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「これが将軍の景色です」キングダム 大将軍の帰還 大沢たかおが王騎に託した覚悟と20kg増量の裏側

2025年7月11日

「これが将軍の景色です」─大沢たかおが王騎に託した覚悟と20kg増量の裏側

王騎という“伝説”を大沢たかおが現実にした

映画『キングダム 大将軍の帰還』が地上波で初放送される──その事実だけでも話題性は十分だが、何より注目を集めているのは“大将軍・王騎”を演じた大沢たかおの存在感だ。

原作ファンにとって、王騎はカリスマそのもの。威風堂々とした体躯、飄々とした口調、そして戦場を圧倒する統率力。そのキャラクターを、どうやって実写で再現するのか。いや、再現など不可能なのではないか──そんな声すらあった。

しかし、スクリーンに現れた王騎はまさに「王騎」だった。演じる大沢たかおの姿を見て、多くの観客が思わず息を呑んだに違いない。

20kgの増量──“鎧”ではなく“生身”で挑んだ王騎

王騎というキャラクターをただ演じるのではなく、「生きた王騎」にするために、大沢は自身の肉体から作り替えた。通常より約20kgもの増量を行い、あの巨大な矛を振るう堂々たる肉体を手に入れたのだ。

見た目だけでなく、重厚な動き、威厳ある立ち居振る舞い、馬上での姿勢までも徹底的に作り込まれている。しかもその肉体に「重たさ」が一切感じられない。画面の中の彼は矛を軽々と担ぎ、戦場を駆ける。

増量とは単なる装飾ではなく、“王騎という人間”に魂ごと近づくための覚悟だった







声・言葉・笑み──すべてが「王騎」だった

印象的だったのは、その口調だ。「腑に落ちないでしょうねえ」「血が沸き立ちます」──どこか芝居がかった、しかし決して浮かないあの話し方。高貴さと不気味さを混在させた声のトーンは、原作の“王騎らしさ”を超えて、“大沢たかおなりの王騎”として成立していた。

さらに、戦場の中心で放たれる言葉ひとつひとつが、信をはじめとした部下、そして観客の胸にも響く。「これが将軍の見る景色です」。このセリフが発せられる瞬間、彼の背中にはすべての命と意志が重なっているように見える。

静から動へ──「摎の思いもですよ!」の一言に込められた激情

映画の中盤、ある重要な場面で大沢演じる王騎が放つ、「摎(きょう)の思いもですよ!」というセリフ。この瞬間、それまでの柔らかな笑みは吹き飛び、感情が爆発する。

“静かなる将軍”が突如見せるその激情は、観客の感情を一気に持っていく。大沢たかおの凄さは、この“切り替えの緩急”にこそある。彼は王騎の中に眠る激情と悲しみを、抑え続け、そして必要な瞬間にだけ解き放つ。そのバランス感覚が、王騎という複雑なキャラクターをより立体的に描き出していた。

「王騎=大沢たかお」──そう思わせる説得力

これまで数々の役柄を演じてきた大沢たかお。『JIN-仁-』では心優しい医師を、『沈黙の艦隊』では日本を揺るがす指揮官を演じ、強さと静けさを兼ね備えた俳優として知られてきた。

だが本作では、演技という枠を超えて、「存在」そのもので勝負している。大沢たかおの王騎は、もう“演じている”のではない。王騎そのものだった。その説得力が、作品全体の重みを支えている。







“将軍の景色”を次世代に託す──信との継承の場面

この映画の真の意味は、“王騎の物語”であると同時に、“信の物語”でもある。大沢たかおが演じた王騎の背中を見つめる若き将軍候補、信(山﨑賢人)。その眼差しの中に、「これが将軍の見る景色」という言葉がしっかりと刻まれている。

王騎という生き様は、戦いと共に消えるのではなく、次代へと継承されていく。その瞬間を描くためにこそ、大沢の“王騎”が必要だったのだ。

なぜ「王騎=大沢たかお」だったのか

役作りの域を超えた20kgの肉体改造。

芝居と魂が一体化した声と表情。

そして、激戦の中でなお笑みを忘れず、最後に激情を吐き出すその瞬間。

大沢たかおが王騎を演じたのではない。王騎として、この物語に生きた。

それこそが、映画『キングダム 大将軍の帰還』が生んだ奇跡であり、この作品の本質なのかもしれない。

📌大沢たかおの“役との向き合い方”に見る俳優哲学

大沢たかおという俳優は、役柄に合わせて“変身”することで知られている。だが、それは単なる見た目の話ではない。彼が最も重視するのは「その人物として、どう息をするか」だという。

『JIN-仁-』の南方仁では、過去と未来の狭間で葛藤する内面を見せ、『下町ロケット』ではリーダーとしての現実的な判断力を表現。そして『キングダム』では、“現実には存在しない伝説の男”を、“現実の人間として”成立させた。

そのために、彼は筋肉ではなく「内臓に重さをつける」ような身体の作り方をしたという。重量感、呼吸、歩き方、すべてが王騎になるための要素。映像の中での立ち姿や発声に込められた“内側から出る強さ”は、CGや衣装では決して代替できないものだった。

彼が挑んだのは、王騎という存在の“本質”に触れること。観客にとっての「王騎像」を裏切らず、それでいて新しい王騎を作り上げること。これができる俳優は、果たしてどれだけいるだろうか。

『キングダム 大将軍の帰還』を通じて、大沢たかおは“原作ファン”と“映画ファン”を繋ぎ、“伝説”を現代に蘇らせた。だからこそ、観終わったあとに心に残るのは、戦場の緊張でも、物語の展開でもなく、王騎の「背中」なのだ。

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