①新たな朝ドラヒロイン誕生─2410人の中から光った一人
2026年度前期のNHK連続テレビ小説『風、薫る』にて、オーディションで選ばれたもう一人のヒロインが発表された。その名は、上坂樹里。
約2400人以上が応募した中から、大抜擢を果たした新星が注目を集めている。
本作は、すでに発表されていた見上愛とのダブル主演体制。ともに朝ドラ初出演というフレッシュな組み合わせだが、その背景には綿密なキャスティング意図と、上坂の演技に秘められた“何か”があった。
明治の風をまとい、人々の心を照らす物語『風、薫る』
物語の舞台は、明治時代。
日本における看護制度がようやく形を取りはじめた激動期に、2人の若き看護婦がバディとして成長していく姿を描く。
そのモデルとなったのは、実在した“トレインドナース”――大関和と鈴木雅。
歴史的資料が少ないことから、本作ではあえて史実に囚われすぎず、架空の町やフィクション要素を交えて、人間味豊かなキャラクターを生み出している。
視聴者が朝のひとときを心穏やかに過ごせるよう、制作陣は「生きる力と希望を届けるドラマ」を目指しているという。
上坂樹里が演じる“もう一人のヒロイン”─大家直美とは?
上坂が演じるのは、大家直美(おおいえ・なおみ)。
生まれてすぐに母親に捨てられ、牧師に育てられながらも教会を転々とした孤独な人生を送ってきた女性だ。
信じられるのは自分の力と運のみ。
「プライドなんて役に立たない」と語る彼女は、目的のためには多少の嘘やズルもいとわないリアリスト。
どこかヒロインらしからぬ、生々しい人間臭さが宿るキャラクターだ。
それでも、人の痛みには敏感で、困っている人を放っておけない優しさもある。
そんな彼女がもう一人のヒロイン・一ノ瀬りんと出会い、“最強のバディ”として変わっていく成長ストーリーが展開される。
なぜ彼女だったのか?脚本家と制作陣が見た“存在感”
脚本を担当する吉澤智子は、こう語っている。
「清くも正しくもないリアルな女性像──そんな大家直美を演じるには、真っ直ぐすぎる人でも、器用すぎる人でもない。オーディションで彼女を見た瞬間、“直美がここにいた”と確信しました」
また、制作統括の松園武大もこう評価している。
「ナチュラルなのに目を離せない演技。彼女が画面に映るだけで、“この人物は何かを背負っている”と感じさせる。そんな力を持った役者でした」
演技力だけではない。上坂の持つ「凛とした佇まい」と「明るい逞しさ」の同居が、脚本やキャラクター像と見事に一致していたのだ。
上坂樹里×見上愛、“最強バディ”が描く新しい朝ドラ像
上坂とともに主人公を務める見上愛が演じるのは、一ノ瀬りん。
誠実でまっすぐ、時に不器用なまでに真面目な性格で、直美とは正反対のキャラクターだ。
会見では、上坂が「見上さんは太陽みたいな方」と話せば、見上も「透明感の奥に強い芯を感じた」と上坂を絶賛。
互いを信頼し合う2人の姿は、劇中のバディ関係を思わせるような関係性として早くも話題だ。
呼び方も「じゅったん」「りんちゃん」と距離感を縮めながら、長期撮影を乗り越える“相棒力”を育てている。
“3度目の挑戦”で掴んだヒロインの夢─上坂樹里の軌跡
実は、上坂が朝ドラオーディションに挑むのはこれが3回目。
夢を語る場では常に「朝ドラのヒロイン」と公言してきた。
転機となったのは、2023年のNHKドラマ『生理のおじさんとその娘』。オーディションで抜擢された演技が高評価を得て、2025年のTBSドラマ『御上先生』でも存在感を放った。
ヒロインの決定は、事務所の先輩・高石あかり(2025年後期朝ドラヒロイン)とマネージャーからのサプライズで伝えられたという。
その瞬間を経て会見の場に立った上坂は、「夢が叶った瞬間」を涙と笑顔で語った。
視聴者へ─朝の時間に“優しい風”を届けるために
看護という職業の黎明期を生きる女性たちの物語『風、薫る』。
そこには、今を生きる私たちにも通じる「弱さと強さの両立」が描かれている。
上坂樹里と見上愛が紡ぐ、寄り添い合いながら進むバディの物語。
それは、ただの友情ではなく、“ともに風になる”という希望の物語だ。
新しい風が吹く朝。テレビをつければ、そこにはきっと、あなたの背中をそっと押してくれる2人がいる。
📌 朝ドラの“もう一人のヒロイン”たち──進化するダブル主演
近年、NHK朝ドラでは「ダブルヒロイン」「複数主軸」構成が増えている。
かつては双子設定の『だんだん』(2008)や姉妹の物語『あさが来た』のような並列関係が多かったが、『風、薫る』のように対比と化学反応に重きを置いたバディ形式は新しい流れだ。
上坂演じる直美の「したたかさ」と、見上演じるりんの「真面目さ」が衝突し、影響し合い、変わっていく。
この“関係性のドラマ”こそが、本作の最大の見どころとなるだろう。
朝ドラファンはもちろん、これまで敬遠していた若年層にとっても“刺さる”作品になる可能性が高い。
時代劇、看護もの、友情モノ、成長譚──あらゆる要素が絡み合い、「風のようにさわやかで、どこか切ない」物語が誕生しようとしている。