アメリカで日本のコミック(Manga)の人気は年々高まり続けていますが、そのトレンドは「少年マンガ一強」ではなく、多様な価値観とジャンルへと広がっています。
特に近年は、アニメ化による知名度の加速や、LGBTQ+をはじめとする恋愛の多様性を描いた作品への支持が急伸。読者層の広がりとともに、求められる物語の形も変わりつつあります。
本記事では、ニューヨークの紀伊國屋書店現地スタッフの声ももとに、2025年現在アメリカで特に人気のある日本コミック3選を詳しく解説!
その背景にある社会的変化や読者ニーズも掘り下げます。
🔥アメリカで今最も売れている日本コミック
ダンダダン(Dandadan)
作者:龍幸伸
ジャンル:オカルト・青春・ラブコメ
特徴:アニメ化を契機に認知度が一気に拡大!
超常現象と恋愛要素を絶妙に掛け合わせた新感覚コミック。
「UFO」「霊能力」などオカルト要素を持ちながら、キャラの掛け合いやテンポの良さが読者を惹きつける一作です。
アニメのPV公開後、一気に注目度が上昇し、英語圏でも“次に来るマンガ”として話題沸騰。
英訳コミックの充実も追い風となり、アニメファン層を原作へ誘導する強力な流れが生まれました。
呪術廻戦(Jujutsu Kaisen)
作者:芥見下々
ジャンル:アクション・ダークファンタジー
特徴:アニメのクオリティが“原作人気”をさらに押し上げる好例
言わずと知れたジャンプ作品の中核で、アメリカでも「次世代の王道バトルマンガ」として確固たる地位を確立。
特にパンデミック以降、「アニメから原作に流れる読者」が急増し、英語版の出版スピードを超える勢いで需要が高まりました。
紀伊國屋NYでは、一時的に日本語版で先の巻を買い求める読者が続出するほどの加熱ぶりだったとのこと。
今もその熱は冷めることなく、アクションジャンルの屋台骨を支えています。
気になってる人が男じゃなかった(英題:My Genderless Crush)
作者:新井陽次郎
ジャンル:LGBTQ+・青春・ラブストーリー
特徴:アニメ化前にもかかわらず爆発的ヒット!
物語は、クールな“お兄さん”に惹かれる女子高生・あやが、実はその相手が地味な同級生女子・みつきであることに気づくという展開。
ジェンダーを超えた恋心を繊細に描き、固定観念を揺さぶるラブストーリーとして若年層を中心に支持されています。
アメリカでは、このような“ジェンダー・アイデンティティをテーマにした作品”に対する共感と受容が急速に高まっており、SNSでのバズを起点に大ヒット。
一部ファンの間では、作中の色彩表現から“グリーン百合”と称されるなど、カルチャーとしての読み方の多様性も目立ちます。
💬なぜ今「恋愛の多様性」が評価されているのか?
近年のアメリカ読者がコミックに求めているのは、単なるエンタメ性だけではありません。
特にZ世代を中心に、アイデンティティの肯定や社会的テーマに向き合う作品への支持が顕著になっています。
紀伊國屋NYでは、『気になってる人が男じゃなかった』や、同性間の恋愛を描く『ラブ・バレット』などのLGBTQ+作品の動きが非常に活発で、
「連載中断を惜しむファンがSNS上で英語の購入ガイドを自作する」という現象まで起きるほど、草の根的なコミュニティの熱量が強いジャンルとなっています。
こうした動きは、単なるブームではなく、文化的な共感と発信によって支えられている潮流と言えるでしょう。
📱アニメ×SNS時代が作る「売れる作品」の新条件
アメリカ市場でのコミックヒットの方程式は、今やこう言い換えられます:
「アニメ化×SNSバズ=原作爆売れ」
アニメのクオリティが作品の印象を左右し、TikTokやInstagramを通じた短尺動画やファンアートが「推し文化」を醸成。
そこにAmazonやKinokuniyaオンラインストアなどでの即時購買導線が加わり、SNS発→購買行動までが1日で完結する時代に。
つまり、アニメ化はあくまで火種であり、SNSでの“自発的拡散”がヒットの起爆剤となっているのです。
✍️アメリカで人気の日本コミックは「多様性×共感」で広がる
かつて「日本のマンガは少年向け・アクション主体」という見方が強かったアメリカ市場ですが、
今やその中心は、読者自身の価値観と向き合える作品や、共感・アイデンティティに寄り添うストーリーへとシフトしています。
アクション系の金字塔作品はもちろん健在ですが、それ以上に“共感”や“気づき”をもたらす物語が、読者の心を深く掴む時代が来ています。
🧠なぜアメリカで“百合・BL・LGBTQ+マンガ”が急伸したのか?
ここからは、記事本編の補足として背景を深堀りする独自分析セクションです。
🌍1. 「多様性の可視化」が進む社会とマンガの親和性
アメリカでは近年、教育現場やメディアを通じて、LGBTQ+やジェンダーの多様性を尊重する教育が主流化しつつあります。
その流れの中で、「押しつけでなく、感情を通じて多様性を学べる作品」として、マンガの需要が増加。
特にティーン層にとって、日本のコミックが「居場所」を感じさせる自己表現の媒介になっているケースも多く見られます。
💡2. 少年マンガにない“感情のリアル”が読まれている
アクション主体のマンガでは見過ごされがちな繊細な描写や内面的な変化。
こうした要素に重きを置いた作品は、SNSで語り合いたくなるテーマや共鳴できる台詞が多く、
“読後感”を共有しやすいため、自然と口コミ拡散力が高まります。
📚3. 書店・オンラインでの発信設計の進化
紀伊國屋やアマゾンなどの主要書店では、LGBTQ+作品を1ジャンルとして独立展示するなど、購買導線の整備が進化。
また、英語版が充実してきたこともあり、「日本語が読めなくても、作品世界に簡単に入れる」インフラが整いました。
✅結論:読者の“生きづらさ”に応える物語こそ、海外で刺さる
「マイノリティ視点で描かれた共感性の高い作品」が海外でヒットする背景には、
“読者自身が何らかの社会的圧力や違和感を感じている”というリアルな問題が存在します。
だからこそ、登場人物の葛藤や選択が、まるで自分のことのように刺さる。
今後も、アニメ化×共感性×SNS拡散力を持った“等身大の物語”こそが、世界の心を動かす鍵になるでしょう。