
秋映画の勢力図、静かに変化中——全41作品から見えた「今」の熱量
2025年11月3日時点で判明した、全国の主要公開映画41作品の興行データ(動員数・興収)を一挙に整理しつつ、ここから読み解ける“最新の観客の動き”を分析します。
キーワードは、「粘り強さ」「再燃」「口コミ力」。
大作は大作なりに、意外な作品は意外な方法で伸びており、シンプルな数字以上に「熱を持った映画」が見えてきます。
🍂 『鬼滅の刃』『国宝』『チェンソーマン』の“秋の大柱”はまだ伸びる

3作品とも、いずれも2か月〜5か月のロングラン上映中でありながら、週ごとの上昇幅が衰えていません。
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『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、公開109日間で2581万人/興収375.3億円を突破。
→ わずか1週間で+27万人/+7.6億円という、全盛期並の加算ペース。 -
『国宝』は公開151日で1195万人/168.7億円。
→ 祝日・文化の日も絡み、週あたり+16万人/+2.2億円と安定成長。 -
『チェンソーマン レゼ篇』は公開46日で521万人/79.7億円。
→ 前週から+5.2億円を加算し、ここにきて“再浮上”。リピーター+イベント効果大。
この3作品は、それぞれまったく異なる観客層を持ちつつ、共通して「粘りと波を作れる映画」であることが数字から見て取れます。
🧨 注目は「口コミ再燃組」+「祝日スタート勢」
● 『8番出口』

SNSでのバズが冷めず、公開67日間で361万人/50.5億円。
じわじわと上積みを重ねており、上映館が絞られても“数字を落とさない”粘りが特徴です。
● 『秒速5センチメートル』(リバイバル)
25日間で129万人/17.8億円。
新海誠作品のなかでも意外なヒット。世代を超えた再発見の波が数字を動かしています。
● 『(LOVE SONG)』・『すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』
どちらも公開わずか4日間で、10万人以上を動員。
“家族+Z世代”の票を掴んでおり、祝日公開の波にうまく乗った格好です。
💡 ファミリー・キッズ向けも堅調
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『映画クレヨンしんちゃん』:88日間で192万人/23.4億円
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『映画キミとアイドルプリキュア♪』:53日間で94万人/11.8億円
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『映画 すみっコぐらし』:4日間で20万人/2.5億円
週末の集客は安定しており、特に祝日+連休に強い傾向が顕著。
いずれも上映終了までにもうひと伸びが見込まれます。
🎸 変化の兆しが見える中堅タイトル群
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『沈黙の艦隊』:39日間で78万人/10.9億円
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『ブラック・ショーマン』:53日間で170万人/23.4億円
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『ひゃくえむ。』:46日間で43万人/6.4億円
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『ワン・バトル・アフター・アナザー』:32日間で29万人/4.5億円
このゾーンの作品は「爆発しないが、長く残る」タイプが多く、興行曲線も比較的なだらか。
ファンの熱量や、地方館での上映持続が鍵になりそうです。
🎭 ジャンル別分析で見る「観客の熱」はどこにあるか?
41作品をジャンルで分類すると、次のような傾向が浮かび上がります:
🎨 アニメ作品|熱量の中心を担う主役ジャンル
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『鬼滅の刃 無限城編』:シリーズ最高峰の動員速度を維持
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『チェンソーマン レゼ篇』:後半に入って伸びが加速
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『キミとアイドルプリキュア♪』:週末家族動員が安定
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『秒速5センチメートル(リバイバル)』:意外性のリピーター層
特筆すべきはロングラン×リピーターの両立。
どの作品も「初速型」ではなく「波状ヒット型」であり、秋以降のアニメ映画が短期集中→長期安定へと戦略を切り替えていることが読み取れます。
🎬 実写邦画|社会性・共感・熱量が勝負の分かれ目
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『国宝』:芸術・文化性の高い題材で、高年齢層を中心に粘る
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『ブラック・ショーマン』:エンタメとサスペンスのバランスで幅広い層にヒット
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『ひゃくえむ。』:スポーツ×人生を描く感動系で地味ながら着実な興行
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『ストロベリームーン』:若年層向けラブストーリーがSNSでは話題に
実写作品は“口コミ耐性”が強く、数週後に数字を盛り返すことも多いジャンル。特にストリーミング非公開作品は劇場限定のプレミア感が観客を呼び込みやすく、今後の戦略でも要注目。
🌏 洋画&リバイバル|限定上映が数字を動かす時代へ
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『ジュラシック・ワールド/復活の大地』:IMAX/4DXの長期展開で安定
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『アバター』や『秒速5センチメートル』:一部リバイバルが大ヒット
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『トロン:アレス』:コアファン向けの盛り上がりが鍵
スクリーンの多様化(ScreenXやドルビーシネマ)により、リバイバル作や旧作派生の動員力が復活傾向。特典や企画上映の価値が再認識されています。
🚀 祝日+短期上映作の滑り出しチェック
以下は直近3〜4日間の興収/動員が判明している新作たち。今後の持続力にも注目。
| 作品名 | 動員数 | 興収 | 日数 |
|---|---|---|---|
| (LOVE SONG) | 12万4336人 | 1.7億円 | 4日間 |
| 映画すみっコぐらし | 20万7661人 | 2.5億円 | 4日間 |
| INI THE MOVIE「I Need I」 | 8万8975人 | 1.3億円 | 4日間 |
| おいしい給食 炎の修学旅行 | 13万1797人 | 1.8億円 | 11日間 |
| 劇場版ゴールデンカムイ 後編 | 5万6107人 | 9489万円 | 4日間 |
🔮 今後の焦点:年末興行へ、どの作品が“主役”になるか?
11月以降、以下のトピックに注目が集まりそうです:
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『ゴールデンカムイ』『君たちはどう生きるか』の動き
→ 長期展開や再上映展開があるか? -
アカデミー賞関連の洋画/文芸系の封切り
→ 『ナポレオン』『ザ・ホールドオーバーズ』なども控えており、メディア露出に注目。 -
再上映・コラボ上映の加速
→ スタジオジブリ・旧新海作品・邦画アニメ映画の“再鑑賞ニーズ”が高まる予感。
年末シーズンに向けては、“あとひと押し”でTOPに返り咲ける作品たちが次々登場します。現時点での数字をしっかりチェックしておくことで、今後のムーブメントの予測精度が格段に上がります。
🎬 映画興行データ一覧(2025年11月3日時点)
| 作品名 | 日数 | 動員数 | 興収 |
|---|---|---|---|
| 劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来 | 109日 | 2581万人 | 375億3155万3600円 |
| 国宝 | 151日 | 1195万8547人 | 168億7287万6200円 |
| チェンソーマン レゼ篇 | 46日 | 521万6467人 | 79億7498万8400円 |
| 8番出口(+先行) | 67日 | 361万3962人 | 50億5764万5800円 |
| ジュラシック・ワールド/復活の大地 | 80日 | 321万2439人 | 48億9962万1760円 |
| ブラック・ショーマン | 53日 | 170万765人 | 23億4805万9400円 |
| 映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ | 88日 | 192万1114人 | 23億4805万9400円 |
| 映画キミとアイドルプリキュア♪ | 53日 | 94万8106人 | 11億8704万1790円 |
| 沈黙の艦隊 北極海大海戦 | 39日 | 78万3562人 | 10億9314万600円 |
| 秒速5センチメートル(リバイバル) | 25日 | 129万464人 | 17億8899万1300円 |
| 宝島 | 46日(+先行) | 47万8765人 | 6億5146万6720円 |
| ひゃくえむ。 | 46日 | 43万7474人 | 6億4128万1280円 |
| カラダ探し THE LAST NIGHT | 45日 | 47万3098人 | 5億8154万8940円 |
| ワン・バトル・アフター・アナザー | 32日 | 29万6709人 | 4億5096万9440円 |
| トロン:アレス | 25日 | 24万1093人 | 3億8838万5000円 |
| ストロベリームーン 余命半年の恋 | 18日 | 24万8000人 | 3億2000万円 |
| 俺ではない炎上 | 31日 | 22万4000人 | 3億円 |
| ザ・ザ・コルダのフェニキア計画 | 38日 | 6万9754人 | 1億265万9560円 |
| Dear Stranger/ディア・ストレンジャー | 38日 | 1万4926人 | 2041万776円 |
| テレビの中に入りたい | 31日 | 1万6567人 | 2396万1540円 |
| ファイナル・デッドブラッド | 25日 | 1万8480人 | 3001万5700円 |
| 劇場版総集編 ガールズバンドクライ 前編 | 32日 | 9万3254人 | 1億5029万1950円 |
| 劇場版TOKYO MER~南海ミッション | 95日 | 389万5926人 | 52億6098万8300円 |
| 劇場先行版 ゴールデンカムイ(後編) | 4日 | 5万6107人 | 9489万7560円 |
| Mr.ノーバディ2 | 11日 | 5万2538人 | 7196万9900円 |
| ローズ家~崖っぷちの夫婦~ | 11日 | 2万1921人 | 2928万4500円 |
| おいしい給食 炎の修学旅行 | 11日 | 13万1797人 | 1億8790万9400円 |
| 富士山と、コーヒーと、しあわせの数式 | 11日(+先行) | 2万9619人 | 4462万7360円 |
| ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス | 11日(+完成披露) | 12万412人 | 1億8664万6810円 |
| (LOVE SONG) | 4日 | 12万4336人 | 1億7358万3880円 |
| 映画すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ | 4日 | 20万7661人 | 2億5345万3580円 |
| INI THE MOVIE「I Need I」 | 4日 | 8万8975人 | 1億3428万3000円 |
| おーい、応為 | 18日(+完成披露) | 16万8440人 | 2億2244万1340円 |
| 死霊館 最後の儀式 | 18日 | 14万9725人 | 2億2940万920円 |
| もののけ姫 4Kデジタルリマスター | 11日 | 32万4542人 | 7億1106万3600円 |
| 劇場版 呪術廻戦 0(復活上映) | 18日 | 4万1877人 | 6530万2900円 |
| ゴールデンカムイ 札幌ビール工場編 後編 | 4日 | 5万6107人 | 9489万7560円 |
| ONE IN A MILL10N | 3日 | 7万8003人 | 1億1568万400円 |
| 爆弾 | 4日 | 37万9013人 | 5億2045万840円 |
| てっぺんの向こうにあなたがいる | 4日 | 19万4165人 | 2億2791万8960円 |
| 盤上の向日葵 | 4日 | 9万2950人 | 1億2061万4840円 |
✅ おわりに|数字に表れる「観たい気持ち」を読み解く
数字は嘘をつきません。しかし、その裏にある“観たい理由”や“足を運ぶ動機”を読み解くことで、映画という文化の現在地が見えてきます。
この秋、観客が何を求め、どの映画に時間を託したのか——
全41作品のデータと動向は、その答えを静かに語ってくれています。
今後も週ごとの変化と共に、また最新データを更新していきます。
どうぞ引き続きチェックしてください!

























