
原点はステージにあった
俳優・反橋宗一郎。
舞台を中心に精力的に活動を続ける彼が、2025年12月に上演されるLIVE×Reading Musical『オッサン(36)がアイドルになる話』で主演を務めることが決まった。
反橋が演じるのは、無職で引きこもりだった36歳の男性・ミロク(大崎弥勒)。ひょんなきっかけから“アイドル”として再起するという、笑いと希望が交差する物語の主人公だ。
この作品は、もちだもちこによる同名小説を原作とし、脚本・白柳力、演出・中本吉成、音楽・岡村洋佑という布陣で舞台化。スタンミじゃぱんとのWキャストで、同じ役を異なる個性が演じ分ける注目作である。
アイドルとしての過去、俳優としての現在
反橋宗一郎のキャリアは、音楽ユニットL.A.F.U.のメンバーとしてスタートした。
かつて“アイドル”という立場でステージに立ち、歌い、踊り、観客を前にパフォーマンスを重ねた日々。その経験は、今も彼の身体に深く刻まれている。

ユニット活動を経て舞台俳優に転じてからは、『ミュージカル「忍たま乱太郎」』シリーズで善法寺伊作役を長年にわたり演じ、確かな演技力と存在感で観客の心をつかんできた。歌唱力・ダンス力を兼ね備えた舞台人としての信頼は厚く、作品ごとにその表現の幅を広げている。
“もう一度アイドルを演じる”という巡り合わせ
今回の『オッサン(36)がアイドルになる話』で、反橋が再び“アイドル”という役柄に挑むことは、偶然でありながら必然にも思える。
「タイトルを見た瞬間、どうしても出たいと思いました。設定も面白いし、僕もアイドル時代があったので、ぜひファンの方々にも観ていただきたいと思いました」
と本人が語るように、この舞台は彼にとって過去と現在をつなぐ作品でもある。
かつてステージの中央に立っていた頃の自分を、俳優としての経験を積んだ今、再び“役”を通じて見つめ直す――。その構図は、作品テーマである“再生”と重なって見える。
俳優としての深化

反橋は、感情の機微を丁寧に掬い取るタイプの俳優だ。
明るさや熱意の裏にある弱さや葛藤を表情に宿すことで、舞台上に“生きている人間”を描き出す。その繊細な演技は、同業者の間でも高く評価されている。
また、近年は舞台だけでなく朗読劇・ミュージカルなど幅広いジャンルに出演し、表現の幅をさらに広げている。
今回演じるミロクという役は、再起をかけて“おじアイドル”として奮闘する人物。かつての輝きを知る反橋だからこそ、夢をもう一度追う男の“リアリティ”を誰よりも等身大に演じられるだろう。
舞台が照らす“新たな素顔”
俳優として十数年のキャリアを積み上げてきた反橋宗一郎だが、その印象は常に柔らかい。肩肘を張らず、真摯に役と向き合う姿勢が、多くのファンの心を惹きつけてきた。
『オッサン(36)がアイドルになる話』では、そんな彼の“素”の魅力――人を照らす温度と優しさ――が、キャラクターを通してより鮮やかに浮かび上がるはずだ。
次なる展望
俳優として円熟期を迎えつつある彼にとって、今回の舞台は「初心への回帰」であり「未来への通過点」でもある。
ステージ上での一瞬一瞬を大切に積み重ねてきた反橋宗一郎が、再びスポットライトの中心でどんな表情を見せるのか。ファンだけでなく、舞台ファン全体が注目する一作となるだろう。
アイドル経験が舞台に生きる理由
アイドルと俳優――一見異なる世界のようで、実はどちらも“人に感情を伝える仕事”である。反橋宗一郎が歩んできた道は、その橋渡しのような存在だ。
アイドル時代に培った瞬発力と、舞台俳優として磨かれた集中力。その両方が融合するとき、観客に届く表現はより豊かになる。
特に、朗読ミュージカルという本作の形式では、歌・セリフ・身体表現のすべてが一体化する。反橋がこれまで重ねてきた経験が最も発揮される場でもあるのだ。
「役を通して人を勇気づけたい」――その信念を持つ彼の姿勢は、キャリアの長さを超えて、今なお挑戦を続ける“現役の表現者”そのものである。
『オッサン(36)がアイドルになる話』で再びステージに立つ反橋宗一郎。その姿は、過去を受け入れ、今を生き、未来を見据える大人の表現者としての“現在地”を、静かに照らしている。




































