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若葉竜也、舞台のDNAを映画に刻む俳優の軌跡

2025年11月16日

若葉竜也、舞台のDNAを映画に刻む俳優の軌跡

「舞台に生まれ、舞台で育つ」─揺るがない原点

若葉竜也の俳優人生は、生まれた瞬間から始まっている。
大衆演劇一座である家庭の中で育ち、幼少期から舞台に立つ生活が日常だった。
観客の反応、空気の揺らぎ、舞台の温度。そうした“環境そのもの”が自然と身体に刻まれていく。

台詞より先に、舞台のテンポや呼吸を理解するような幼少期。

この「身体に染み込んだ感覚」が彼の演技の基盤となり、後の映像演技にも大きな影響を与えている。

舞台の身体性を、映像の静けさへ翻訳する

若葉は10代の頃から映像作品へも活動の場を広げ、映画やドラマへ本格的に登場し始めた。

大衆演劇のように“動きと表情”で観客をつかむ舞台とは異なり、映像は“わずかな呼吸”や“目線の揺れ”が演技として意味を持つ世界。

この違いに順応しながら、若葉は映像の中で「静けさの演技」を身につけていった。

若葉竜也、舞台のDNAを映画に刻む俳優の軌跡

その到達点として語られることが多いのが、映画『葛城事件』での青年・稔の役。
社会のひずみに追い込まれていく青年を、派手な演技ではなく沈黙や眼差しで表現し、TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。
作品としての評価も高いが、それ以上に若葉の演技が「映像での存在感」を確立した重要な転機となった。







 “役に寄り添う”のではなく“呼吸が重なる”

若葉竜也は、役について多くを語らないタイプだ。

表現を言語化しない代わりに、作品ごとに役の輪郭を静かに掴み取り、その人物の“呼吸”を自分の中に探していく。

だからこそ、ときに「役と自分の境界が薄くなる」瞬間が訪れる。

その象徴ともいえる言葉を、若葉は最新作『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』について語っている。

「映画の台詞なのか、自分自身の言葉なのか。

モモなのか、僕なのか。撮影が終わった今も、わかりません。」

これは、彼が役を“演じる”のではなく“生きる”ように向き合っているからこそ出てくる言葉だ。

 モモという存在──静かな熱を抱えたリーダー像

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が描くのは、1978年の東京ロッカーズ。

メジャー中心の音楽業界に風穴を開けた若者たちのムーブメントであり、日本のライブ文化やインディーズの礎を作った時代だ。

その中心にいた架空のバンド「TOKAGE」。

若葉が演じるモモは、そのボーカルであり、衝動・迷い・熱を抱えながら時代の波に向き合っていく存在だ。

モモは派手に叫ぶような人物ではない。

むしろ静かな内側に燃え続ける炎を持つ、繊細で、複雑で、それでも前に進む男。

若葉の演技は、まさにこのモモの“静かな熱”に驚くほど自然に重なっている。

長年育まれた舞台の身体性、映像で磨かれた繊細な表現。その両方が発揮されることで、モモという人物の「揺らぎ」が強く立ち上がってくる。







若葉竜也の“今”──強さよりも、揺らぎを生きる

若葉竜也、舞台のDNAを映画に刻む俳優の軌跡

ここ数年の若葉は、作品の規模に関係なく、どの役でも画面に確かな存在感を残している。

大声を出すでもなく、過剰な芝居をするでもなく、

“そこにいるだけで語る演技”を成立させられる稀有な俳優だ。

その理由は、身体の奥に舞台で育った確かな「芯」があり、

同時に、映像で求められる“削ぎ落とす表現”を徹底してきたからだ。

強さではなく揺らぎ。

派手な台詞よりも沈黙。

動きよりも目の奥のわずかな震え。

そのすべてが作品の空気を変える役割を果たしている。

新作が示す次のフェーズ──“刻む演技”の深化

『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は、若葉竜也がこれまで築いてきたキャリアの延長にありながら、

確実に“次のフェーズ”へと踏み出したことを示す作品だ。

モモという人物の内側を生きることで、

若葉の演技はさらに透明度を増し、

“気配そのものがドラマになる俳優”へと進化している。

彼の存在は決して前に出てくるタイプではないが、

画面の中心で静かに物語の温度を変えていく。

この独特の演技は、舞台に生まれたDNAと、映像の中で磨かれた感覚が融合して生まれたものだ。

 終わりに──息づかいが記憶に残る俳優

若葉竜也の演技は“熱量”ではなく、“息づかい”で観客の心を動かす。

役を押しつけず、過剰に語らず、ただ「そこにいる」ことで人物の人生を成立させる。

『葛城事件』は、

若葉がこれまで積み重ねてきた舞台と映像の両方が、一つの形として結晶した作品だ。

この先、彼がどんな役を選び、

どんな人物の“揺らぎ”を映し出していくのか。

静かで確かな進化を続ける若葉竜也から、目が離せない。

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この記事を書いた編集者
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ポプバ編集部:Jiji(ジジ)

映画・ドラマ・アニメ・漫画・音楽といったエンタメジャンルを中心に、レビュー・考察・ランキング・まとめ記事などを幅広く執筆するライター/編集者。ジャンル横断的な知識と経験を活かし、トレンド性・読みやすさ・SEO適性を兼ね備えた構成力に定評があります。 特に、作品の魅力や制作者の意図を的確に言語化し、情報としても感情としても読者に届くコンテンツ作りに力を入れており、読後に“発見”や“納得”を残せる文章を目指しています。ポプバ運営の中核を担っており、コンテンツ企画・記事構成・SNS発信・収益導線まで一貫したメディア視点での執筆を担当。 読者が「この作品を観てみたい」「読んでよかった」と思えるような文章を、ジャンルを問わず丁寧に届けることを大切にしています。

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