「この4年間、空から見るお客様の表情が忘れられませんでした。」
その言葉には、ミュージカル女優・笹本玲奈の舞台人生が凝縮されている。
2026年3月、東京・東急シアターオーブを皮切りに開幕するミュージカル『メリー・ポピンズ』。日本版としては3度目の再演となるこの作品で、笹本は2018年、2022年に続き、再び“メリー・ポピンズ”役を演じる。彼女が空から客席を見下ろす瞬間——それは観客と舞台をつなぐ、魔法のような時間だ。
“メリー・ポピンズ”と再会する喜び、そして観客への想い
「キャストにとっては肉体的に過酷な作品ですが、素晴らしいストーリーと音楽に毎公演心が洗われるような気持ちでした」と笹本は語る。
『メリー・ポピンズ』はウォルト・ディズニーの名作映画をもとにしたミュージカル。家庭に魔法と温かさをもたらすメリーの姿を通して、愛と希望を描く。
笹本がこの役を再び引き受けた背景には、観客との深い絆がある。2018年の初演、2022年の再演を通じて、彼女は空を舞いながら客席に向けて微笑んできた。その光景を「忘れられない」と語る彼女にとって、再演は“原点に帰る旅”でもあり、新たな挑戦でもある。
「新しいキャストも加わり、より一層お客様に楽しんで頂けるよう、私自身も心から楽しみながら挑みたいと思います」
その言葉からは、再演という枠を超え、常に進化を求める姿勢が伝わってくる。
肉体と感情を鍛える“魔法の舞台”
『メリー・ポピンズ』の舞台は、美しい歌や華やかなダンスの裏で、並外れた体力と集中力を要する。
笹本はその厳しさを「やりがい」として受け止めている。
濱田めぐみとのダブルキャストとして互いに刺激し合いながら、二人はそれぞれの“メリー像”を作り上げてきた。
同じ役を共有しながらも、解釈やニュアンスは異なり、その違いが作品の奥行きを広げている。
観客はその多層的な表現を通して、舞台の新たな魅力を体感することになるだろう。
経験を重ねて磨かれる、透明感と深み
笹本玲奈は、10代で『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役として脚光を浴びて以来、『ミス・サイゴン』『マリー・アントワネット』など数々の大作に出演してきた。
華やかさの中に繊細さを持ち、確かな歌唱力と豊かな感情表現で、観客を作品の世界へと導く。
年を重ねるごとに、その表現には柔らかさと深みが増した。舞台上で見せる笑顔の一つひとつに、経験を積み重ねた人だけが持つ説得力がある。
その変化を笹本自身も自然体で受け止めている。
「作品に寄り添う気持ちが強くなった」と語る彼女の演技は、観客の心を静かに揺さぶる。
仲間と共に作り上げる、新しい“魔法”
2026年版『メリー・ポピンズ』には、初参加となる朝夏まなとをはじめ、豪華キャストが揃う。
新しい顔ぶれとの共演について、笹本は「共に作品を作り上げていくことが何よりの喜び」と語る。
舞台は常に“生もの”だ。
その瞬間ごとに生まれる呼吸、共演者との間に流れる空気、そして観客の反応。
笹本はその全てを大切にしながら、舞台の上で“魔法”を生み出し続けている。
「お客様の心に響く舞台にしたい」という彼女の言葉は、技術を超えた“心の表現者”としての覚悟そのものだ。
笹本玲奈が体現する、日本ミュージカル界の成熟
笹本玲奈のキャリアを振り返ると、日本のミュージカル文化の成長と重なる。
海外作品を忠実に再現する時代から、表現者自身が“日本ならではの解釈”を加える段階へと移り変わる中、笹本はその中心に立ってきた。
彼女の舞台には一貫して“誠実さ”がある。感情の誇張よりも、人物の内側にある真実を丁寧に掬い取る。その姿勢が、多くの観客の共感を呼んでいる。
『メリー・ポピンズ』で描く「優しさ」や「勇気」は、単なるファンタジーではなく、現代に生きる人々へのメッセージだ。
笹本玲奈は、それを言葉ではなく“存在”で伝える稀有な女優だといえる。
ミュージカル『メリー・ポピンズ』2026年公演情報
- 東京公演:2026年3月21日(土)〜5月9日(土)/東急シアターオーブ
- 大阪公演:2026年5月21日(木)〜6月6日(土)/梅田芸術劇場 メインホール
- 出演:濱田めぐみ、笹本玲奈、朝夏まなと ほか
- チケット一般販売:2025年12月24日(土)11:00開始
笹本玲奈は、ただ同じ役を繰り返すのではない。
彼女は毎回、自分の中に新しい“風”を吹かせて舞台に立つ。
それが、彼女が空から見つめる“観客の笑顔”へとつながっていくのだ。
2026年春、再びロンドンの空の下で——笹本玲奈のメリー・ポピンズが、観客の心に優しく魔法をかける。
笹本玲奈、舞台の“空から”見た景色——挑戦と進化を続けるミュージカル女優の今
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