2026年公開予定の映画『汝、星のごとく』――この企画の出発点は、主演の横浜流星さんのひとつの“願い”だった。
「この作品を、どうしても映像化したい」
そんな彼の情熱が、ついに形となり、名匠・藤井道人監督と、信頼の女優・広瀬すずさんとの夢のトライアングルが実現した。
横浜流星と広瀬すず。
過去2度の共演で見せた圧倒的な“感情の化学反応”が、今ふたたびスクリーンに帰ってくる。
原作愛から生まれた主演企画
『汝、星のごとく』は、作家・凪良ゆう氏による恋愛小説。第20回本屋大賞をはじめ、数々の文学賞に輝き、読者からの支持も熱い一作です。
物語は、瀬戸内の小さな島を舞台に、出会った高校生2人が、それぞれの家族の事情や人生の選択に翻弄されながら、15年という長い時間をかけて“愛とは何か”を問い続ける壮大な恋愛ドラマ。
実はこの企画、横浜さんが原作を読み込んだ上で「ぜひ映画化を」と提案したことから始まりました。
そしてその熱意に共鳴したのが、映画『新聞記者』や『余命10年』などで知られる藤井道人監督。原作の持つ“生きづらさの中でもがく青春の輪郭”を映像にするには、このコンビしかないと、まさに満場一致の布陣となったのです。
共演は広瀬すず―3度目にして“W主演”の頂点へ
この作品で横浜さんが演じるのは、東京から転校してきた男子高校生・青埜櫂。
一方、広瀬さんが演じるのは、島で育った女子高生・井上暁海。
対照的な環境に生きる2人が、運命のように出会い、惹かれ合い、そして選択を迫られる――。
このW主演コンビがただの“話題性”ではなく、信頼と実績の結晶であることは、過去2作を見れば明らかです。
初共演『流浪の月』で見せた“目と目”の芝居
2022年公開の映画『流浪の月』では、李相日監督のもと、横浜さんは“DVの気配を抱える恋人”という難役に挑みました。
広瀬さん演じる更紗との関係は、愛と暴力が交差する繊細な距離感。セリフではなく、目線や呼吸で感情を伝える芝居に、多くの観客が息を呑みました。
特に注目すべきは、横浜さんが役に入り込むために「膝枕をお願いした」というエピソード。そこから生まれた自然な関係性が、画面越しにも伝わってきたのです。
広瀬すず:「敬語をやめて話すようになった。距離感が一気に縮まった感じがした」(※インタビューより)
『片思い世界』で深化した“沈黙の演技”
2度目の共演となった『片思い世界』では、横浜さんが演じたのは“心を閉ざしたピアニスト”。
広瀬さんもまた“報われない想い”を抱えたヒロインを熱演。
この作品では、セリフを抑えた“無言の表現力”がテーマ。
横浜さんの静かな視線、広瀬さんのたたずまいが、まるで音楽のように響き合い、観客の心を震わせました。
『汝、星のごとく』三度目の奇跡は“15年の物語”
今回の『汝、星のごとく』は、2人にとって初めての“15年という時の流れ”を演じる物語。
高校生から大人へ、感情の成長と変化を繊細に描く必要があります。
特に注目したいのは、藤井監督と脚本・安達奈緒子さん(『おかえりモネ』『透明なゆりかご』など)が組むこと。
彼らの手にかかれば、島の風景も、人生の選択も、“生きること”そのものとして立ち上がってくるはずです。
キャスト・監督陣のコメントから見える本気度
横浜流星:「僕の想いから始まった企画。すでに感無量です。最後まで責任を持って届けたい」
広瀬すず:「15年にわたる愛のかたちを、丁寧に演じたい」
藤井道人監督:「横浜さんの熱意に心動かされた。広瀬さんとは初タッグ、非常に楽しみ」
これはもう、“役者の覚悟”が映像化された作品と言えるのではないでしょうか。
ファンとして、そして映画ファンとして―観るべき理由
- 横浜流星が“作品を生んだ”という事実
- 広瀬すずとのW主演という信頼関係
- 藤井道人×安達奈緒子の実力派タッグ
- 15年にわたる恋愛ドラマというスケール感
- 美しい瀬戸内の自然が演出する“情感の舞台”
どれをとっても、“観なければもったいない”映画です。
🔍 原作の魅力・制作背景・時代性を読み解く
原作『汝、星のごとく』が読者の心をつかむ理由
凪良ゆう氏による原作小説『汝、星のごとく』は、「人はなぜ愛を諦めるのか、あるいは貫こうとするのか」を、15年という年月をかけて問い続ける恋愛小説です。
ただのラブストーリーではなく、家族、仕事、夢、孤独…現代人が抱えるあらゆる問題を背負った登場人物たちが、それでも“愛する”という行為に希望を見いだそうとする。
登場人物の一人ひとりがとても人間的で、読者の「自分もあんな気持ちを抱えたことがある」と思わせる共感力が抜群。そのため、本屋大賞を受賞後もSNSや書店で“静かな熱”を持って広がり続けています。
映画化にあたっては、「派手な展開より、登場人物の“内面の揺らぎ”をどう描けるか」が最重要課題。それこそ、横浜流星×広瀬すずという“演技で感情を表現する俳優たち”の出番です。
藤井道人監督の過去作から読み解く本作の方向性
藤井道人監督といえば、ドキュメンタリーのようなリアリティと、繊細な人物描写に定評のある作家肌の映画人。
『新聞記者』では社会派の切り口で正義と葛藤を描き、『余命10年』では余命わずかな少女の心の機微を涙なしには見られない筆致で映像化しました。
本作でも、きらびやかなラブストーリーというよりは、“生きることそのもの”の延長線上にある愛のかたちを映像化する方向になると予想されます。
また、藤井監督が「横浜さんの熱意に動かされた」と明言しているように、今回は俳優の想いが企画そのものの核になっている点でも異色。まさに、“共犯関係”としての映画づくりが進んでいるのです。
俳優主導の映画企画――これからの主流になるか?
横浜流星さんが「原作を自ら提案して映画化に至る」という流れは、今の映画界でも注目されています。
俳優自身が“演じたい作品”をプロデュース的に立ち上げることで、より深い役作りや作品理解が可能となり、結果として質の高い映画が生まれやすくなる。
これは単なる“顔だけの起用”ではなく、俳優自身の思想・情熱が映像に直結する時代がきている証です。
横浜さんはこれまでも多くの難役をこなしつつ、演技に対する真摯な姿勢で評価されてきました。今回の映画化は、まさにその集大成とも言えるチャレンジでしょう。
瀬戸内×映像美=“情感の舞台装置”としてのロケ地
本作の舞台となるのは、瀬戸内海の小さな島。
美しい海、ゆったりとした時間、限られた人間関係。そうしたローカルな舞台だからこそ、登場人物の感情が強く際立つという構図になっています。
藤井監督の映像美と、瀬戸内の光・影が交錯するロケーションは、まさに“視覚で感じる文学”。
都市的なドラマとは一線を画す“静けさとぬくもり”の映画体験になることは間違いありません。
📝 この作品が提示する“愛のあり方”
『汝、星のごとく』は、誰もが通り過ぎる「若さ」「迷い」「選択」を、15年という時の流れを通して描いた物語です。
そして、主演の横浜流星がその原作に感動し、信頼する広瀬すずと再びタッグを組んで実現したこの映画には、彼ら自身の人生・キャリアが重なります。
映画の中で描かれる2人の姿に、私たちは過去の自分、あるいは未来の選択肢を重ねて見ることになるはずです。
この映画は、「観る」だけでなく、「感じる」作品になる――。