
2025年11月12日、PlayStation公式配信イベント「State of Play 日本」で発表された『オクトパストラベラー0』。
その新トレーラーとともに、冒頭3時間をプレイできる体験版が同日より配信開始された。シリーズファンにとって待望の新章であると同時に、「0」というタイトルが示す通り、本作は“原点回帰”と“再構築”の両立を試みる挑戦的な一作だ。
■ “0”が意味するもの ― シリーズの「出発点」をもう一度見つめる

『オクトパストラベラー』シリーズは、スクウェア・エニックスが送り出すHD-2D作品群の代表格として知られる。ドット絵と3Dライティングを融合させた“HD-2D”表現は、懐かしさと新しさを併せ持ち、JRPG黄金期の再興を象徴する存在となった。
その中で『オクトパストラベラー0』が掲げる「ゼロ」というナンバリングは、単なる前日譚ではない。シリーズの“核”にある「人の生き方」「選択の重み」「旅の原風景」をもう一度掘り下げる意図が込められているようだ。
■ 体験版で垣間見える“進化” ― プレイヤーの自由度が劇的に変わった
体験版では、序盤の3時間をプレイでき、作成したセーブデータは製品版に引き継ぎ可能。注目すべきは、キャラクターメイク機能の導入だ。これまでシリーズは、8人の主人公それぞれの物語が交錯する構造を採用してきたが、本作ではプレイヤー自身が物語の起点を作ることができる。
選べる職業や初期スキルの組み合わせは多彩で、選択によって序盤の展開や人間関係の構築が微妙に変化する。過去作の「群像劇」的な魅力を引き継ぎつつも、“自分自身が物語を紡ぐ”RPG体験へと進化している点が印象的だ。
■ 世界観の深化 ― オルステラ大陸に流れる「始まりの神話」
『オクトパストラベラー0』の舞台は、シリーズおなじみのオルステラ大陸。だが、時間軸は前作よりもはるか昔。神話の時代に遡り、「人間と神々の境界」がまだ曖昧だった頃の物語が描かれる。
プレイヤーは、戦乱の予兆が迫る時代の中で、自らの運命を選び取り、世界の“記憶”を紡いでいく。過去作で語られた伝承や逸話が、今作で実際の歴史として明かされる構成は、シリーズファンにはたまらない仕掛けだ。
■ 戦闘システムの再構築 ― 戦略性とテンポの両立

ブーストポイントやブレイクといったおなじみのシステムは健在だが、今作では「リンクアビリティ」という新要素が追加。特定の条件を満たすと、同行キャラクターとの連携攻撃やスキル連動が可能になり、戦術の幅が一気に広がる。
さらに、キャラクターごとに異なる「信念」パラメータが導入されており、選択肢によって仲間の信頼度やイベント展開が変化するなど、戦闘と物語がより緊密に結びつく構造になっている。
■ “ゼロ”から始まる“再発見” ― シリーズを知らない人にも届く物語
『オクトパストラベラー0』は、シリーズの“入口”として設計されている点も注目だ。前作をプレイしていなくても理解できる構成になっており、世界観の再定義を通して「これから始める人」と「ずっと追いかけてきた人」の両方に響く作りになっている。
体験版だけでも、過去作の魅力──重厚な物語、戦略的な戦闘、そして詩情漂う音楽──がしっかりと受け継がれていることが伝わる。
■ まとめ:『オクトパストラベラー0』は、“懐かしさの再生”であり、“未来への助走”

『オクトパストラベラー0』は、単なる前日譚ではなく、シリーズという旅そのものを再定義する試みだ。
「過去」と「未来」の狭間に立つこの作品は、初代『オクトパストラベラー』から続く“人の物語”を再構築しつつ、HD-2Dという手法の新たな可能性を提示している。
体験版を通じて感じられるのは、「ゼロに戻る」ことの意味。それは、すべての物語の“始まり”を見つめ直す旅なのかもしれない。
オクトパストラベラーシリーズの進化とその意義
HD-2Dシリーズは、ドット絵RPGが持っていた“想像の余白”を現代的な光と影の表現で蘇らせた。『オクトパストラベラー』が2018年に登場した際、多くのファンが「RPGの原風景が帰ってきた」と感じたのは、単なる懐古ではなく、“物語を想像する余地”が再びプレイヤーに返されたからだ。
そして2025年の今、『オクトパストラベラー0』が問いかけるのは──「RPGとは、誰の旅なのか?」という原点的なテーマ。
グラフィックの進化、演出の深化、そして選択の自由。どれも技術的進歩だが、その根底には“プレイヤーが物語の中心に立つ”という思想が息づいている。
『0』という数字は、リセットではなく、「無限の始まり」を意味する。
『オクトパストラベラー0』は、RPGというジャンルがもう一度“人の心を旅させる力”を取り戻す、そのターニングポイントになるかもしれない。












