
東京タワーを望む夜景が輝く高級フレンチ。差し出されたのは王道のダイヤモンドリング。
まるで完璧な恋のクライマックスを思わせる場面で、鮎美(夏帆)はただ一言、こう返す。
「無理」。
ここから幕を開けるのが、TBS系ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第1話だ。
一見、理想のカップル──地方の大学で“ミス・ミスターコン”を制した2人。
彼氏の勝男(竹内涼真)は大手メーカー勤務、彼女の鮎美は商社の受付。
誰もが羨むような安定とバランスを持つカップルに見える。
だが、その“完璧さ”こそが、崩壊の始まりだった。
古風すぎる男・勝男の“ズレた常識”
勝男は、いわゆる「昭和の理想の男」を信奉してやまないタイプ。
「弁当は冷凍食品じゃなく手作りが当然」「カレーのルーは使うな」「昼は米を食え」──
そんな信条を、悪気なく他人にも押しつける。
後輩が「うちでは料理は僕の担当で」と話しても、「彼女が作ってくれないんだな」と即断。
話を最後まで聞かずに、自分の“正しさ”で世界を塗りつぶしてしまう。
彼がこの価値観を疑わずに来られたのは、モテ続けてきたからだ。
誰かに修正される機会がないまま、家庭的な母親像と支配的な父親像をそのまま引き継いでしまった。
それが、現代社会では“痛さ”として浮き彫りになる。
変わりゆく鮎美──「尽くす幸せ」からの脱却

勝男に尽くすことが自分の愛情表現だと信じていた鮎美。
だが、同棲を続けるうちに「愛してもらうより、愛されるべき存在でいたい」という本能が目を覚ます。
彼女が髪をピンクに染めた時、それは単なるイメチェンではなく、生き方の再起動だった。
黒髪で“清楚”を演じ、口角を無理に上げていた頃の自分を、もうやめたい。
それが鮎美の「無理」に込められた真意だ。
“痛さ”の奥にある、勝男のかわいげ

そんな勝男にも、どうしても憎めないところがある。
後輩に「自分で作ってみたら元カノの気持ちがわかる」と言われ、
本当に筑前煮を作ってみるのだ。
しかも、出来上がった弁当を会社に持参し、後輩に食べさせて感想を求める。
ここまで来ると、不器用を通り越して愛らしい。
「めんつゆは邪道」と豪語した直後、
「じゃあ自分で作ってみたら?」と返された途端、
一からだしを取り始める素直さもまた、彼の魅力だ。
竹内涼真は、この“痛さ”と“かわいげ”の絶妙なバランスを見事に表現している。
嫌味にならず、むしろ人間らしい温かさがにじむ。
令和が問い直す「家事と愛情」のかたち
このドラマが鋭いのは、単なる恋愛ドラマの枠にとどまらない点だ。
勝男のような「昭和的愛情観」が、いまも私たちの中にどこか残っていることを暴き出す。
「愛しているなら、相手のために尽くして当然」
「料理は女のたしなみ」
──そんな言葉が、どこか懐かしくも息苦しい響きを持って蘇る。
だが本作は、そうした価値観を否定するだけではなく、
“どうすれば変われるのか”という問いを提示している。
「俺、変わりたい」
勝男のこの一言に、令和の恋愛が向き合うべきテーマが凝縮されている。
再生への一歩──ズレから始まる理解
鮎美と勝男は、互いを補う関係ではなく、互いの偏りを強めてきた関係だった。
それでも、完全に終わりではない。
勝男が台所に立ち、初めて“誰かのために作る”ことを学ぶ。
そこに、人が変わるきっかけの尊さがある。
ズレは、壊すこともあるが、再生の種にもなる。
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、その微妙な境界線を丁寧に描く。
ドラマが描く“ジェンダーアップデート”の現在地
本作の根底に流れるのは、「家事・恋愛・性別役割」の再定義だ。
SNSでは「わかる」「いるよねこういう人」「でも嫌いになれない」と、共感と苦笑が入り混じった声が相次いでいる。
脚本がリアルなのは、勝男のような人を単なる“時代遅れの悪役”として描かないこと。
彼の“古さ”の裏には、家庭環境や社会通念という見えない背景がある。
そして、鮎美の変化の裏には「自分の人生を自分で作りたい」という、現代女性の静かな決意がある。
第1話は、その二人の“別れ”を通して、
「愛とは、支配ではなく共に作るもの」というメッセージを投げかけている。
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