WEST.のメンバーとして活動する桐山照史は、俳優としても着実にキャリアを重ねてきた存在だ。
バラエティ番組などで見せる明るい表情と、ドラマや舞台で見せる抑制された芝居。その落差に驚かされる人も少なくないだろう。
2026年1月から放送されるドラマ『身代金は誘拐です』で桐山が演じる有馬英二という役柄は、まさに彼の現在地を象徴するような「重さ」を帯びた役である。
『身代金は誘拐です』で描かれる“奪われる側”の視点
『身代金は誘拐です』は、娘を誘拐された夫婦が、娘を救うために「他人の子どもを誘拐する」という極限の選択を迫られる完全オリジナルの考察ミステリーだ。
桐山照史が演じる有馬英二は、その“他人の子ども”の父親であり、何の前触れもなく理不尽な被害を受ける側に立たされる人物である。
有馬は物語を能動的に動かす中心人物ではない。しかし、彼の存在があることで、このドラマが問いかける倫理や選択の重みがより鮮明になる。
怒りや悲しみを大きく表に出すよりも、理解できない現実を受け止めきれずに揺れる感情をどう表現するか。その難しさを伴う役どころは、桐山の演技の質感と相性が良い。
善悪を単純化しない役を任されてきた理由
桐山照史が演じてきた人物を振り返ると、善か悪かを明確に線引きできない立場に置かれる役が多い印象がある。
正義の側として物語を引っ張るのではなく、状況に翻弄されながらも選択を迫られる人物。その曖昧さを成立させるには、感情を過剰に説明しない演技が必要になる。
『身代金は誘拐です』の有馬英二も、視聴者に答えを提示する存在ではない。
彼が抱える苦しみや戸惑いは、明確な言葉では語られず、表情や間に委ねられる。その余白があるからこそ、視聴者は「もし自分だったら」と考えざるを得なくなる。
WEST.としての活動が支える表現の柔軟さ
桐山照史は、WEST.の活動を通して、場の空気や相手との関係性を瞬時に読み取る力を磨いてきた。
バラエティ番組では明るいトーンで会話を回す場面も多く、ライブではパフォーマンス全体の流れを意識した立ち振る舞いが求められる。
こうした経験は、俳優業にも自然と反映されている。
共演者との距離感、セリフと沈黙のバランス、感情を出すタイミング。その一つひとつに、グループ活動で培われた感覚が生きている。
“耐える役”に説得力が生まれる現在地
桐山照史が演じる人物には、感情を爆発させるよりも、内側に抱え込む場面が多い。
その一方で、主演ドラマ『ゲキカラドウ』では、コミカルな設定の中に、仕事や立場に追われる社会人の孤独や葛藤を滲ませる演技を見せていた。
笑いを軸にしながらも、人物の根底にある“しんどさ”を取りこぼさない。その積み重ねが、シリアスな作品での「耐える役」にも説得力を与えている。
『身代金は誘拐です』でも、有馬英二は多くを語らない立場に置かれることが予想される。
だからこそ、わずかな表情の変化や声の抑揚が、物語の緊張感を支える重要な要素になる。
アイドルと俳優、その両立のリアル
アイドルとしての活動と、シリアスな俳優業を並行することは簡単ではない。
桐山照史は、そのどちらかを強調するのではなく、それぞれを独立した表現の場として積み重ねてきた。
グループでは親しみやすさを、作品では抑制された感情を引き受ける。
その切り替えがあるからこそ、視聴者は役柄としての桐山照史を受け止めやすくなる。
桐山照史が“重い物語”に起用される理由
考察ミステリーや社会性の強いドラマでは、感情を過剰に代弁しない人物が重要な役割を担う。
物語の中で誰かが答えを出してしまうと、視聴者は考える余地を失ってしまうからだ。
桐山照史の演技は、その「考える余白」を残す点に特徴がある。
有馬英二という人物も、被害者でありながら、怒りや悲しみを一方向に押し出す存在ではない。だからこそ、視聴者は彼の立場を通して、物語が提示する問いと向き合うことになる。
また、桐山が演じる人物には、あえて説明されない背景や感情が残されることが多い。
それは演技の不足ではなく、観る側の想像に委ねるための選択だ。その余白が、作品を一過性の消費で終わらせず、視聴後も思考を促す。
WEST.としての活動で培った対人感覚と、俳優としての経験。その両方が重なった現在の桐山照史は、重いテーマを扱う作品において、物語を静かに支える存在として位置づけられている。
『身代金は誘拐です』は、彼のそうした立ち位置を改めて印象づける作品になる可能性が高い。
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