3月2日に放送された『御上先生』(TBS系)第7話は、ただの学園ドラマの枠を超え、ヤングケアラーや生理の貧困という社会問題に鋭く切り込んだ衝撃回となった。
特に、吉柳咲良演じる椎葉の慟哭(どうこく)が視聴者の心を揺さぶり、胸を締めつける展開に。「私はここで血を流してるのに、誰も気付いてくれない」――その叫びは、現実に生きる多くの若者の声でもある。
万引きの理由が突きつけた「生理の貧困」という現実
物語の始まりは、御上(松坂桃李)が通報を受けて駆けつけたドラッグストアのシーン。
そこにいたのは、生理用品を万引きした椎葉(吉柳咲良)。
万引きの理由は「生理用品を買えなかったから」。
両親を事故で亡くし、認知症の祖父を支えるヤングケアラーである彼女は、経済的にも精神的にも追い詰められていた。
生理用品を盗んだ理由を問い詰められた椎葉は、涙ながらにこう語る。
「生理って女の子にとって良いものなんだ。大切なものなんだって思ってた。でも、考えれば考えるほど、私には重すぎる……」
彼女の家では、和菓子屋の伝統として赤飯を炊いて祝う風習があった。生理は命の営みであり、本来は誇るべきもののはずだった。
それなのに、彼女にとって生理は「負担」になり、貧困がそれをさらに苦しめた。
このシーンは、現実の「生理の貧困問題」に重なる。
生理用品を買う余裕がない、PMS(月経前症候群)の症状を抱えても十分なケアができない。
それでも、生理は止まらない。
そして、誰もそれを見ようとしない――。
このドラマは、単なるフィクションではなく、現代社会が抱える問題を強烈に浮かび上がらせた。
椎葉の「退学処分」に込められた社会の冷酷さ
さらに椎葉は、出会い系のアルバイトをしていたことも問題視され、退学を言い渡される。
学校は「校則違反だから」と切り捨てるが、そこに彼女がなぜそうせざるを得なかったのかを考慮する気配はない。
椎葉の苦しみは、生徒たちにも衝撃を与えた。
「私はここで血を流してるのに、誰も気付いてくれない」
この言葉は、視聴者にとっても重く突き刺さるものだった。
社会は弱い立場の人間に冷たい。
理由がどうであれ、規則を破ったら「自己責任」とされ、支援の手を差し伸べられることは少ない。
このドラマが描くのは、単なる「生理の貧困」ではない。
それを取り巻く社会の無関心と、苦しむ者を切り捨てる冷酷さなのだ。
生徒たちの署名活動と「Personal is political」の実践
しかし、そんな彼女を救おうと立ち上がったのが3年2組のクラスメイトたち。
彼らは、椎葉の退学処分を見直し、学業継続のための支援制度を設けるよう求める署名活動を開始する。
ここで登場したのが、「Personal is political(個人的なことは政治的なこと)」という考え方。
椎葉の問題は、彼女だけの問題ではない。
同じように困っている人がいるなら、社会全体で変えていかなければならない――。
これは、御上にとっても兄・宏太(新原泰佑)と重なる出来事だった。
「目の前で苦しんでいる人のために声を上げること」こそが、彼の信念そのものだからだ。
大人たちの対応ににじむ「政治」の二面性
しかし、学校側の対応はあまりにも現実的だった。
古代(北村一輝)は当初、退学は当然の処分として取り合おうとしなかった。
だが、生徒たちの動きを見て態度を一変し、彼らを**「創立の精神にかなう」と称賛。**
それはまるで、生徒たちの善行を自分の手柄のように語る政治家のような振る舞いだった。
また、富永(蒔田彩珠)の「私たちの国の話」という言葉が印象的だった。
貧困問題は決して他人事ではなく、誰しもがいつ巻き込まれてもおかしくない。
それなのに、古代や塚田(及川光博)のような人間にとっては、困っている人の問題ですら「権力ゲームの駒」になってしまう。
「何のために働いているのか」官僚のむなしさ
そんな中、疲れ果てて倒れた官僚・津吹(櫻井海音)の一言が重く響いた。
「何のために仕事してるんですかね」
それは、彼自身の無力感を表していると同時に、官僚制度の虚しさをも象徴している。
槙野(岡田将生)はこの言葉を聞き、過去の記憶がフラッシュバックする。
彼が墓参りをしていたのは、かつて倒れた同僚の墓だったのだろうか。
彼の中にあるのは「怒り」なのか、それとも「無念」なのか――。
最終章へ向けての鍵となる「怪文書」
そして、今回新たに動き出したのがファックスで届いた怪文書。
そこには、塚田と中岡(林泰文)、溝端(迫田孝也)の写真が写っていた。
裏口入学の斡旋、政治的な駆け引き……。
御上や槙野は、ついに決定的な証拠を掴むのだろうか。
だが、それを知ったところで、彼らは「使い捨ての駒」にされる運命なのかもしれない。
吉柳咲良の圧巻の演技!若き俳優陣が光る『御上先生』
今回のエピソードで圧倒的な存在感を放ったのが、吉柳咲良の演技。
彼女の涙、叫び、震える声が視聴者の心を打ち、SNSでも「魂のこもった演技だった」「心が締めつけられた」と絶賛の声が相次いだ。
さらに、成長著しい若手俳優たちの演技が、作品にリアリティを与えている。
このドラマが描く社会問題とともに、彼らの今後の活躍にも注目したい。