどまり』で見る星野源の“出口”と“始まり”―映画『平場の月』主題歌としての意味」
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