成熟した俳優・稲垣吾郎が、再び“人間”を演じる
キャリアを重ねるほど、稲垣吾郎という俳優は不思議な透明感をまとっていく。
常に品格を保ちながらも、その奥にある感情の揺らぎを隠さない。2026年2月、彼はそんな「理想と現実の狭間」をテーマにした舞台『プレゼント・ラフター』に主演する。
10年ぶりにPARCO劇場へ戻る稲垣が挑むのは、人気俳優ギャリーという“完璧すぎる男”の役だ。華やかな成功の裏に潜む孤独と不安を、ウィットに富んだラブコメディとして描く。
ラブコメディの名作で描く、“笑いと切なさ”の同居
『プレゼント・ラフター』は、イギリスの劇作家ノエル・カワードによる傑作コメディ。
1942年の初演以来、幾度も再演され、トニー賞受賞歴も持つ名作だ。
舞台はスター俳優ギャリーの高級アパートメント。海外ツアー出発を控える彼のもとに次々と人々が訪れ、愛や嫉妬が入り混じった騒動が巻き起こる。見た目は軽妙な会話劇だが、そこには「演じ続ける人生」の哀しみが潜んでいる。
稲垣はコメントでこう語る。
「10年ぶりに、新しくなったPARCO劇場に立てることを心待ちにしています。久々に大人のラブコメディを演じることが今から楽しみです。ぜひご期待ください」
彼が演じるギャリーは、まさに“笑いながら心が揺れる”ような存在。稲垣の持つ柔らかなユーモアと繊細な感受性が、この役の深みをいっそう際立たせる。
ノエル・カワード作品×稲垣吾郎──80年愛される名作が日本で甦る
本作の作・演出を務めるノエル・カワードは、俳優・作詞家・映画監督としても知られる英国のマルチアーティスト。
彼の作品は皮肉と上品なユーモアに満ちており、『プレゼント・ラフター』もその代表作とされる。
近年では、英国ロイヤル・ナショナル・シアター版が『ナショナル・シアター・ライブ』として世界上映されるなど、80年を経てもなお人気が続く。
日本版の演出を担うのは小山ゆうな。彼女は「稲垣吾郎さんをはじめ、個性豊かな俳優たちと創作できることが楽しみ」とコメント。さらに「多才で、ファッションリーダーで、天才的センスを持つノエル・カワードのウィットを、日本のお客様にしっかり届けたい」と語り、作品と稲垣の両方に敬意を込めた。
ギャリーという役が映す、稲垣吾郎の“もう一つの顔”
ギャリーは、華やかな世界の中で自分自身を“演じる”男だ。誰からも愛される一方で、老いへの不安や孤独に苦しみ、それを見せまいとさらに完璧を装う。
この「演じながら生きる」というテーマは、長年エンターテインメントの世界に身を置いてきた稲垣吾郎自身にも通じる。彼はアイドル出身の俳優として、多くの作品で静かに人間の内面を掘り下げてきた。その佇まいには、抑えた表情の中に確かな情感が宿る。
稲垣の近年の出演作には、映画『半世界』(2019)、『窓辺にて』(2022)、アニメ映画『海獣の子供』(2019・声の出演)などがある。どの作品でも、彼の“静かで強い存在感”が観客の心に残った。今回のギャリー役は、その延長線上にある“成熟したユーモア”を体現する役どころといえるだろう。
共演とスタッフが生む、信頼のクリエーション
共演には倉科カナ、黒谷友香、桑原裕子、望月歩、白河れい、金子岳憲、中谷優心、浜田信也、広岡由里子といった多彩な俳優陣が名を連ねる。
小山ゆうな演出のもと、世代もバックグラウンドも異なるキャストがひとつの空間に集い、ノエル・カワードの“人間賛歌”を立体的に描き出す。
稲垣吾郎がその中心でどう化学反応を起こすのか──演劇ファンならずとも注目の舞台だ。
【公演情報】
PARCO PRODUCE 2026『プレゼント・ラフター』
作:ノエル・カワード/翻訳:徐賀世子/演出:小山ゆうな
出演:稲垣吾郎、倉科カナ、黒谷友香、桑原裕子、望月歩、金子岳憲、中谷優心、白河れい、浜田信也、広岡由里子
東京公演:2026年2月7日(土)〜2月28日(土)/PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)
京都公演:2026年3月4日(水)〜3月8日(日)/京都劇場
広島公演:2026年3月14日(土)〜3月15日(日)/JMSアステールプラザ 大ホール
福岡公演:2026年3月20日(金・祝)〜3月22日(日)/福岡市民ホール 中ホール
仙台公演:2026年3月28日(土)〜3月29日(日)/電力ホール
公式サイト:https://stage.parco.jp/program/presentlaughter/
変化を恐れず、静かに挑み続ける稲垣吾郎
ここ数年の稲垣吾郎は、俳優としてだけでなく、文筆やナレーションなど表現の幅を広げている。どの活動にも共通するのは、「自分らしい表現を探し続ける姿勢」だ。
役者として派手さよりも“余白”で語る稲垣。年齢やキャリアを重ねるほど、その芝居には柔らかいユーモアと確かな深みが増している。
『プレゼント・ラフター』で彼が見せるのは、完璧に見える人間の中に潜む“本音”かもしれない。笑いながらも胸の奥が少し痛くなる、そんな瞬間を稲垣吾郎は丁寧に描いてくれるだろう。
それはきっと、彼自身が歩んできた“静かな挑戦”の延長線上にある演技だ。
稲垣吾郎、“完璧すぎる男”の裏にある孤独とユーモア──次なる挑戦で見せる成熟の演技
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