
俳優・竹内涼真が「時代の変化」と向き合うとき
竹内涼真。端正なルックスと爽やかな雰囲気で若手俳優の枠を超え、近年は骨太な役柄にも挑戦し続けている彼が、2025年10月より放送されるTBS火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』で、現代の“男らしさ”に鋭く切り込む役に挑む。
演じるのは、昭和的な価値観を引きずる男・海老原勝男。「料理は女が作るもの」という無自覚な思い込みを抱えながらも、恋人との別れを経て自分の在り方を見つめ直していく――そんな“変化の途中にいる男”を、竹内はどのように体現するのか。
“男らしさ”のアップデート――勝男という役に込めた思い
勝男というキャラクターは、令和の視点で見れば「時代遅れ」とも映る価値観を持つ人物だ。しかし、決して悪人ではない。むしろ、自分なりに恋人を大切にしようとしていたがゆえに、すれ違いが生まれてしまう――そんな等身大の未熟さと人間味が、この役の核にある。
竹内自身も、「読んでいて、自分の心の中を覗かれているようだった」と語る。
普段無意識に発している言葉、思っていること、それがいかにパートナーに影響しているか。そんな当たり前すぎて気づきにくい問題に、真っ正面から向き合う作品となっている。
「この役を演じることで、自分自身も見直さなきゃいけない部分が見えてきた」
竹内は、勝男を通して“気づきの過程”そのものを演じる覚悟をにじませている。
成長を見せる演技力と、“6年ぶりのTBS主演”という節目

今回の作品は、竹内涼真にとってTBSドラマでの主演は『テセウスの船』(2020年)以来、約6年ぶり。さらにTBS火曜ドラマ枠での主演は初となる。
その間、映画や舞台、Netflix作品など幅広いジャンルに出演してきたが、「変化する男」を演じることにおいて、これまでのキャリアが確実に血肉となっている。今回のドラマでは、彼の柔軟な表現力と、役に対する誠実なアプローチが随所に現れるだろう。
ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』とは?

本作の原作は、谷口菜津子による同名漫画。
第26回手塚治虫文化賞・新生賞を受賞したこの作品は、価値観のズレから生まれるすれ違いと、それでも向き合おうとする2人の姿を、ユーモアと温かさを織り交ぜながら描いたロマンスコメディだ。
主人公・山岸鮎美を演じるのは夏帆。ピンク髪という大胆なビジュアルチェンジも話題を呼んでいる。鮎美は、長年「恋人ファースト」で生きてきた女性。勝男との破局を経て、自分の人生を取り戻そうともがき始める。
一方で、勝男は「恋人のために言っているつもり」の言葉や行動が、実は無意識に彼女を傷つけていたことに気づかされる。そんな彼が料理をきっかけに自らの価値観と向き合い、少しずつ変化していく姿が物語の軸となる。
“理想の男”から“変わる男”へ─竹内涼真の変化

これまで、どこか「完璧で爽やか」なイメージが付きまとっていた竹内涼真。
だが、30代に突入し、彼の演じる役柄もより内面の葛藤や成長に重きを置いたものへとシフトしつつある。
今回の勝男というキャラクターは、竹内にとってまさに“理想の男像”を脱ぎ捨てる挑戦でもある。
「正しい」と信じて疑わなかった自分の価値観。
「相手のため」と思っていた言葉が、どこかで相手を縛っていた事実。
そうした気づきを経て、勝男は変わっていく。
竹内自身も、この物語の中で、俳優として、そして一人の人間として、何かを掴み取ろうとしているように見える。
夏帆との初共演にも注目

本作は、夏帆との初共演作でもある。
竹内は彼女について「生命力あふれる方」とコメントしており、芝居を通して多くの刺激を受けている様子。夏帆もまた、「ラブストーリーというより“バディもの”のような感覚で臨んでいる」と語っており、2人の関係性の変化を追うことで、物語への没入感も一層高まるはずだ。
家族・世代・文化――“小さな台所”が映し出す大きなテーマ
このドラマのもう一つの見どころは、勝男の両親を通して描かれる、価値観のルーツと世代間のギャップ。
父・海老原勝(演:菅原大吉)は、典型的な亭主関白。母・陽子(演:池津祥子)はそれに寄り添ってきたが、密かに味噌汁の出汁に市販のものを使っていたりと、家族内にも“見えない揺らぎ”がある。
この家庭環境こそが、勝男の価値観を形作った背景。
そしてそれを壊すこと=自分自身の再構築であり、男としての“再誕”にもつながっていくのだ。
竹内涼真が見せる“変化の物語”に期待
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、一見するとライトなロマンスコメディだが、その裏には、現代を生きるすべての男女が直面する「価値観のアップデート」という重層的なテーマが流れている。
竹内涼真がその中心でどこまで深く“変化”を演じ切るのか。
そして、視聴者自身がどれだけ彼に共感し、あるいは自分を見つめ直すきっかけを得られるのか。
単なるラブストーリーでは終わらない。
このドラマは、変化を恐れず、時代とともに歩む男の物語でもある。
🧩 令和時代の「男らしさ」とは何か?
最後に、少しだけ補足したい。
令和という時代において、「男らしさ」の定義は大きく変わっている。
かつてのように「強く・黙って・支える」だけでは不十分だ。むしろ、「弱さを見せられること」「対話できること」「変化を恐れないこと」こそが、新しい“男の器”なのかもしれない。
竹内涼真は、その変化の先頭に立つような存在だ。
彼の演技を通して、視聴者自身の価値観にも小さな問いが投げかけられることだろう。
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