SixTONESの松村北斗が、再び俳優としての新境地を切り開こうとしている。
2026年春にNetflixで世界190か国以上へ配信されるドラマシリーズ『九条の大罪』で、彼が演じるのは東大卒の若き弁護士・烏丸真司。冷静で理知的な青年が、悪徳弁護士と呼ばれる九条間人と出会い、揺らぎながらも自らの正義と向き合っていく物語だ。
松村北斗がこれまで積み重ねてきた「静けさの中に宿る熱」を象徴するような役どころであり、まさに彼の俳優人生の転換点とも言える作品である。
松村北斗という俳優の現在地
松村北斗は、SixTONESとしてデビューを果たす以前から、演技の場に身を置いてきた。十代の頃にドラマで俳優デビューを飾り、着実に出演作を重ねながら“表現者”としての自我を育ててきたタイプだ。アイドルとしての華やかさの裏で、演技への情熱を静かに燃やしてきた彼の歩みは、どこかストイックで一貫している。
その姿勢は、スクリーンやテレビでの佇まいからも伝わる。声を張り上げたり感情を爆発させたりするタイプではなく、沈黙や視線、呼吸のリズムで感情を描く。彼の演技には「語らない強さ」がある。感情を抑えながらも、その奥底に火を灯すような芝居。それが松村北斗の“静かなる激情”だ。
彼がこれまで演じてきた役たちは、表の華やかさとは裏腹に、どこか影や内面の孤独を抱えている。理想と現実の狭間で揺れる青年、感情を言葉にできない恋人、あるいは自分の弱さを知ることで成長していく人物。どの役にも通じているのは、繊細さと真摯さ、そして「人を理解しようとする眼差し」である。
Netflix『九条の大罪』──“正義”と“罪”のグレーゾーンへ
『九条の大罪』は、『闇金ウシジマくん』の真鍋昌平による人気漫画を原作とし、現代社会の闇と倫理の狭間を鋭くえぐる法廷ヒューマンドラマだ。監督は『花束みたいな恋をした』などで知られる土井裕泰。主演の柳楽優弥を筆頭に、池田エライザ、町田啓太、音尾琢真、ムロツヨシといった実力派が集結する。
松村が演じる烏丸真司は、東大を卒業したエリート弁護士。理想と正義を胸に抱きながらも、ある日突然、九条間人の法律事務所に居候として働くことになる。九条は“どんな依頼人でも引き受ける”悪徳弁護士と世間に呼ばれながらも、法律の本質を深く理解する男だ。烏丸はその姿に衝撃を受け、時に反発しながらも、次第に「正義とは何か」という問いに直面していく。
この関係性こそ、松村北斗という俳優に最も似合う構図だ。理想を信じる青年が、価値観を揺さぶられ、内面を見つめ直す過程。大きなアクションではなく、静かな心の動きでドラマを紡ぐ。松村の表情の変化やわずかな沈黙が、登場人物の揺らぎを雄弁に語るはずだ。
烏丸真司という“鏡”の存在
烏丸という人物は、九条の“正義なき正義”を映す鏡のような存在だ。彼の中には理屈としての正義がある。しかし九条のもとで現実を突きつけられるうちに、理屈では割り切れない人間の生々しさに触れていく。
理想と現実の狭間で葛藤する姿は、まさに現代を生きる人々そのものだ。正しさとは何か。人を守るとはどういうことか。誰のための正義なのか――松村北斗は、その問いを烏丸という青年の心の中で表現していく。
彼自身が語る「九条先生を見つめ続ける役のように感じています」という言葉には、このキャラクターの核心がある。見つめ続けること。それは受け身ではなく、観察し、理解し、変化を受け入れることでもある。松村がこの“見つめる演技”をどう体現するのか。そこにこそ、彼の俳優としての真価が試されている。
柳楽優弥との化学反応が導く、バディのリアル
主演の柳楽優弥が演じる九条間人は、「思想信条がないのが弁護士」という信念を持つ人物だ。彼はどんな加害者にも手を差し伸べ、依頼人を弁護することを“使命”とする。一方で、その行動は世間の倫理からは逸脱して見える。九条の中にある矛盾と信念、その両面を柳楽が圧倒的な存在感で演じる。
その隣で松村が演じる烏丸は、柳楽の放つ熱に対して、別の形の熱をぶつけていく。九条のやり方を理解できずに葛藤しながらも、やがて彼の“人間を信じる力”に惹かれていく。この“対立と共鳴”の関係こそ、物語の軸であり、松村と柳楽の演技が交錯する最大の見どころでもある。
土井裕泰監督は「原作の世界観を再現しながらも、生身の俳優同士がぶつかり合うことで生まれる情感を大切にした」と語っている。柳楽優弥という生きるように演じる俳優と、松村北斗という“沈黙で語る俳優”。この二人の共演がもたらす緊張感は、画面を通して確実に伝わるはずだ。
松村北斗が見せる“静かなる革命”
『九条の大罪』の中で松村が挑むのは、明確な答えを持たない演技だ。烏丸は、善悪の境界線を行き来する中で、何を信じるべきかを見失っていく。そこには、単純な正義の物語ではない、現代的なリアリズムが息づいている。
この“曖昧さを演じる力”は、松村北斗がこれまで培ってきた繊細な表現力にこそ宿る。感情を表に出さずとも、視線や呼吸、ほんの一瞬の間で観客に深い感情を伝える。その抑制された芝居は、激しい感情表現よりもずっと難しいが、彼はそれを自然体でやってのける俳優だ。
Netflixという舞台もまた、彼の演技を新たな次元へ押し上げる。世界同時配信というスケールの中で、言葉を超えて伝わる表現力が求められる。松村の“静かな激情”は、国や言語を越えて、観る者の心に響く可能性を秘めている。
正義と罪の狭間で見つける“人間”という真実
この作品が描くのは、法律やモラルでは裁けない人間の複雑さだ。誰もが正義を語りたがる時代に、その正義の形を疑う勇気を持つこと。その矛盾や迷いの中で、人はどう生きるのか。
松村が演じる烏丸は、答えを出すためではなく、その問いを背負っていく。彼の演技には「人を理解しようとする誠実さ」が滲む。どんな状況でも相手の心に手を伸ばすような眼差しは、烏丸というキャラクターに深みを与えている。
柳楽優弥演じる九条との関係の中で、烏丸は何度も“正義”を問われる。そして視聴者もまた、自分自身の正義を問われることになるだろう。松村北斗の存在は、観る者にとっての鏡でもある。彼が見つめるその先に、私たちは何を見るのか――その答えを探す旅こそが『九条の大罪』なのだ。
俳優・松村北斗が向かう先にあるもの
ここ数年の松村北斗は、俳優としての幅を確実に広げてきた。恋愛ドラマで見せた柔らかさ、映画での繊細な内省、舞台での身体的な表現力。そのすべてが、この『九条の大罪』という重厚なドラマで結実しているように見える。彼の演技には、表現としての“覚悟”が宿る。華やかな人気の裏で、俳優としての信念を積み上げてきた証だ。
アイドルとして人に夢を見せ、俳優として現実の苦さを伝える。その二面性を自然に往来できる松村北斗は、今や“時代の空気を演じる俳優”として存在感を放っている。
そしてこの作品では、正義と罪の狭間で揺れる烏丸真司を通じて、人間の弱さや希望を描き出す。派手な演出ではなく、静かな熱と誠実なまなざしで観る者を圧倒するだろう。
時代と向き合う俳優として
いまの時代、何が正義で、何が悪なのかを言い切ることは難しい。情報が溢れ、声の大きさが真実を覆い隠すような社会で、人は何を信じて生きるのか。『九条の大罪』が問いかけるテーマは、まさに現代そのものだ。
その問いに俳優として向き合う松村北斗の姿は、まるで時代を映す鏡のようである。彼の演技は、正義を語るのではなく、正義を「感じさせる」。理屈よりも感情、台詞よりも沈黙で真実を伝える。その在り方は、SNSや情報に翻弄されがちな時代にこそ必要な“表現の静けさ”なのかもしれない。
松村北斗は、派手さではなく深さで人を惹きつける俳優だ。『九条の大罪』で描かれる“静かな闘い”を通して、彼がどんな真実を見せてくれるのか。世界配信の舞台で、その演技がどんな共鳴を生むのか。彼の眼差しの先にある答えを、私たちはこれから目撃することになる。
松村北斗、静かなる激情の演技力─Netflix『九条の大罪』で描く“正義と罪”の境界線
SixTONESの松村北斗が、再び俳優としての新境地を切り開こうとしている。 2026年春にNetflixで世界190か国以上へ配信されるドラマシリーズ『九条の大罪』で、彼が演じるのは東大卒の若き弁護士・烏丸真司。冷静で理知的な青年が、悪徳弁護士と呼ばれる九条間人と出会い、揺らぎながらも自らの正義と向き合っていく物語だ。 松村北斗がこれまで積み重ねてきた「静けさの中に宿る熱」を象徴するような役どころであり、まさに彼の俳優人生の転換点とも言える作品である。 松村北斗という俳優の現在地 松村北斗は、SixT
SixTONES松村北斗、『秒速5センチメートル』実写で初登場2位発進の評価をどう見る?
10月第2週の映画ランキングで、SixTONESの松村北斗が主演を務める実写映画『秒速5センチメートル』が初登場2位を記録した。 監督は写真家・映像作家としても知られる奥山由之、主題歌は米津玄師という強力な布陣。 公開3日間で動員27万8000人、興収4億200万円という数字は、今年上半期にヒットした松村主演作『ファーストキス 1ST KISS』の同期間比で158%という好スタートを切った。 しかし一方で、同週1位の『チェンソーマン レゼ篇』が4週連続首位をキープするなか、「大健闘」と見るか「やや控えめ」
【レビュー】映画『秒速5センチメートル』の感想・評価・口コミ・評判
【2025年10月10日公開,121分】 INTRODUCTION(イントロダクション) 新海誠の名作『秒速5センチメートル』が、ついに実写映画化。監督を務めるのは、映像作家・奥山由之。繊細な光と空気を捉える映像美で“新海ワールドの原点”を新たに紡ぐ。主演は、同監督から絶大な信頼を寄せられる松村北斗。共演に高畑充希、森七菜、宮﨑あおいら実力派が集結。主題歌は米津玄師の書き下ろし「1991」。山崎まさよしの名曲が再び響く中、四季を巡るロケ撮影で描かれる、儚くも永遠に残る愛の記憶。
松村北斗が今、表現者として見せる“静かな衝動”─止まらない進化と新たな挑戦
「SixTONESの松村北斗」から「俳優・松村北斗」へ SixTONESの一員としての圧倒的な存在感。そして、俳優としての評価も年々高まっている松村北斗。 その演技には、派手な演出や過剰な表現ではなく、“静かで強いエネルギー”が宿る。 2025年秋。彼が挑むのは、新海誠の名作『秒速5センチメートル』の実写映画化という、想像以上に繊細で難解な役どころだ。 だがこの作品こそが、松村北斗という表現者の“今”を体現する舞台となっている。 「静けさ」の中に潜む激しさ──松村北斗の表現力 松村北斗が演じるのは、時間
20代女性が選ぶ恋人にしたい有名人ランキング【2025年最新版】
“付き合いたい”のリアルな温度感。2025年、恋の主役はこの10人(ポプバ調べ) 「恋人にしたい」と思うその瞬間、人はどんな魅力に惹かれているのか――。 SNS投稿、検索トレンド、日常会話の中に散りばめられた“推し”たちの存在感をもとに、PopVerseMix編集部が20代女性の“本音”にフォーカスしたランキングを作成! 今年ならではの価値観が透けて見えるラインナップに、あなたもきっと「わかる〜!」と頷くはず。 次の推し活の参考にも、ぜひご一読を! 第10位:赤楚衛二(俳優・30歳) 距離感のうまさが“恋
【レビュー】映画『ファーストキス 1ST KISS』の感想・評価・口コミ・評判
【2025年2月7日公開,124分】 INTRODUCTION(イントロダクション) 坂元裕二×塚原あゆ子が贈る、新たな愛の物語――『ファーストキス 1ST』カンヌ脚本賞受賞後、坂元が書き上げた本作は、結婚間近、夫を怖がった女性がタイムトラベルを経て優しい日の彼に再び恋をする、切なくもユーモラスなラブストーリー。 松たか子と松村北斗(SixTONES)が初共演し、夫婦の絆と時間の不思議をパープルに描き出す。 坂元の斬新な会話劇が生む「おかしみ」と「かなしみ」、そして胸を打つ感動