
アイドルとしての華やかさと、俳優としての繊細さ。その両方を併せ持ちながらキャリアを重ねてきたのが、なにわ男子のメンバーである道枝駿佑だ。
2026年秋、主演映画うるわしの宵の月が全国公開される。本作は、やまもり三香による同名漫画(講談社『デザート』連載)の実写化作品。原作は「ebookjapan マンガ大賞 2023」第1位などを受賞し、世界累計発行部数750万部を突破している人気作で、2026年1月からはTBS系全国28局ネットでテレビアニメも放送されている。
注目すべきは作品の話題性だけではない。道枝が“主演俳優”としてどの段階にいるのか、その現在地こそが重要だ。
市村琥珀という役と、“王子”の内面

『うるわしの宵の月』で道枝が演じるのは、市村琥珀。裕福な家庭で育ち、圧倒的なルックスから高校一の「王子」と呼ばれる存在だ。しかし物語が描くのは、完璧な王子像ではない。恋愛に戸惑い、自分の感情に振り回される、不器用な一面を持つ少年である。
道枝は公式コメントで、琥珀を「恋愛手練れに見えて、とてもピュアで不器用な男の子」と表現している。見た目の華やかさと、内面の未熟さ。そのギャップが本作の核となる。
原作のビジュアルに寄せるため、道枝はプラチナブロンドに挑戦した。単なる外見の再現ではなく、キャラクターの空気感をどう体現するかという姿勢がうかがえる。
2026年、主演が続く意味
道枝は2026年3月公開の映画君が最後に遺した歌で単独初主演を務め、本作が映画単独主演2作目となる。主演が続く一年は、俳優としての評価が確実に積み上がっている証でもある。
主演とは、作品の中心に立つポジションだ。物語の感情線を背負い、観客の視線を受け止める存在でなければならない。グループ活動と並行しながらその役割を担うことは容易ではないが、映像作品での経験を重ねる中で、道枝の表現はより繊細さを増している。
ライブで鍛えられた視線の使い方や間の取り方は、スクリーン上でも活きる。アイドルと俳優という二つの軸が、互いを補強している状態にある。
ヒロインとの対峙が生む化学反応

ヒロイン・滝口宵を演じるのは安斉星来。宵もまた中性的な美しさから「王子」と呼ばれる存在だ。
“王子×王子”という構図は、単なるビジュアルの美しさを描く物語ではない。自分らしさと向き合いながら、初恋という未知の感情に踏み出す二人の成長が軸となる。
安斉は、道枝演じる琥珀について「仕草や目線が琥珀そのもの」とコメントしている。互いに原作ファンである二人が、原作の世界観を尊重しながら役を作り上げている点も、本作の信頼性を高めている。
実力派スタッフが支える映画化
監督を務めるのは竹村謙太郎。脚本は『かぐや様は告らせたい』シリーズや『翔んで埼玉』などを手がけた徳永友一が担当する。
原作の繊細な心理描写をどう実写へと昇華させるか。その鍵を握るのは脚本と演出だ。俳優の表情や間を活かす構造が整ってこそ、物語は深みを持つ。
“王子像”の再定義

道枝駿佑は、これまでも爽やかさや透明感といったイメージで語られてきた。しかし『うるわしの宵の月』で描かれるのは、揺らぎを抱えた王子だ。
恋が分からない。
自分の感情に戸惑う。
それでも向き合おうとする。
完璧ではないからこそ共感が生まれる。その未完成さをどう演じるかが、本作における最大の見どころだ。
アイドルと俳優、その交差点で生まれる強度
道枝駿佑の現在地を考えるとき、アイドル活動と俳優活動を切り離して語ることはできない。なにわ男子としての活動は、グループの一員としての協調性やパフォーマンス力が求められる世界だ。一方で映画主演は、物語の中心として作品全体を背負う立場である。
この二つの環境は対極に見えるが、実は相互に作用している。ライブステージでの経験は、観客の視線を意識した表情管理や瞬時の感情表現に直結する。映像作品で求められる繊細な芝居は、逆にステージ上での存在感を深める。
2026年は、単独主演作が続く節目の年となる。ここで問われるのは、人気の持続ではなく、役の幅だ。王子役を経て、どのような人物像へと挑戦していくのか。それが俳優としての次章を決定づける。
また、原作ファンであることを公言し、作品への敬意を示している点も印象的だ。実写化作品では、原作への理解度が問われる。ファン心理を理解したうえで役に向き合う姿勢は、作品全体の信頼感にもつながる。
“王子”というイメージは、与えられる称号ではなく、更新していくものだ。
道枝駿佑は今、その更新の過程にいる。
主演俳優としての飛躍は、派手な変化ではなく、積み重ねの先にある。
『うるわしの宵の月』は、その確かな一歩となるはずだ。
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