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山下智久『5→9~私に恋したお坊さん~』で刻まれた転機|今も語られる理由

2015年にフジテレビ系で放送されたドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』は、放送から10年近くが経った今も、俳優・山下智久の代表作の一つとして語られている作品だ。2025年12月20日からTVerで配信が始まったことで、当時リアルタイムで視聴していた層だけでなく、初見の視聴者にも改めて届いている。

本作が特別な意味を持つ理由は、単に人気ラブコメだったからではない。山下智久という俳優が、それまでのイメージを更新し、次のフェーズへ踏み出す過程が色濃く刻まれている点にある。

星川高嶺という“癖のある主人公”

山下智久『5→9~私に恋したお坊さん~』で刻まれた転機|今も語られる理由

山下が演じた星川高嶺は、名家の寺を継ぐ僧侶という立場にありながら、恋愛においては驚くほど一直線な人物だ。

礼節や家柄を重んじる一方で、感情が先走り、時に強引とも受け取られる行動に出てしまう。その危うさは、従来の恋愛ドラマに登場する「完成された理想の男性像」とは明確に異なっていた。

この役で印象的なのは、星川が決して万能な存在として描かれていない点だ。視聴者は彼の未熟さや空回りを目の当たりにしながら、それでもなお誠実さを感じ取る。山下智久は、そのバランスを誇張せず、淡々と積み重ねることで、キャラクターを現実の延長線上に存在する人物として成立させている。

石原さとみとの関係性が生んだ緊張感

ヒロイン・桜庭潤子を演じたのは石原さとみ。海外で働くという明確な目標を持つ英会話講師という設定は、寺の未来を背負う星川高嶺と正反対の価値観を象徴している。

二人は本作が初共演だったが、やり取りには過度な作為が感じられない。恋愛感情だけでは解決できない「仕事」「結婚」「生き方」の選択を巡る衝突が、自然な会話の中で描かれていく。石原演じる潤子が示す現実的な視点と、山下演じる星川の融通の利かなさが噛み合わないことで、物語には独特の緊張感が生まれていた。

『5→9』が示した俳優・山下智久の転換点

『5→9』以前の山下智久は、クールで完成度の高い人物像を求められる役が多かった。

しかし本作では、視聴者から反発を受けかねない要素も含めて役を引き受けている。星川高嶺は好意的に受け取られる場面ばかりではなく、価値観の押し付けとして映る瞬間もある。その曖昧さを抱えた人物像に正面から向き合ったこと自体が、俳優としての挑戦だった。

この作品を境に、山下は役柄の幅や作品選びにおいて変化を見せていく。日本の連続ドラマという枠にとどまらず、異なる制作環境や表現の場に関心を広げていった流れを考えると、『5→9』は一つの起点として位置づけることができる。

配信時代に再評価される理由

TVerでの配信により、『5→9』は当時とは異なる視点で受け止められている。放送当時はラブコメとして消費されていた場面も、今見ると「どの選択が正しいのか分からないまま進む不安」や「周囲の期待と自分の本心のズレ」といった要素が浮かび上がる。

時代が変わっても共感されるのは、登場人物たちの悩みが今も現実的だからだ。星川高嶺が抱える葛藤は、特別な僧侶の話ではなく、多くの人が人生のどこかで直面する選択の縮図として機能している。

人物像から読み解く『5→9』の意味

『5→9~私に恋したお坊さん~』は、恋愛の成否をゴールにした物語ではない。

むしろ「自分が背負っている役割と、個人としての望みは両立できるのか」という問いを、僧侶と英会話講師という対照的な二人を通して描いている。

山下智久が演じた星川高嶺は、周囲から当然のように課される期待を疑いながらも、それを簡単には手放せない人物だ。その姿は、長く第一線で活動してきた山下自身が、次の表現を模索していく過程と重なって見える部分がある。だからこそ本作は、単なる過去のヒット作ではなく、彼のキャリアを読み解くうえで欠かせない一本として今も語られ続けている。

今あらためて『5→9』を観ることは、懐かしさを味わう行為にとどまらない。俳優・山下智久が、どの地点から現在へと歩みを進めてきたのかを静かに確認する時間でもある。その視点で向き合ったとき、このドラマは今も十分に“現在進行形”の意味を持って立ち上がってくる。

back number 14th single「クリスマスソング」(2015.11.18 Release)

フジテレビ系月曜9時ドラマ「5→9〜私に恋したお坊さん」主題歌

惚れ薬で豹変した最強騎士の暴走が止まりません!

山下智久『5→9~私に恋したお坊さん~』で刻まれた転機|今も語られる理由

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この記事を書いた執筆者・監修者
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ポプバ ドラマ部:佐伯・Pちゃん

脚本家の視点でドラマを深掘る、雑食系オタクライター。
幼少期からドラマと映画が大好きで、物語を追いかけるうちに自然と脚本を書き始め、学生時代からコンクールに応募していた生粋の“ストーリーマニア”。現在はドラマのレビュー・考察・解説を中心に、作品の魅力と課題を両面から掘り下げる記事を執筆しています。
テレビドラマは毎クール全タイトルをチェック。「面白い作品だけを最後まで観る」主義で、つまらなければ途中でドロップアウト。その分、「最後まで観る=本当に推したい」と思える作品だけを、熱を込めて語ります。
漫画・アニメ・映画(邦画・洋画問わず)にも精通し、“ドラマだけでは語れない”背景や演出技法を比較的視点で解説できるのが強み。ストーリーテリング、脚本構造、キャラクター心理の描写など、“つくる側の目線”も織り交ぜたレビューが好評です。
「このドラマ、どう感じましたか?」を合言葉に、読者の感想や共感にも興味津々。ぜひ一緒にドラマの世界を深堀りしていきましょう!

この記事を書いた編集者
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ポプバ編集部:Jiji(ジジ)

映画・ドラマ・アニメ・漫画・音楽といったエンタメジャンルを中心に、レビュー・考察・ランキング・まとめ記事などを幅広く執筆するライター/編集者。ジャンル横断的な知識と経験を活かし、トレンド性・読みやすさ・SEO適性を兼ね備えた構成力に定評があります。 特に、作品の魅力や制作者の意図を的確に言語化し、情報としても感情としても読者に届くコンテンツ作りに力を入れており、読後に“発見”や“納得”を残せる文章を目指しています。ポプバ運営の中核を担っており、コンテンツ企画・記事構成・SNS発信・収益導線まで一貫したメディア視点での執筆を担当。 読者が「この作品を観てみたい」「読んでよかった」と思えるような文章を、ジャンルを問わず丁寧に届けることを大切にしています。

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