ポップバースミックス

ポップカルチャーの交差点、あなたが主役のエンタメ宝庫の旅へ!

興行収入 邦画

坂東龍汰&西野七瀬『君の忘れ方』が問いかける「大切な人との別れ」の意味

坂東龍汰&西野七瀬『君の忘れ方』が問いかける「大切な人との別れ」の意味大切な人との別れは、いつか必ず訪れるもの。映画『君の忘れ方』は、その避けられない現実とどう向き合うべきかを、静かに問いかける作品です。

坂東龍汰と西野七瀬の共演が光るこの映画は、喪失、癒し、そして再生の物語を通じて、観る者の心に深く語りかけます。

悲しみの入り口としての「喪失」

本作は、昴(坂東龍汰)が、婚約者・美紀(西野七瀬)を交通事故で失うという衝撃的な場面から始まります。結婚式のために準備していた思い出の写真が、突如として彼女の遺影になる――その象徴的なシーンは、昴の心の中に押し寄せる絶望を如実に映し出しています。
彼の世界から「美紀が消えた」のではなく、むしろ「彼の世界に美紀しかいない」状態となった彼の孤独感。その描写は、観客の胸を締めつけることでしょう。

グリーフケアとの出会い:悲しみとどう向き合うか

昴は、恋人を失った痛みに苛まれながらも、ラジオの構成作家として仕事を続ける中で、カウンセラーの澤田(風間杜夫)や、グリーフケアの会を主宰する牛丸(津田寛治)と出会います。特に、昴と同じように愛する人を亡くし、彼にしか見えない「妻」と会話する池内(岡田義徳)との交流は、昴が徐々に心を開き、再び前を向く契機となります。

池内の「見えない妻」とのユーモラスなやりとりが時に心を軽くしながらも、そこに秘められた切なさは、喪失を抱える人々の複雑な感情を映し出しています。この多層的なキャラクター描写が、本作の深みを生んでいます。

「記憶の中の人」としての美紀

坂東龍汰&西野七瀬『君の忘れ方』が問いかける「大切な人との別れ」の意味

昴の心の中に現れる美紀(西野七瀬)は、彼が作るカレーの匂いに誘われるように現れ、微笑みます。言葉を交わすことのない彼女は、「生者の想像」が生み出した儚い存在。彼女の姿は昴を癒すと同時に、彼が彼女を「忘れてしまう」ことへの恐怖も呼び起こします。この繊細な描写は、喪失感に寄り添いながらも、昴の心の成長を象徴するものとなっています。

人それぞれの「別れ」のかたち

本作が描くのは、主人公・昴だけの物語ではありません。母親・洋子(南果歩)の過去の喪失もまた重要なテーマのひとつです。20年前、洋子は夫を通り魔事件で失いました。表面上は立ち直っているように見える彼女もまた、時折見せる脆さが観客の心を打ちます。

また、グリーフケアの会を通じて描かれる人々の姿は、喪失からの立ち直りが決して「一つの形」ではないことを教えてくれます。それぞれが異なるペースで悲しみと向き合い、時間をかけて「新しい関係性」を築いていくのです。

「関係性」の再構築と希望の光

映画の中で牛丸が語る「会えない相手との関係性の変化」という言葉は、非常に示唆に富んでいます。作中、昴が新たに撮った写真――それは、池内と彼の「見えない妻」、昴と彼の心の中の美紀が一緒に写った1枚――は、彼が悲しみの中にいながらも、少しずつ未来へ進んでいることを象徴しています。

この「関係性の変化」を描くことで、本作は観客に希望の光を示してくれます。大切な人がいなくなった後も、その人との絆は消えることなく、形を変えながら続いていくのです。

終わりに:大切な人との「別れ」とは

坂東龍汰と西野七瀬が紡ぎ出す『君の忘れ方』は、単なる悲劇の物語ではありません。むしろ、それは私たちが「誰かを永遠に愛し続ける」ための希望を描いた作品です。

映画のラスト、昴が美紀に語りかける「見えなくても近くにいてね。忘れても思い出すから」という言葉には、彼の決意と希望が込められています。いつか訪れるかもしれない「別れ」を考えること。それは決して悲しいだけの作業ではなく、愛する人との絆をより深めるためのプロセスでもあるのです。

『君の忘れ方』は、心に静かな感動を残す珠玉の一作です。今この瞬間、大切な人と過ごす時間を改めて見つめ直すきっかけになるでしょう。ぜひ劇場でその余韻を味わってください。

-興行収入, 邦画
-, , ,