笑いもシリアスも自在に操る“異能のアイドル”、ここに降臨。
かつては「ナルシスト」「いじられキャラ」といじられていた彼が、いまや「実力派俳優」と呼ばれている…誰の話かって? そう、菊池風磨である。
主演映画『#真相をお話しします』では、あのMrs. GREEN APPLE・大森元貴と並んでW主演。あの“風磨が泣いたり怒ったり笑ったり脱いだり”していた人が、今は静かな哀しみを抱えた男を演じて、監督を唸らせているのだ。
これはもう、「ギャップ萌え」じゃ済まされない進化である。
「笑われること」に全力な男が、いつの間にか“信頼される存在”に
思えば彼の快進撃は、笑いから始まった。
あの伝説の「水で服が溶ける着物ドッキリ」─もはや説明不要の『ドッキリGP』で、濡れるたびに服が消えていく菊池風磨。素でブチ切れて「許せない!!」と叫ぶその姿に、視聴者は爆笑…いや、むしろ「この人、本気で面白いな」と心を掴まれた。
さらに、P&GのCM「洗濯大名」では、現代の洗剤を手に時代劇口調で「あっぱれ!」と絶叫。シュールなのに違和感ゼロ、むしろ「風磨にしかできない」と言いたくなる説得力。
それだけではない。「CM撮影中にまたドッキリ」なんて荒業を仕掛けられ、ブチギレながらも“愛されいじられキャラ”の地位を確立したのだ。
笑われても、全力でやりきる。
そんな彼の姿勢は、気づけば“芸人枠”を超えて、“本気で信頼できるエンタメプレイヤー”という称号を手繰り寄せていた。
実は早くから“俳優業”でも牙を研いでいた件
もちろん、彼がいきなり演技を始めたわけじゃない。
2016年のドラマ『時をかける少女』では、ミステリアスな転校生を演じ、アイドルらしからぬシリアスな空気を漂わせた。さらに翌年には、草彅剛主演の『嘘の戦争』でやんちゃな弟分を好演。
で、極めつきが『吾輩の部屋である』。ひとり芝居ですよ、ひとり芝居。これはもう、笑われキャラからは想像できない「内省的な演技力」が求められるやつ。
地味?かもしれない。でも、ここで培った“目の演技”や“間の使い方”が、今の彼を支えているのだ。
『#真相をお話しします』で魅せた“静かなる狂気”
そんな彼が今、俳優としての「第二章」を迎えている。
最新主演映画『#真相をお話しします』で演じるのは、かつて商社マンとして活躍していたが、裏切りにより人生を失い、孤独に生きる男・桐山。
一見、華のない男。だけどこの役、めちゃくちゃ難しい。
「派手なアクションもなければ、ド派手なセリフ回しもない。
でも、内に秘めた痛みと怒りを、どう“沈黙の中で語るか”が鍵」
つまり…俳優の地力が試される役なのである。
そして豊島圭介監督は言った。「風磨、あんな顔するんだ」と。
そう、風磨は“顔”で語り、“沈黙”で感情をぶつけたのだ。
ここにきて、彼の「笑われ力」が「人間味」に昇華された瞬間だった。
「アイドルのままでいい」と言われた彼が、それを超えてきた理由
風磨の強みは、“全部やってみる”メンタリティだ。
ドッキリに全力で乗っかる。
CMでふざけ倒す。
ラブコメでモテ男になりきる。
そしてシリアスな映画では沈黙の中で泣く。
これはもはや、ジャンル横断型俳優である。
普通、ここまでブレ幅があると「何がしたいの?」と疑われる。
でも、菊池風磨は違う。**「ああ、風磨だからアリだよね」**と思わせる空気がある。
そしてそれこそが、現代のエンタメにおいて最強の武器なのだ。
“完璧さ”より“揺らぎ”の時代に、彼はぴったりフィットしている
SNSが発達し、裏も表も丸見えな時代。
完璧なアイドル像よりも、「どこか不完全で、でもリアルな人間」が求められている。
風磨は、その「ちょうどいいリアルさ」の象徴だ。
ナルシスト?OK。
いじられキャラ?むしろおいしい。
でも、俳優としての顔も本気でカッコいい。
それが、“笑われても愛され、見られてこそ輝く”俳優・菊池風磨の現在地だ。
“演技派アイドル”が増えているのはなぜ?
ここ数年、目立ってきたのが「演技で勝負するアイドル」の台頭。
目黒蓮(Snow Man)、永瀬廉(King & Prince)、中村嶺亜(7 MEN 侍)…彼らに共通するのは、「アイドル活動の枠を超えて、俳優としてもガチ」なところ。
なぜこの潮流が生まれたのか?
一因は、アイドル業界自体の“長寿化”だ。以前のように「20代後半で卒業」ではなく、30代・40代まで活動するケースが増えてきた。
そうなると、演技というフィールドが**“第二の主戦場”**になる。
もうひとつの理由は、視聴者の「ギャップ耐性」が進化していること。
昔なら、「アイドルが泣くシーン」に違和感を持たれた。今はむしろ、そういう人間味が“推せる”時代なのだ。
そんな中で、風磨は早くから「いじられ」と「演技」を両立し、笑いも涙も自在に扱えるポジションを確立してきた。
これは単なる器用さではない。「変化を楽しむ才能」と言っていい。
今後、演技派アイドルの中でも、“異端”として菊池風磨がどう躍動するか。楽しみで仕方がない。
映画情報
『#真相をお話しします』
全国公開中
出演:大森元貴、菊池風磨、中条あやみ ほか
原作:結城真一郎(新潮文庫刊)
監督:豊島圭介
公式X:@shinso_movie