はじめに─“芸能人・手越祐也”の枠を超えて
かつて“王子キャラ”としてジャニーズアイドルの第一線で活躍し、現在はYouTubeや音楽活動などマルチなフィールドで存在感を放つ手越祐也。そんな彼が、7年ぶりにテレビドラマの世界に戻ってくる。
その復帰作となるのが、10月から放送される日本テレビ系の新ドラマ『ぼくたちん家』。
手越が演じるのは、人生や恋愛に冷めた視線を持つ中学校教師・作田索(さくた・さく)。その役どころは、これまでの手越の明るく自由奔放なイメージとは一線を画すものだ。
なぜ今、俳優としてカムバックするのか?
その背景にある心境の変化と、新たな挑戦への覚悟を紐解く。
なぜ今、7年ぶりの俳優復帰なのか?
手越祐也がテレビドラマに出演するのは、2018年の『ゼロ 一獲千金ゲーム』以来。本格的な“俳優業”としての出演は約7年ぶりとなる。
このタイミングで俳優復帰を果たした理由について、手越本人は次のように語っている。
「“作田索”という役は手越さんにお願いしたい」
そんなプロデューサーの熱意を受け、台本が進むにつれ「自分の考える索像に近づいていく感覚があった」と話している。
本作のプロデューサーは、2006年の名作『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』でも手越とタッグを組んだ河野英裕氏。当時高校生役を務めた手越が、38歳の中学教師として戻ってくるという“時間の連なり”も、感慨深い。
演じる「作田索」という人物と、その深層
手越が演じる“作田索”は、人生や恋に対して冷めた視線を持ち、他人と距離を置くタイプのゲイの中学校教師。
彼の前に現れるのが、及川光博演じる不器用だが情に厚い50歳のゲイ男性・波多野玄一。玄一の明るさと優しさに、徐々に心を動かされていく。
この役どころについて、手越は以下のように語っている。
「“索”の内面をどう演じるか、考える時間が本当に楽しかった。台本に書かれた言葉以上に、表情や空気で伝えたい役です」
視聴者にとっては、これまでの“陽キャ手越”からのギャップも見どころのひとつ。
また、バラエティで見せるテンションの高さや即興力とは違い、繊細な感情表現を求められる演技で彼の“俳優力”が問われる。
“天然の陽キャ”が現場で見せた変化
撮影現場では、共演者・及川光博との“初対面”が早くも話題に。
及川は手越についてこう評している。
「僕が“ビジネス陽キャ”なら、手越くんは“天然の陽キャ”ですね。現場のムードメーカーとして本当に心強い存在です」
このコメントからも、現場での信頼関係の深さが伺える。
手越本人も「初対面ですぐ“ミッチー”と呼んだ」と語るなど、相手の懐に飛び込むスピード感は健在。
ただし今回の手越は、“陽キャ感”に頼ることなく、役の深みと真剣さで勝負する姿勢を見せている。
実際に脚本を読み、「自然と涙がこぼれた」と語る場面もあったという。
LGBT、偏見、居場所──作品が映す今の社会
『ぼくたちん家』は、ただのラブコメディではない。
物語には、LGBTQ+の尊厳や、社会の周縁で生きる人々のリアルが色濃く描かれる。
手越はこの作品を通して、「誰かが誰かの幸せを否定する権利はない」と強調する。
「愛の形は人それぞれでいい。みんな違って、みんな悩みながら生きている。それをこの作品で伝えたい」
社会的テーマに対しても真正面から向き合う姿勢が、今回の復帰作を“単なるカムバック”ではなく、**“表現者としての進化”**へと昇華させている。
“俳優・手越祐也”が再び立つ、その意味
2018年を最後に俳優業から距離を置いていた手越祐也が、今、改めて演技という表現に向き合っている。
それは「過去をなぞる復帰」ではなく、新たな価値を生み出す挑戦だ。
脚本に心を動かされ、現場で共演者との信頼関係を築き、役に真摯に向き合う――そこには、かつての“アイドル手越”でも、“YouTuber手越”でもない、“俳優手越祐也”の姿が確かにある。
『ぼくたちん家』は、そんな彼の“再出発”を刻む一作となるだろう。
📝 『マイ☆ボス』から19年─俳優・手越祐也の今を支える原点とは?
手越祐也が『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』で演じたのは、明るく健気な高校生・桜小路順。
当時から彼は、キャラクターの明るさとコミカルな間で魅せるセンスに長けていた。
そして今、その“原点”に通じる明るさは持ちつつも、人の痛みや複雑な感情を表現する力が加わった。
長年にわたりバラエティや音楽活動を通して“伝える力”を磨いてきた彼だからこそ、今回のようなテーマ性の強い作品で、より説得力ある演技ができるのではないか。
そして何より、“待っていたファン”がいる。
彼の演技をもう一度見たいという想いに応えるように、俳優・手越祐也は今、再び立っている。
📺 『ぼくたちん家』は、2025年10月より日本テレビ系にて放送予定(毎週日曜22:30〜)
主演:及川光博/出演:手越祐也
脚本:松本優紀 プロデュース:河野英裕
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