
伊藤万理華という表現者を語るとき、肩書きでは捉えきれない“幅”がある。女優、クリエイター、アートワークの発信者。どれも正しいが、そのどれか一つには収まらない。
共通しているのは、いつも「自分が本当に好きなこと」に向き合っているという点だ。外へ見せるために飾るのではなく、内側から生まれる興味や衝動をそのまま形にしていく。そんな姿勢こそ、彼女の魅力の核になっている。
この記事では、乃木坂46卒業後の歩みを改めて整理しながら、現在進行形の活動、そして最新出演作であるNHKラジオ企画「ミドリ・デイルのアルトコロニーラジオ」での役柄に触れつつ、伊藤万理華が向かっている“これから”を深掘りする。
出発点:乃木坂46から、自分の感性へ
伊藤万理華は、2011年に乃木坂46の1期生として活動を開始。
ダンスや舞台表現に秀でたメンバーとして、多くのMV・ライブ・作品に登場した。
その後、2017年10月に年内での卒業を発表し、12月23日のイベント出演をもってグループ活動を締めくくった。
卒業後すぐにアートや映像制作など独自の表現に力を入れ始め、2017年の個展「脳内博覧会」を皮切りに、自身の感覚と世界観を“展示”という形で提示する活動を本格化させていく。
ファッション、写真、インスタレーション、映像。媒体を限定しない姿勢は、まさに“自分が好きなもの”をそのまま表現へつなげていく動きだった。

現在地:女優として、クリエイターとして
映像・ドラマでの挑戦
2025年にはNHK夜ドラ「いつか、無重力の宙(そら)で」に木内晴子役で出演。作品は2025年9月8日に放送開始し、短いながら深みのある群像劇の中で、静かに繊細な感情を抱えたキャラクターを丁寧に演じた。
映像作品において、日常の機微をすくうような演技ができるのは、彼女が持つ“観察する力”と“空気を読む身体性”の賜物と言える。
舞台での存在感
2025年5〜6月に上演された舞台「リプリー、あいにくの宇宙ね」では、航海士ユリとして主演を務めた。SF的な世界観でありながら、役柄としては人間味のある揺らぎを抱え、観客の没入を支える芯の強さを見せた。
舞台は呼吸・距離・質感がごまかせない場だが、伊藤万理華の“身体で世界観を作る”力が活きるフィールドだった。
続いていくアート表現

一方で、アート活動も途切れず続いている。彼女の独自プロジェクト「脳内博覧会 PLAYLIST」では、映像・音楽・ファッションを織り交ぜたオンライン展示を行い、“作品をつくること”そのものを生活の一部にしている。
この二本柱――「俳優」と「クリエイティブ」――が互いに干渉し、彼女の活動に立体感を与えている。
最新作「ミドリ・デイルのアルトコロニーラジオ」で見せる“音”の表現
2025年12月にNHKラジオ第1で放送される「ミドリ・デイルのアルトコロニーラジオ」。
これはNHK特集ドラマ「火星の女王」と世界観を共有するスピンオフ企画であり、劇中ラジオ番組を現実に放送するというユニークな試みだ。
伊藤万理華が演じるのは、地球生まれのアイドル・レイラ。作中の中継コーナー「プレゼントフロムアース」を毎回担当する、活気と透明感を併せ持つキャラクターだ。
声だけで存在感を作るラジオドラマは、映像や舞台とは別種の表現力が求められる。表情の代わりに“声の温度”で世界に色をつけるメディアだ。
伊藤万理華の声は、やわらかく、少し芯があり、聞き手の想像を自然に誘導する。今回のレイラという役は、その長所が最も素直に発揮される場になっている。
“好き”と向き合う姿勢が生む独自性
伊藤万理華を貫くのは、「自分が好きなものに丁寧に触れ、それを外へ出す」という姿勢だ。
苔や鉱物、小物、映像、服、展示空間。それらは単なる趣味ではなく、作品の出発点になっていく。
彼女が何を好きになるかは予測できないが、その“好き”が形になったとき、そこには一目で「伊藤万理華らしさ」が宿る。
その静かで強い個性こそ、ファンやクリエイターから注目され続ける理由の一つだ。
これから:どんな“好き”が次に形になる?
これから注目したいポイントは大きく3つ。
声の表現の拡張
ラジオドラマ出演をきっかけに、ナレーションや音声作品など“声”を軸にした表現が広がる可能性がある。
アートプロジェクトの深化
自身の展示企画やオンラインプロジェクトは今後も進化し、他分野とのコラボレーション、空間演出なども期待できる。
ジャンル横断の活動
俳優としての出演作が増える中でも、作品選びには一貫して“好き”という基準が流れている。ジャンルに縛られず、新しい媒体やテーマに挑む未来が見えている。
まとめ
伊藤万理華は、表現の幅を広げつつも「自分の好き」を見失わない稀有な存在だ。
俳優として、クリエイターとして、日々の興味や直感を大切にしながら活動を続けることで、作品は常に新しく、生活と地続きの温度を持っている。
そして今回の「ミドリ・デイルのアルトコロニーラジオ」でのレイラ役は、そんな彼女の“新しい一面”を示すものとなるだろう。
これからの表現がどんな形で届けられるのか――その過程すら作品の一部として楽しみたい。
伊藤万理華の“好き”の広がりを読み解く
伊藤万理華の作品や言葉を遡ると、その根底にあるのは「感覚の収集家」としての一面だ。
幼いころに続けていた身体表現の経験、学生時代に没頭した写真やファッション、ものづくりの細やかな視点。それらが積み重なって“今の表現”に結びついている。
彼女は「何かを好きになる瞬間」をとても大切にしているように見える。例えば、苔や鉱物を手にとって眺めるときの静けさ、洋服の素材を触るときの感触、展示空間の空気の流れ。どれも一見すると日常に溶け込む小さな要素だが、その細部から彼女は作品の“種”を拾い上げる。
その感覚の延長にあるのが「脳内博覧会 PLAYLIST」だ。オンラインで24時間開館する展示という形をとっているが、これは“日々の好きが勝手に増えていく状態”そのもののようでもある。
見る人は、作品を鑑賞するというより“伊藤万理華の頭の中に一瞬入り込む”ような体験をする。こうした仕組みづくりは、アーティストというよりキュレーターにも近い発想だ。
また、俳優としての演技にも「観察したものを、静かに身体へ落とし込む」プロセスが感じられる。大声で感情をぶつける演技より、役の背景を読み取り、空気の流れを変えるように存在感を作る演技が印象的だ。
舞台「リプリー、あいにくの宇宙ね」での航海士ユリ役はその好例で、SF世界にいながら人物の寂しさや揺らぎが自然に滲み出ていた。
こうした“静かな強さ”を支えているのは、外側の評価よりも自分の興味に従う姿勢だろう。人気や話題性より、「今の自分が触れたい世界かどうか」を判断軸にすることで、活動の一つひとつが彼女の人生の延長線として機能している。
今後どの方向へ進んでも、変わらないのは「好きなものを自分の温度で表現し続ける」ということだ。展示、映像、声、文章、服、写真。表現の形が増えるほどに、伊藤万理華は“彼女自身の軌跡”を広げていく。
その歩みは決して派手ではないかもしれない。しかし、少しずつ、確実に、彼女の世界は育っていく。そしてその過程を見守りたくなる――そんな魅力がある。
飾らず、自分と「好き」に向き合う――伊藤万理華が描く“今”とこれから
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