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羽生結弦という表現者を写す──能登直の視線が結晶化した「THE ART」と現在地

羽生結弦という表現者を写す──能登直の視線が結晶化した「THE ART」と現在地

フィギュアスケートの歴史を振り返ったとき、競技成績や記録だけでは語りきれない存在がいる。その代表例が、プロスケーター 羽生結弦 だ。

ジャンプの難度や得点を競う世界から距離を置いた現在も、彼の滑りは多くの観客に強い印象を残し続けている。それは、演技が単なる運動ではなく、空間や時間と結びついた「表現」として成立しているからだろう。

そんな羽生結弦の“今”を、写真という静止表現で丁寧にすくい取ったのが、anan特別編集による完全受注生産カレンダー「羽生結弦 “THE ART” CALENDAR 2026.4-2027.3」である。本作の撮影を担ったのは、長年にわたり羽生結弦を撮影してきたフォトグラファー 能登直 だ。

能登直という写真家が見つめてきた時間

羽生結弦という表現者を写す──能登直の視線が結晶化した「THE ART」と現在地

能登直の写真は、いわゆる「決定的瞬間」を強調するタイプのものではない。ジャンプの頂点やスピンの回転数といった分かりやすい見どころよりも、その前後にある呼吸、視線、身体の余白に重きを置いてきた写真家である。

羽生結弦という表現者を写す──能登直の視線が結晶化した「THE ART」と現在地

今回のカレンダーに収められた14枚は、昨シーズンのアイスショーから選ばれている。アイスショーは、照明や音響、舞台構成があらかじめ設計された空間であり、羽生結弦の表現が立体的に現れる場だ。能登のレンズは、その完成度を誇示するのではなく、演技が成立する瞬間の緊張感や静けさを淡々と写し取っている。

写真一枚ごとに、動きの途中で生まれる一瞬の停滞や、次の動作へ移行する前の微細な間が感じ取れる構図は、長い時間をかけて被写体と向き合ってきた関係性を想起させる。

プロ転向後に変化した羽生結弦の立ち位置

羽生結弦という表現者を写す──能登直の視線が結晶化した「THE ART」と現在地

羽生結弦は2022年に競技会から離れ、プロスケーターとして活動を続けている。この選択は、競技を終えたというよりも、表現の軸足を移したものと捉える方が近い。

プロ転向後の彼は、光や音楽、衣裳、テクノロジーなどを取り込みながら、舞台表現としてのプログラムを構築してきた。ジャンプやスピンは依然として演技の核を成しているが、それらは得点を獲得するための要素ではなく、物語や感情の流れを前に進めるための身体表現として配置されている。

こうした変化は、映像で見ると流れるように過ぎ去ってしまうが、写真として切り取られることで構造が浮かび上がる。能登直の写真は、羽生結弦がどのように空間と関係を結び、どの地点で表現を成立させているのかを静かに示している。

anan特別編集が打ち出した「飾る」カレンダー

本作は、雑誌『anan』編集部による特別編集という位置づけだが、一般的な雑誌付録や販促物とは明確に異なる。

「読む」ためのメディアではなく、「飾る」ことを前提に設計されている点が大きな特徴である。

B3変形サイズの大判仕様は、壁に掛けたときに写真そのものが主役になるスケール感を持つ。印刷はマットな質感を基調としつつ、一部に光沢加工を施すことで、氷上の反射や照明の陰影が自然に浮かび上がるよう工夫されている。14枚すべてが独立した鑑賞物として成立し、付属の厚紙製オリジナル額縁型パッケージに収めることで、壁掛けや棚置きなど、空間に合わせた楽しみ方が可能だ。

ここで重視されているのは、日付の視認性よりも、写真が生活空間に存在し続けることそのものだろう。

「THE ART」という言葉が示す距離感

羽生結弦という表現者を写す──能登直の視線が結晶化した「THE ART」と現在地

タイトルに掲げられた「THE ART」という言葉は、羽生結弦を特別視するための装飾ではない。

競技という明確な評価軸から離れた現在、彼の滑りは舞台芸術や現代的なパフォーマンスを想起させる構造を帯びている。その在り方を、あえて一言で示すための言葉として、このタイトルが選ばれたと考えられる。

能登直の写真が伝えるのは、完成された結果だけではない。身体と音楽、光と空間が一瞬の均衡点に達したときに生まれる緊張感や、その均衡が崩れる直前の不安定さまで含めて写し取られている。そこに過剰な説明はなく、鑑賞者が意味を見出す余白が残されている。

写真集ではなくカレンダーという選択

この企画が写真集ではなく、カレンダーという形式を採用した点も注目に値する。

写真集は一度にまとまった体験を提供するが、カレンダーは時間とともに写真が更新されていく。一枚の写真と一カ月を過ごし、次の一枚へ移行するという循環は、現在進行形で表現を更新し続ける羽生結弦の活動スタイルと相性が良い。

競技時代のようにシーズンや大会で区切られた時間軸が存在しない今、カレンダーは彼の「今」を生活の中で見届けるための装置として機能する。

このカレンダーが映し出す「現在進行形」

このカレンダーが提示しているのは、過去の実績を振り返るための資料ではない。

むしろ、羽生結弦という表現者が今どこに立ち、どの方向を見つめているのかを、静かに共有するためのメディアである。

一枚の写真は完成形ではなく、その時点での通過点だ。

生活空間の中で繰り返し目にすることで、最初は気づかなかった要素が浮かび上がる。その体験自体が、このカレンダーの価値と言えるだろう。

「THE ART」とは、固定された評価や称号ではない。

更新され続ける表現の状態を示す言葉として、このカレンダーは存在している。

商品情報

  • 商品名:羽生結弦 “THE ART” CALENDAR 2026.4-2027.3
  • 発売元:マガジンハウス
  • 編集:anan編集部
  • 発売時期:2026年3月下旬予定
  • 内容:表紙、月間カレンダー12枚、年間カレンダー1枚の計14枚
  • 仕様:B3変形サイズ、マット印刷(一部光沢加工)、厚紙製オリジナル額縁型パッケージ付き
  • 価格:税込9,900円
  • 販売形態:完全受注生産
  • 予約開始:2025年12月26日(金)正午12:00より、全国書店・ネット書店にて受付

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羽生結弦という表現者を写す──能登直の視線が結晶化した「THE ART」と現在地

羽生結弦“THE ART”CALENDAR 2026.4~2027.3

羽生結弦“THE ART”CALENDAR 2026.4~2027.3
空間を芸術領域として包み込む、光のデザイン、音の演出――。
すべてを無二のART空間にする希代の生きる芸術者
“羽生結弦” のパフォーマンスフォトから、珠玉の14枚をアートに。

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羽生結弦という表現者を写す──能登直の視線が結晶化した「THE ART」と現在地

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ポプバ編集部:Jiji(ジジ)

映画・ドラマ・アニメ・漫画・音楽といったエンタメジャンルを中心に、レビュー・考察・ランキング・まとめ記事などを幅広く執筆するライター/編集者。ジャンル横断的な知識と経験を活かし、トレンド性・読みやすさ・SEO適性を兼ね備えた構成力に定評があります。 特に、作品の魅力や制作者の意図を的確に言語化し、情報としても感情としても読者に届くコンテンツ作りに力を入れており、読後に“発見”や“納得”を残せる文章を目指しています。ポプバ運営の中核を担っており、コンテンツ企画・記事構成・SNS発信・収益導線まで一貫したメディア視点での執筆を担当。 読者が「この作品を観てみたい」「読んでよかった」と思えるような文章を、ジャンルを問わず丁寧に届けることを大切にしています。

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